ソフトウェア開発において主流となっているアジャイル開発には、重要な工程が存在します。
その中でも特に注目されるのが「インセプションデッキ」です。
プロジェクト開発に関与する全ての関係者が共通の認識を持つために活用されるこのツールは、プロジェクトの成功に向けて重要な役割を果たしています。
本記事では、インセプションデッキの概要や構成要素、作成方法、そしてアジャイル開発との関わりについて詳しく解説します。また、プロジェクトメンバーが確実に同じ方向に向かえるようにするためのインセプションデッキの重要性や効果にも触れます。
アジャイル開発におけるインセプションデッキの重要性を理解し、プロジェクトの成功に向けたスタートを切りましょう。
インセプションデッキとは
インセプションデッキは、ThoughtWorks社のRobin Gibson氏が考案し、アジャイル開発の現場で広く用いられています。
これは、
プロジェクトの目的、方向性、優先順位、開発環境、コスト、人材、背景など、プロジェクト全体の概要をまとめるためのドキュメントです。
10の質問に回答することで作成され、プロジェクト関係者が共同で回答することでより効果的なドキュメントになります。
アジャイル開発ではプロジェクトが当初の計画通りではなく日々修正しながら行う開発手法とも知られ、関係者間での合意が不十分なまま進むこともあります。
しかし、インセプションデッキを使用することで、メンバー間での方向性を整理し、ブレのないプロジェクト進行を実現できます。
また、インセプションデッキは、「アジャイルサムライ」という書籍でも紹介されており、プロジェクト開始前に10の質問に回答することでプロジェクトのWhyとHowを明確にし、チーム内で共有する活動として行われます。
これにより、プロジェクトの全体像と目標が明確になり、メンバーが一体となって効果的にプロジェクトに取り組むことができます。
インセプションデッキを活用するメリット
インセプションデッキの作成には以下のようなメリットがあります。
プロジェクトのスコープ(範囲)が定まる
インセプションデッキを作成することで、プロジェクトの範囲が明確化されます。
これにより、どの機能や要件を含めるかが決定され、プロジェクトの方向性が明確になります。
メンバー間での統一認識
インセプションデッキはメンバー間で共通の目標や方向性を明確にするためのツールです。
メンバーが同じ認識を持ち、共通の目標に向かって協力して作業することができます。
プロジェクトの重要度と優先順位の可視化
インセプションデッキにはプロジェクトの各項目の重要度や優先順位を示す情報が含まれます。
これにより、チーム全体で作業の優先順位を把握し、リソースを最適に割り当てることができます。
インセプションデッキの作成によって、トラブルや課題に対する事前の想定と対策が可能になります。チームは潜在的な問題や障害を予測し、それに対する対策やアクションプランを策定することができます。
さらに、インセプションデッキによってプロダクトのユーザーやバリューが明確化されます。プロジェクトのビジョンや目標を明確にすることで、開発するべきプロダクトやサービスが明確になります。
これにより、開発チームはユーザーのニーズに合わせたプロダクトを開発することができます。
以上のメリットを生かしてインセプションデッキを作成すれば、プロジェクトの成功確率を高めることができます。
チームの統一認識や目標設定、プロジェクトのスコープ管理、リスク予測と対策、ユーザー中心の開発など、効果的なプロジェクト進行に貢献します。
インセプションデッキの基本的な作成方法
名前だけ聞くと作成するのが難しそうだなと思ってしまいますが、実は至ってシンプルな作り方です。
インセプションデッキは、プロジェクトメンバーだけでなく顧客や利害関係やなど関わりがある方であれば誰でも作成に参加が可能です。
以下の10個の質問に回答するだけで作成することができます。
我われはなぜここにいるのか
エレベーターピッチを作る
パッケージデザインを作る
やらないことリストを作る
「ご近所さん」を探せ
解決案を描く
夜も眠れなくなるような問題は何だろう
期間を見極める
優先順位は?
何がどれだけ必要なのか
具体的な質問の意図や回答例やポイントについては次の章でご説明します。
インセプションデッキを構成する10の質問
質問1:我われはなぜここにいるのか
プロジェクトメンバーの存在意義を明確にしましょう。なんのためにこのプロジェクトが発足し、なぜ我われプロジェクトメンバーは集められたのかを考えます。
・どうしてこのプロジェクトを発足する必要があったのか
・対象となる顧客は誰で、どういった目的を持って依頼しているのか
・なぜ我われが集まる必要があったのか
上記にこたえて、プロジェクトのゴールを固めましょう。
質問2:エレベーターピッチを作る
忙しい経営者や他部署の部長、はたまた先方のお偉いさんとエレベーターでご一緒になった際にこのプロジェクトについて何と説明しますか?
