デジタルとアナログをつなぐ通信サービスとSaaSを提供することで、FAX、郵送、メール、SMSなどの送信/受信サービスや、業務支援サービスを用いて、様々な企業の「営業・マーケティング」「企業間商取引」をはじめ、「店舗運営(多店舗間の情報共有)」「薬局・製薬企業間の情報伝達」「非対面取引における本人確認業務」などを支援している株式会社ネクスウェイ。
本日は、株式会社ネクスウェイの取締役・専務執行役員CTOの荒野 高志氏にお話を伺いました。
荒野 高志|株式会社ネクスウェイ 専務取締役CTO
1986年に東京大学大学院理学系研究科修士課程を卒業。同年、日本電信電話会社に入社し、OCNサービス立ち上げや海外ISP買収を担当。
その後、日本および世界のIPアドレス管理ポリシー策定のため、JPNIC IP-WG主査や、99年より国際的なインターネットガバナンス組織であるICANNのアドレス評議委員副議長に就任。
2002年にインテックグループに入社し、株式会社インテック・ネットコア代表取締役や株式会社インテックの先端技術研究所所長など、同社の技術部門を牽引。
2020年より株式会社ネクスウェイにて取締役専務執行役員CTOに就任
課題は、自分自身で決めるもの
--初めてのリーダー経験で学んだこと、今も活きていることはありますか。
NTTに所属していた際に、400人規模で行われたOCN立ち上げ事業のネットワーク設計のプロジェクトリーダーを務めました。
チームで成果を出すためには、チーム内外で同じ志や情熱を共有することが重要だということを学びました。
当時は伝統的な通信事業が主流だったため、インターネットに詳しいメンバーがほとんどおらず、私が上司に掛け合って400人の中から数人を選抜させてもらい、設計という根幹の役割を果たすためのチーム編成を行いました。NTTの人事では異例のことであったと思います。
その際にチームメンバーや上司含め、他のメンバーも全員がOCNをきちんと立ち上げ日本の基幹インフラにするという意義を持っていたため、全てが好転したと考えています。
--そういった環境下でのチームリーダーの役割を教えてください。
メンバーが意義を持てるようにすることがリーダーの役目です。
また方向性を示し、メンバーにいかに成長を経験してもらえるかを考えることが大切です。
メンバーが共感できるような魅力的な訴求をできるのもリーダーに求められることの1つです。
”Being”を磨け
--リーダーとして成熟する為にはどういったことが重要ですか。
自分自身を知ることが最も重要です。
心理学やコーチングによく用いられる”Doing”と”Being”という考え方がありますが、この”Being”を見つめ直し磨くことは見落としがちです。
「リーダーはこれをしろ」、「マネジメントはこうしろ」など”Doing”に対する書籍やアドバイスはとても多く、磨く機会が多いと思いますが、”Being”を磨く機会は少ないのが現状です。
しかし”Doing”を実践し効果を発揮するためには”Being”という根幹が磨かれていないと、意味がありません。
メンバーが言っていることをきちんと聞き受け入れるとか、多様性が大事だからメンバーを尊重しようとか、そういったことが大切だと頭では思っていても、実際には実践できない人が少なからずおられます。
それは”Being”が未熟なことが無意識にメンバーを尊重しなかったり、話を聞かなかったりということに繋がっています。
自分にプライドがあって聞けないとか、自信がないから守りに入り逆に話が入ってこないなど理由は様々です。
とにかく気づきを得て殻を破り、自身の”Being”を磨くためにも自分自身を知ることが大切です。
--そういった次世代のリーダーを成長させる為にも、荒野様はどのように気づきを与えていますか。
答えを与えないこと、質問することをとにかく意識しています。
例えば新しいサービスを作る事になった場合に、どういったユーザーが必要だと考えているのか、なぜそう考えるのかなど1つずつ相手の視野を広げるように質問をしていきます。
そうすることで視野が広がり新たな気づきを得ることができます。
またその上で成功体験も積めると尚いいです。成功するとその視野を広げた行為が重要だったとより肯定的になり、その後もいろんな意見を受け入れ、視野を広げて殻をやぶりやすくなります。
ただ、成功体験といっても難しく捉えすぎる必要はありません。
世の中の多くの物事は100%成功か失敗かに分けることができないと考えています。
成功の中に数%の失敗が混じっていたり、反対に失敗と言っても数%の成功が混じっていると思います。
大事なことは、その経験を意味あるものにできるかということです。
