「OKRやKPIという言葉はよく聞くが、具体的にどう違うのかよくわからない」という方は多いのではないでしょうか。
チームや組織の目標達成において、どちらをどのように使い分けるべきなのか、OKRをはじめとした目標管理方法の使い方や違いについて分かりやすく説明していきます。
また、OKRだけでなく、混同されやすいKPI・KGI・MBOの定義や例についても触れながら、その使い分けによって実現されるメリットについても解説します。
OKRやKPIについて初めて学ぶ方や、より効率的な目標管理を実現したい方は、ぜひ本記事を参考にしてください。
1. OKRとKPIの違いについての概要の説明
OKRとKPIの最も大きな違いは、その使用目的です。
OKRは、
企業がパフォーマンスを向上させ、変化を促進するのに役立てるための目標設定手法
つまりフレームワークです。
OKRは、目標(O)でチームが達成したい方向性を決め、主要成果(KR)によって進捗確認を行うことで、課題の特定やその後の修正・改善に役に立ちます。 その分、大胆な目標が立てやすくなります。
KPIは、
正確な頻度(年、四半期、月、週など)で分析するための業績評価指標
です。
KPIは業績や成果の測定のために使用されますが、その数値の成長を促進するために何を修正または改善する必要があるかまでは教えてくれず、別に施策を考える必要があります。
OKRとKPIの他の違いとしては、以下の表のようになります。
詳しい使い分け方については、次章で解説していきます。
それではOKRとKPIの詳しい説明を見ていきましょう。
OKRとは
OKRの定義
OKRとは、「Objectives and Key Results」の略語であり、「目標(Objectives)の達成度合いを評価するための「主要成果(Key Results)」を設定する目標管理の手法です。
OKRは、 インテルのCEOだったアンディ・グローブが開発したアイデアです。
インテル社では、1970年代後半に急成長を遂げる中で、従来のマネジメント手法では追いつかない状況に陥りました。
そこでアンディはピーター・ドラッカーからMBOの考え方を取り入れ、目標達成度を測定するための指標として「主要成果(Key Results)」の概念を加えることで、MBOをOKRとしてアップグレードしました。
MBOについては、2章で詳細をご説明します。
OKRの例
例えば、ある企業が「売上を10%増加させる」という目標を設定した場合、それをOKRの形式に変換すると以下のようになります。
目標(Objective)は「売上を10%増加させる」と設定でき、
主要成果(Key Results)に該当する例として、以下の3つが挙げられます。
- 新規顧客獲得数を1,000人増やす
- 既存顧客のリピート率を5%増加させる
- 新製品の販売比率を15%増加させる
このように、Objectiveには具体的な目標を、Key Resultsにはその達成度合いを評価するための具体的な数値目標を設定します。
OKRを導入する場合、まず組織全体で共通の目標を設定します。
この組織レベルの目標を参考にして、各チームが自分たちの目標を設定します。
そして、各チームの目標をもとに、個人が自分の担当業務において目標を設定することになります。
このように、組織全体でOKR設定したものが、チームから個人という流れで設定されていきます。
OKRを導入することで、組織レベルの目標と各チーム・個人の目標が連動し、全体最適な目標設定が行われます。
これにより、チームや個人の目標が共有され、目標達成に向けた取り組みが進みやすくなります。
KPIとは
KPIの定義
KPIは key performance indicators の略語で、重要業績評価指標とも呼ばれます。
具体的には、企業が活動や取り組みにおいて、どの程度目標を達成しているかを評価するための指標です。
KPIは、チーム全体の成功に焦点を当てることもあれば、個々のプロジェクト、製品、部門、または戦略の成功を示すこともあります。
KPIは通常は定量的な評価基準であるため比較や分析、またそこから戦略を設計する際に役立てます。
KPIの例
組織やチームごとに仕事の目標が違うため、以下に異なる部門の例を2つご紹介します。
例1: 営業部門のKPI
営業部門では、毎月の売上目標を設定し、それを達成するためのKPIを設定します。
例えば、営業員1人あたりの新規顧客獲得数や、見込み客へのアプローチ回数、商談成約率などがKPIとして設定されます。
これにより、個々の営業員の成績を評価し、部門の業績向上につなげます。
例2: 生産部門のKPI
生産部門では、品質向上や生産性の向上を目指し、KPIを設定します。
例えば、生産ラインの稼働率や、生産ラインあたりの生産数、不良品率などがKPIとして設定されます。
これにより、生産現場の改善点を把握し、生産効率の向上や品質向上につなげます。
KPIを使う際に陥りがちな失敗例としては、KPIで設定した定量的な目標を追うあまり、KPIの達成自体が目的になってしまう事です。
KPIは「重要業績評価指標」という目標達成の一つの手段に過ぎないことを忘れないようにしましょう。
OKRとKPIの使い分けのポイント
OKRとKPIの使い分け方
