「はたらいて、笑おう。」をグループビジョンに掲げ、「テンプスタッフ」や「doda」をはじめとした人材サービスを多岐に渡って展開するパーソルグループ。
本日はパーソルホールディングス株式会社の執行役員 CIO/CDOの柘植 悠太氏にリーダーのあり方を伺いました。
柘植 悠太|パーソルホールディングス株式会社 執行役員 CIO/CDO
2006年インテリジェンス(現パーソルキャリア)に新卒で入社。
人材紹介事業の法人営業を経験した後、事業企画/経営企画部門にて事業戦略立案・実行を推進。その後、データ利活用・DX部門を立ち上げ、事業変革を担当。
2019年よりパーソルキャリアの執行役員に就き、エンジニアを中心とした専門組織「テクノロジー本部」の立ち上げを担当。
2022年4月よりパーソルホールディングス執行役員CIO/CDOに着任。グループビジョンである「はたらいて、笑おう。」の実現に向け、パーソルグループ全体のIT/テクノロジー活用をリード。
新卒4年目にして、会社の看板を背負うという実感
--現在は執行役員という立場ですが、まずは社会人になってからはじめてのリーダー経験において、大きく影響を受けた学びをお聞かせください。
はじめてのリーダー経験では、管理職としてお客様の前で発言することは会社としての発言となること、またお客様からは会社としての対応を求められているということを学びました。
新卒入社4年目のときに、営業のマネジャーとしてトラブルに対する対応策を求められた際、「対応します」、「改善します」、「頑張ります」と私個人の思いをそのまま発言をしてしまっていました。
その際にお客様から、「あなたは上司として来ていただいているので、その発言は既に会社としての発言ということになります。
それを踏まえた上での発言ということでよろしいでしょうか」と厳しいお言葉をいただきました。
それまでは一営業担当として考え、提案をしていましたが、上司として発言する際には、会社対会社として向き合わなければならないということに気付かされました。
個人の熱意は重要ですが、管理職という立場においては熱意だけでは不十分であり、具体的な提案を出すことはもちろん、言葉の選び方も変える必要があることを、学び、
責任者として会社の看板を背負っているという意識が身につきました。
なによりも最初にやるべきことは、メンバーとの信頼関係構築
--マネジャーとして大事にされているマネジメントスタイルについてお聞かせください
メンバーを導く立場として、「自分自身について率直に話すこと」そして、「メンバーについて理解すること」の2つを大事にしています。
たとえばビジネス書からマネジメント手法やフレームワークを学び、戦略を考えることも大切なことではありますが、組織を束ねるということは、メンバーとの信頼関係なしでは成り立ちません。
自身の正直な気持ちはもちろんのこと、自分ができないことも裏表なく話し、時には頼ることも大事です。
こういった自己開示については営業現場のマネジャー時代から、執行役員となった今も変わらず意識しています。
その上で、メンバー一人ひとりと向き合い、個人の能力や個性を活かす方法を考えます。
マネジャーは、メンバーのキャリア面だけでなくもプライベートな人生においても、影響を与える立場だからこそ、どのようなサポートができるか、そして、どうしたら「はたらいていてよかった」と思ってもらえるか、を考える必要があると思っています。
--マネジメントで重視している自己開示とメンバー理解の2つについてお話しいただきましたが、相手を理解するために具体的にどのようなことを実施されていますか。 また、チームづくりにおいて大切にしていることも併せてお聞かせください。
各メンバーと1時間ほど会話する機会を設けています。
メンバー自身の原体験を振り返りながら、仕事への想い、生きる上で大切にしていること、ストレスになりやすいものは何かを理解しようとしています。
その話を聞いた上で、「〇〇さんはこういうことを大切にしているのですね」と必ず確認を取ります。
こういった擦り合わせを積み重ねることが信頼関係をつくる上で重要だと考えています。
会話の中で出てきたキーワードを今後の目標設定に使用するなど、共通の言葉を持った上でマネジメントすることで、相手をより理解できるよう努めています。
また、斜めの関係を構築する事も意識しています。
直属のメンバーとの関係だけではなく、そのメンバーの同期や仲の良い人と関係を築くこともアラートを拾うことにつながると考えたからです。
