「豊かなコミュニケーションを広げ、世界を幸せな驚きで包む。」をパーパスに掲げ、「心もつながる」ようなコンテンツや場を創り続ける株式会社MIXI。
SNSの先駆けとも言える「mixi」や、2013年からはスマホゲーム「モンスターストライク」などのコミュニケーションサービスを幅広く手がける、株式会社MIXI様の執行役員CTOである吉野 純平氏にお話を伺いました。
吉野 純平|執行役員CTO
筑波大学修士号取得後、2008年4月に新卒エンジニア職で株式会社MIXIに入社。
SNSのインフラ、アプリ運用を担当。「モンスターストライク」のインフラネットワーク全般の業務に加え、幅広い新規事業のインフラ支援にも従事。
その後、物理インフラ、サーバ運用、ネットワークから映像処理や撮影などのIP通信(映像処理、撮影や交換機)に関連する開発を手掛ける。
2019年5月にはインフラ室の室長を担当。2022年4月に開発本部 本部長として多数のプロジェクト、エンジニアのマネジメントに従事し、2023年4月執行役員 CTOに就任。
主体性を引き出す
--メンバーの主体性や責任感を高めるために吉野さんが意識して行っていることはありますか。
タスクを依頼する際に、相手に刺さる訴求をすることで、魅力的に感じてもらった上で業務に取り掛かってもらいます。
人それぞれコミュニケーションの取り方が違うため、相手に応じたコミュニケーションが大事になります。例えば、相手が仕事をする上での特性や進め方などを知れば、何に重きを置くのかを配慮しながら仕事を依頼することができます。そのように工夫することで、本人の適性や希望とのマッチ度が向上するため、モチベーションを高く働いてもらえます。
--ひとりひとりに合わせた訴求をするために大切なことは何ですか。
相手を理解するための細かな情報収集を徹底することです。1on1やMTGで言っていたことを覚え、メモを取り、見返してから訴求するようにしています。
また、過去の業務で何を頑張っていたかなども思い返して、ひとりひとり特性を分析しています。
さらにコミュニケーションの機会を増やすための取り組みとして、1on1を週に1度はできるような組織の階層作りを進めているところです。
ただし、できるだけ階層を少なくし各社員が自立性を持って働けるようなフラットな組織を維持しつつ、階層を作ってマネージャーとのコミュニケーションの機会をより増やしたいという一見すると相反する2点を兼ね備えた組織づくりを意識しています。
持続可能な強いチームを支えるヒアリング術
--貴社には多種多様なエンジニアが在籍されていると思います。各個人の特性や興味をどのように聞き把握しているのでしょうか。
2つ方法があります。
1つ目は、社内共有されているプロフィールや、キャリアビジョンなどが書いてある情報ツールから把握する方法です。
プロジェクト異動をする人が次に何をしたいか、異動理由などを記載したメモを残しているため、そちらを参考にして興味や特性を分析することもあります。
2つ目は、コミュニケーションです。
1on1や組織内の懇親会、さらには組織をまたいで合同での技術者交流会など、直接話す機会を大事にしています。
--そんな方々を離脱なく強いチームを維持する秘訣は何ですか?
魅力的なプロジェクトをどんどん生み出すことと、解いてみたいと思う技術的な課題をいかに共有できるかが重要です。
そのためにも、全社員の “会社に対する課題” を全員に共有してもらうことが大切です。
課題は既に皆の中にあって、共有することでその悩みが解決できることもあります。
例えば、各事業・各部門でマネジメント層だけが共有している課題があった際に、全社員がその課題の存在を認知できる仕組みがあるといいです。
そうすることで、技術的な面以外でも解いてみたくなる難題に出会えモチベーションを向上させることができると考えています。
共有する上で難しくなってくるのが、情報統制と情報共有のバランス感覚です。
課題は共有したいのですが、「ユーザーサプライズファースト」を心掛ける会社なので、ネタバレが漏れてしまわないよう、バランスを調整するのが難しいです。
MCCという社内文化でのチーム編成力
--もしメンバーから志望するキャリアと違うためプロジェクトを異動したいと言われた場合、吉野さんならどうされますか。
大歓迎です。
キャリア支援の一環でMCCという社内公募制度があって、上司に相談することなく行きたいプロジェクトに志願し、面談を受けることが出来るため、希望する事業に挑戦できる環境はあります。
※)『MCC』とは、MIXI CAREER CHALLENGE(ミクシィ・キャリア・チャレンジ)の略称であり、事業戦略に基づく重点領域や人員が不足しているポジションの募集要件を社内に公開し、選抜の上、新たなミッションにチャレンジできる機会を提供する社内公募制度です
--そうした制度だと、マネージャーとしてはチームづくりはやはり大変になりますか。
チームづくりという点では大変ですね。メンバーが抜けてしまうという視点だと、そうならないように魅力を伝えながら、キャリアや成果になる仕事が渡せるよう、より考えてマネジメントをする必要があります。
メンバーを獲得するという視点では、事業や技術の魅力を語って口説く必要がでてきます。
--吉野さんが口説く時に心がけていることは何ですか?
相手の情報を事前に聞いておくことです。その情報からプロジェクト内容に魅力を感じてくれるメンバーを検討し、最初から内容とメンバーがマッチするよう声をかけています。
権利の主張と付与
--吉野さんが権利を与えるときに意識していることは何ですか。
技術選択の際に、なるべく本人の希望を聞くようにしています。
また、大きい裁量を与えるケースが多く、その際は報告や承認、周りの力を借りる事も自分で頑張ってやってみて、という事を伝えています。
これは会社としてのスタンスでもあります。
--厳しい状態でも人の力を借りて巻き込んでいける人はどのような人だと思いますか。
相手をきちんと人として考えているか、そういう人にコーチングされているかだと思います。
様々なことを経験し、その経験から相手にあったコミュニケーションをとれる人、そしていつもそれを考えている人は、非常に能力が高いです。
--方向性と合わない権利を主張された場合、吉野様はどうされますか。
まずは話を聞きます。それが技術的な方向性だった場合は、もっと詳しく聞きます。聞いた上で検討し、合理性があればプロジェクトにとっていいことですし、無かったら無いと判断します。
それでも希望するのであれば、他の出来そうな事業に行くことを勧めます。
サービスの方向性と合わないという場合も同様に、会社の制度を存分に利用してもらい、他事業に行きさらに活躍してもらいたいです。
吸収と想像
--最後に若手リーダーへのアドバイスをお願いいたします。
様々なリーダーを見てスキルを盗む、また教わって盗むことを伝えたいです。全て取り入れるというわけではなく、様々なスタイルがあることを知ることが大事だと思います。
また、自分の中に理想の上司とはなんなのかといったイメージ像を作ることもおすすめです。
今の自分と比較して何が足りていないのかがわかりやすく、改善点を見つけやすいです。