ただやらされ仕事で意義もなくこなすのではなく、真剣に取り組んだ上での成功や失敗と向き合って経験を積み重ねることが個人の成長に有意義なものとなります。
リーダーとして成長し続けるには
--リーダーとして成長し続けるためにはどういったことが大切ですか。
リーダーには、自分ならできるという心構えを持ち余裕を見せることは大切です。
リーダーとして成長し続けるためには、より大きな課題に向き合う必要があります。
それを掴み取るために自信に満ち溢れていて余裕のある表情をして周りから頼ってもらえる状況を作ることも重要です。
APNICで議長を務めた経験があるのですが、指名された際は英語で数百人の会議を仕切るなんてできるのかと不安はありました。
ただその不安は一切出さず、絶対に成功させるという気持ちで圧倒的な事前準備を行いました。各トピックに対する論点やそれに対しての賛成反対どちらの意見も想定して回答を用意しておくなどです。
結果 無事に議論をまとめることができ、その後も5年間議長を務めました。
そのように大きな仕事を勝ち取り成果を出す為には、自信溢れる心構えとその自信を現実にするための事前準備が大切です。
2つの多様性を持ったチームづくり
--リーダーが目指すべきチームづくりはどういったチームだとお考えですか。
各チームメンバーの意見をより高めることができるチームを作るべきです。
「アウフヘーベン」という言葉のように、意見対立や矛盾するものの中から一段上の結論を導き出すこと、つまり、それぞれの立場の専門家が集まってお互いの意見を尊重し合い、意見の着地点を妥協ではなく、より高みへイノベーションを起こす必要があります。
--そういったイノベーションを起こすにはどういったものが必要でしょうか。
2つの意味でチームが多様である必要があります。
1つ目はその分野における専門家が多数存在し、様々な頭脳や経験が集まった状態です。
そういった状態であるとそれぞれの立場から意見を出し合うことができ、より良い意見に着地できます。
例えば、我々のようなシステム開発でいうと、プログラマだけでなく、お客様のカスタマーエクスペリエンスの専門家とAIの専門家とシステム運用における専門家など様々な立場のプロが集まります。
そこで出た意見をまとめ上げ、妥協するのではなく一段上の意見を出すといったやり方を取るためにもメンバーの専門分野が多様である必要があります。
2つ目は性格や個人の生まれ持ったものにおける多様さです。
あるメンバーは皆を熱量で引き入れて走ることが得意、あるメンバーはとてもまめで細かいチェックが得意だ、などそういった点で多様である必要があります。
全員が突っ走れる人でも失敗しますし、チェックマンだけでも前に進みません。いろんな特性を持った人が集まっている必要があります。
ドラッカーが言っているように、強みの裏返しは弱みです。慎重な人はよく周りが見えていますが、突っ走るエネルギーが足りません。そのために突っ走る力があるメンバーが必要です。
そのようにチーム内で弱みを打ち消していくことで、チームが輝きます。
自分らしいリーダーへ
--最後に、若手リーダーやリーダーを目指す方々に向けてアドバイスをお願いします。
自分自身を見つめ自分に合ったリーダーシップを見つけてください。
自身の良さを見つけて最大限活かす方法を考えてチームを編成し動かしてください。
周りを巻き込むことが得意なのであれば、どんどん巻き込み緻密さや計画性はそれが得意なメンバーを巻き込むことで弱みを打ち消してください。
中でも自分の一番近くで一緒に働く参謀のような方は重要なため、自分の弱さを強みに持つメンバーを見つけることができるとチームとしての成果が大きく変わるでしょう。そのためにも自分を客観視する努力をし続けて、自分を見つめ続けてほしいです。
また人間についてや人間が集まって成り立つチームや組織についての勉強をおこなってみてください。
単に開発言語の勉強やプロジェクトマネジメントの勉強をするのも悪くはありませんが、結局我々が相手をするのは人です。
どれだけ ChatGPTが進歩しても、お客様と要件定義を行い巧みに顧客折衝をした上で全てのプログラムコードを書く事はないでしょう。人でないと進まない仕事があるので、そういった人と人との関わりを意識した上での勉強をしてください。
例えば先ほど述べた”Being”を磨くということや、世の中の成り立ちを体系的に学ぶといったことです。 私自身、メンターの方についていただいたり本を読んだりしてそういったことを学び続けています。
そうすることでイノベーションが起こせたり、セレンディピティのような偶然の成功を掴んだりすることができるでしょう。
そして最後にプロジェクトを、リーダーを楽しみ、皆を楽しませてください。