1対1だと相談しにくいと感じる人もいるので、別の人からも情報が届く環境を作ることを大切にしています。
相手を理解することはリーダー・メンバー間の縦の関係だけではなく、メンバー同士の横の関係構築においても重要です。
これまでの職種や担当事業などのバックグラウンドが異なると、それぞれのこだわりや誤解が生じやすいため、
相手が「何を大切にしているか」対話を通して知ることでチームの結束力を高めます。
組織を前進させるために必要な、関係構築後のステップ
--チームをさらに前進させるために重要だと考えていることを教えてください。
自身の持つ信念をメンバーに伝えることです。
リーダーはチームの目標や、目標を達成するためのアクションをメンバーに伝える役割があります。
さきほど信頼関係の重要さをお伝えしましたが、目標達成に向けて組織を前進させるには、ビジョンやミッションを明確にする必要があります。
リーダー自身が作りたいものや、大切にしたいことをメンバーに伝えることで、組織の目指す姿をチーム全員で共有することができると考えています。
また、企業に属する以上は個人の信念と企業のビジョンの紐づきを踏まえる必要があります。
ただし、企業のビジョンとメンバーの思いを結びつけることだけでは、メンバーの力を十分に引き出し、チームが一丸となって大きなエネルギーを発揮するには不足していると考えています。
企業とはその進む方向性に共感した仲間が集まっている場
だからこそ、よりチームの結束力を高めるために、リーダー自身が本当にやりたいことを明確に示すことが大切です。
--チームとしてメンバーも一層熱量高く活動するために意識していることはありますか。
顧客や会社に提供したい価値や、実現したい世界観について具体的なイメージを持つこと、そして自分たちの行動がその目標に繋がっているのだということを定期的に伝えることです。
また、成果や結果を称賛することも大切ですが、メンバーが何を考え、どのような価値が生まれたのかという点に着目するようにしています。
例えば、ある目標数値に対して300%を達成した社員と100%を達成した社員がいたとします。
一般的に達成率で評価をすると300%を達成した社員の方が称賛されるべき成果を出していますが、100%を達成した社員も300%を達成した社員と同様に、顧客にとって価値のあるサービスを提供している場合もあります。
そういった成果にも着目し評価、称賛するように心がけています。
マネジャーはプレイヤーの延長線ではなく一つの役割
--マネジャーという役割についてどういった考え、指導方法をお持ちですか。
マネジャーは1つの役割だと考えています。そのため私自身が体系化しているマネジメントスキルを、今後マネジメントする立場になる若手メンバーに伝えて会得してもらっています。
エンジニアのコードを書くスキルや、どの言語を扱えるのかといった技術力と同じように目標設定、評価、1on1、戦略設定など全てをスキルとして考えています。
--マネジメントスキルとして、マネジャーに求めていることをお聞かせください。
メンバーに任せる業務範囲の見極めや、マネジャーが求める成果物をメンバーが理解できているか、あらかじめ確認することを意識するように求めています。
何をどうアウトプットしようとしているのか必ず確認し、理解している場合はそのまま任せ、伝わっていない場合はより詳しく説明するなど、最終的に相手から求めたものが返ってくる状態を作ることが重要です。
マネジャーがメンバーに対して雑な依頼をした結果、希望と異なる成果となった場合、お互いに追加の労力をかけることになるため、最初からキャッチしやすいボールを投げ、キャッチできるように返してもらうようにすることが大事です。
リーダーとして信念を貫き通す
--最後に、若手リーダーへアドバイスをお願いします。
自身が正しいと思ったことは、最後まで貫いてください。
自身の想いを持たずに、ただ上の意向に従って行動したとしても、「なぜ仕事をしているのだろうか」、「楽しいのだろうか」と疑問を持つだけだと思います。
どれほど辛いことがあっても、上手くいかなくても、自身の信念を持ちやり抜くことが大切です。
マネジメントスキルは会得することで誰でもマネジャーとしての役割を全うすることができますが、会得するだけではリーダーとしては不十分です。
リーダーはお客様にとって何がベストか、会社としてどうすべきか、メンバーにとって何が良いかを理解した上で、最終的に自身の信念に立ち返り、本当に納得する選択を行ってください。