エレベーターに乗っている極短い時間で説明できるようまとめてみてください。
ステークホルダーや最終的に納品するプロダクトのジャンル、メリットや導入するべき理由などを踏まえると考えやすいかもしれません。
例:
[顧客]向けに作成している
[プロダクト名]というプロダクトは、
[プロダクトジャンル]です。
これを導入することで[顧客]へ[メリット]を付与することができます。
他社製品と違って[差別性]があります。
などといったように説明できるように議論してみましょう。
問3:パッケージデザインを作る
これは実際にパッケージとして販売する予定ではなくても問題ありません。プロジェクトメンバーでの完成イメージをすり合わせるためのアクションです。
プロダクトのロゴやUIイメージ、PRの見せ方としてのコピーイメージなど描いてください。
言葉やテキストで見るよりも、視覚的に認識を統一することができるでしょう。
問4:やらないことリストを作る
プロジェクトを進めていくと、「これも」「あれも」とどんどん追加要件が現れる事は日常茶飯事です。そうなると追加分のスケジュールが足らずどんどん遅延していくことでしょう。
そうならないためにも要件を考える際は、「やること」だけでなくしっかりと「やらないこと」を明確化しておくことがとても重要です。
しっかりと顧客と認識を合わせ言語化し合意しておきましょう。
問5:ご近所さんを探せ
質問文を最初に見た時「?」としか浮かばなかった方も大丈夫です。至ってシンプルな質問です。
プロジェクトに関わるすべての人を書き出してください。
また現状関わっていなくても関わる事になりそうな方や、いざという時に頼れる方を洗い出しておくことで何か問題があった際でも迅速に対応を進めることができます。
問6:解決案を描く
プロジェクトを進めていく上でどういったアプローチが適切かを考えていきます。
どんな開発手法を取るべきか、プログラミング言語は何が適切か、ディレクトリ構造はどうするか、どういったガイドラインが必要か
などを洗い出しましょう。
技術的な問題を可視化することで、現実性の高いアプローチが明確化されます。
問7:夜も眠れなくなるような問題は何だろう
質問文を見るとかなり炎上している際の事を想像するかもしれませんが、そこまで大きい問題は想像しなくて大丈夫です。
ここで回答すべきは、現段階で想像しうる「問題」「課題」「障壁」などトラブルの火種になりそうなものを洗い出しましょう。
依存関係やリスクなどを洗い出しておくことが重要です。
弊社では、そういった「夜も眠れなくなるような課題は何だろう」というトラブルの火種を洗い出すためのアクション資料をご用意しております。
具体的に、インセプションデッキや今回の課題事前洗い出しというアクションを示した資料となっております。
もしよろしければ以下URLからダウンロードしてご使用ください。
問8:期間を見極める
現時点でどれくらいの作業工数が必要かざっくり見積もります。いつまでにどこまで進捗させるべきか数値レベルでなくてもいいのでおおよそのスケジュールを決めておくことが重要です。
あくまで現在考えれる目標であって、確約ではありません。
問9:優先順位は?
以下の4つの項目において、プロジェクトにおける大切なポイントや欠けてはいけない内容を考えましょう。
・スコープ
・予算
・納期
・品質
の4つです。
現状決まっている必要な機能は必ず搭載するのか、搭載できるかどうかはそのタイミングでの予算次第なのか、もしくはスケジュール次第なのか。
または徹底的にテストをし一歳のバグを出さないことなのかということです。
もちろん全て完璧に出せることを求めるでしょうが、最悪の事態を考え優先順位をつけておくことは大切といえるでしょう。
問10:何がどれだけ必要なのか
最後にここまで話し合ってきた内容を踏まえながら、
・予算
・期間
・スキルまたは人数
がどれくらい必要かを決定しましょう。
合わせてプロジェクトの目的や意味を再確認することも重要でしょう。
まとめ
当記事では、インセプションデッキの概要や目的から作成方法などを説明してきました。
改めてポイントをまとめます。
インセプションデッキは、アジャイル開発によく用いられるプロジェクト全体の概要をまとめるためのドキュメントです
インセプションデッキの作成を通して、プロジェクトメンバーや顧客と統一認識を共有することができます。
インセプションデッキの作成は、10個の質問に回答し進めていきます。
ご理解いただけたでしょうか。インセプションデッキはプロジェクト開発において、非常に大切なドキュメントの1つであります。
また作成方法はシンプルで10個の質問に回答していく形式を採用します。
インセプションデッキを作成し、より高い確率でプロジェクトを成功に導いてください。
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