日本最大級の不動産・住宅情報サービスサイト「LIFULL HOME'S(ライフル ホームズ)」などを運営する株式会社LIFULL。本日は株式会社LIFULLのCTO(Chief Technology Officer) 長沢 翼氏にリーダーのあり方についてお話を伺いました。
長沢 翼 | 株式会社LIFULL 執行役員CTO(Chief Technology Officer)テクノロジー本部 本部長 兼 LIFULL HOME'S事業本部 プロダクトエンジニアリング部 部長
2008年株式会社ネクスト(現 株式会社LIFULL)入社。
学生時代に情報デザインを専攻、テクノロジーで社会課題を解決し世の中を変えていけると実感し、エンジニアを志す。
入社後は「LIFULL HOME'S」のフロント、サーバーサイド、ネイティブアプリなどアプリケーション開発に従事した後、技術を支えていく上で幅広い分野に携わるため、バックエンド・インフラ系を担当。
API基盤の刷新、事業系システムのAWSへの移行チームを責任者として牽引する。
2017年CTO就任。同年に社内情報システムの担当部長も兼任し、事業系・社内系システム両面で技術戦略の策定し実行。ベトナムの開発子会社のボードメンバーも努めており、国内外のエンジニア組織の技術力向上及び組織力強化を推進している。
リーダーとしての判断と責任
--入社6年目の際にLIFULL HOME’Sのインフラ環境を移行するプロジェクトにて組織マネジメントも含めてリーダーを担当されたかと思います。 その際に感じたことについて教えてください。
何においても、自分がチームの中で一番詳しい状態ではない、というのが不安でした。
このプロジェクトは全社的な大きいプロジェクトだったため、シニアエンジニアを中心に編成されたチームでした。
また弊社ではマネジメントチームとスペシャリストチームに分かれており、スペシャリストのメンバーもチームには居たので、技術的にも引っ張っていくことに対する不安はありました。
--そのようなチームのリーダーをするにあたって、意識していた点について教えてください。
十分な情報がない状態でも、リーダーとして判断しなければならないタイミングでは結論を出すことを意識していました。
リーダーになってみて改めて、「リーダーという立場として、引っ張らないといけないな」と意思決定の重要性を感じました。
最初は、以前から業務外でも関わりがあったメンバーもいたので、お互いの関係性は変わらないのではないかと思ったのですが、やはりリーダーになるとメンバーから「リーダーが意思決定するところである」という場面が多くありました。
PJのスケジュールやQCDのバランスなど、最終的に決断するのはリーダーである自分なので、自分がメンバーの人生の一部をあずかる気持ちで、意思決定に対する責任を意識し仕事をしていました。
メンバーを導くビジョンの確立
--メンバーが会社のビジョンに向かいやすくするためにチーム単位で具体的に行われていた取り組みについて教えてください。
時間をかけて各チームごとに全員が納得して動けるビジョンをつくっています。
会社としても、グループとしても階層ごとにビジョンをつくっているのですが、リーダーを含めて全員が一つのミーティングルームに缶詰めになって、可能な限り時間を割いて全員の意見をくみ取ってから、一つのアイデアを打ち出しています。
プロジェクトを進めていく中で、Aという判断をするのかBという判断をするのかと迷うことが多々ありますが、最終的な判断を決めるときに、皆で決定したビジョンに立ち返って判断ができると考えているため最初に時間をかけて決めることに意味を感じています。
業務を進めていく中でも、メンバーが全員納得しているビジョンに向かって進めているため、道半ばで方向性がずれにくくなります。
--メンバーのモチベーションをマネジメントする際に意識していることはありますか?
メンバーに自己成長の実感を持ってもらうためにも、キャリア開発の一環として会社全体で半年に一回、3年後・5年後のキャリアビジョンをキャリアビジョンシートに書きギャップをリーダーともに考える仕組みがあります。
自分が描くキャリアから逆算して得るべきスキルや経験を上長とコミュニケーションを取りながら見出します。
仮に得るべきものが経験だとしても、細かく分解しその経験から必要なスキルを抽出・細かく分解(情報収集・タスク管理能力など)して、それをもとに今後の目標を設定します。
また弊社には、自身の担当している業務以外を経験しキャリアの幅を広げる制度をいくつか用意しています。
チーム間で合意が取れていれば一定の期間、他のチームの業務を行うなども可能です。
プロジェクトの橋渡しとしてのマネジメント
--ミドルマネジメントをする現在と、プロジェクトごとにマネジメントをしていた頃を比べて感じた違いはありますか。
プロジェクトごとに仕事をしていた際はプロジェクトの仕事のみについて考えていればよかったのですが、ミドルマネジメントをする際はプロジェクトごとの相互作用や影響範囲について考える必要がある点が大きな違いだと感じました。
そこでミドルマネジメントをする際は、それぞれのプロジェクトの橋渡しができるようなコミュニケーション設計を意識しています。
人数やチーム内の年次やキャリアの長さといった多様性も増えているので適切なマネジメントができるようコミュニケーションを丁寧にしたり工夫したりしています。
特にマネジメントの規模が大きくなると現場全体が見えづらくなるのでリモートで全員が集まって月に一回各部門が発表する場やアンケートをして意見交換する時間を設ける、など工夫しながらキャッチアップしています。
自分ごととして進めていく
--リーダーとして人を巻き込むときに大切にしていることはありますか。
年次や立場関係なく、思いがある人、温度感が高い人を巻き込んで一緒に考えよう、としています。
会話してみて、その人が本当に熱量高く取り組める人なのか、主体性があるのかを確認しています。
--熱量が高いメンバーの意見がぶつかり合うときにどのようなことに気を付けていますか?
十分に意見を聞いた上で、最後はリーダーとして最終的な判断を下すことです。
意見がぶつかったときの解決法として話し合いが良いのはもちろんですが、異なる意見のメリット・デメリットを比べて五分五分だった際にはリーダーとして最終的な判断をすることを意識しています。
--最後に、若手リーダーに向けてアドバイスをお願いします。
リーダーになると、答えが無い問題に直面することも多くなると思います。そのとき、自分なりに考え答えを出して、進めていく事が非常に重要だと思います。
どんなリーダーも自分の決断を不安に思うことはあると思います。それでも自分を信じて、そして周囲の仲間を頼りながら一緒に進んでいくことが大切だと感じてます。
また、様々な出来事を「自分ごと」として捉えること。どうしたらより良く出来るか、ここは自分だったらもっとよくできるから試してみよう、と考え進めていくこと。
最後に、統制の所在を内側に持つ、つまり何かの結果の責任を責任を自分以外の外側に求めてしまうスタンスだとできることが限られてしまうため、
自分の行動を変えることで周囲・環境も変えることができる、と信じて行動していくことは大切だと思います。