OKR、KPIはどちらも目標達成までの過程を測定する有効な手段です。
しかし、それぞれ異なる方法で使用されるため、 これらを最大限活用するには、目的と用途に応じて使い分け、または併用することが重要です。
ここでは、OKRとKPIの目的と用途の違いによってどう使い分けるべきか説明します。
OKRはビジョンや戦略の実現に向けた長期的な目標を設定するために使用されます。
OKRは、明確な目的を定義し、その目的を達成するための重要な指標の達成度合いを確認するためのフレームワークです。
OKRの目的は、チームや組織全体が一つの方向性を共有することです。
また、チームのOKRから個人のOKRに細分化することで、自分の業務がチームの方向性と一致していることを感じることができ、仕事に対するモチベーションが高まります。
チームメンバーのモチベーションが高まれば、個人の生産性が上がり、チーム全体の目標達成の効率も向上します。
KPIは、日常的な業務の進捗を測定し、組織やチームが定めた目標に対してどの程度達成しているかを定量的に評価するために使用されます。
KPIは、目標を達成するための短期的な目標として機能し、チームの成果を測定するために使用されます。
目標が定量的で分かりやすく、公平に進捗状況を評価できる点がメリットです。
具体例を以下に紹介します。
たとえば、ある企業が、そのビジネスの成長を促進するために、以下のような目標を立てたとします。
目標:新規顧客数を増やす
OKRを使用した場合
目標(Objective):
1000人の新規顧客獲得
主要成果(Key Results):
メールマーケティングキャンペーンを実施し、400人の新規顧客を獲得
ソーシャルメディア広告を実施し、300人の新規顧客を獲得
コンテンツマーケティング戦略を実施し、300人の新規顧客を獲得
KPIを使用した場合
KPI:
毎月の新規顧客数を測定し、前月より5%増加するように目標を設定
この例では、OKRは、新規顧客獲得(共通の方向性)に向けた具体的な取り組みを示しています。
一方、KPIは、毎月の新規顧客数の増加を測定することで、目標に向けた進捗状況を定量的に把握することができます。
OKRとKPIを併用することで、チーム全体の方向性が揺らぐことなく、ビジネス目標に対する具体的なアクションを設定し、その進捗状況を定量的に測定することができます。
2. OKR・KPI・KGI・MBOとの比較
OKRやKPIだけでなく、聞いたことはあるが紛らわしいKGI、MBOについてもどう違うのかいまいちわからない方もいるのではないでしょうか。
本章でKGI・MBOの定義について、それぞれどう違うのかについても見てみましょう。
KGIの定義
KGI(Key Goal Indicator)は、目標を測定するために使用される指標で、KPI(Key Performance Indicator)の上位に位置する指標です。重要目標達成指標とも呼ばれます。
つまり、KGIは、チームの業務戦略に基づいて設定された最終目標であり、それを細分化したものがKPIです。
KGIは一般的に、売上高や利益率、契約数などで設定されます。
そこで、まずチームと「何を達成したいのか」を決め、その成功を明確に評価するために具体的な数値を設定します。
KGIの具体例として、以下のようなものがあります。
500万円の売上を達成
契約数の前年度比150%達成
KGIを設定した後、そこから逆算して、目標に向けた中間的な進捗を評価するKPIを設定します。
KGIを「500万円の売上を達成する」と設定した場合、KPIは以下のようなものが考えられます:
企業HPへの訪問者数30万人を目指す
検索エンジンでサイトを訪れるユーザー数100万人を目指す
この順番で、KPIを設定するには、まずKGIを設定して、最終的なゴールに到達するまでのステップが直結するようにする必要があります。
KPI・KGIの設定する際の注意点は以下のものがあります。
定性的に設定しないこと
よくある間違いは、KGIを「売上を上げる」などの漠然としたものに設定してしまうことです。
しかし、必ず売上をいつまでどれだけ増やしたいかを定量的に定義して、目指すべき目標を明確にする必要があります。
KGIを過剰なKPIに分解しないこと
過剰なKPIを設定すると、最初から最後までのプロセスが複雑になりすぎて、それぞれの指標をきちんと把握できなくなります。
KGIを分解する際におすすめの方法はツリーを作成することです。
KPIツリーを作成する際は、ロジカルシンキングの原則の一つであるMECE(Mutually Exclusive, Collectively Exhaustive)、つまり抜け漏れや重複が無いかを意識するといいでしょう。
MBOの定義
MBOとは、 Management by Objectives(目標による管理)の略語で、1954年に近代経営の名付け親であるピーター・ドラッカーが『マネジメントの実践』という本を通じて提唱した目標管理手法、フレームワークの一つです。
従業員と管理職や組織の目的を明確に定義し、擦り合わせて合意することで、組織のパフォーマンスを向上させることを目的としています。
ステップとしては、組織目標の見直し、労働者の目標の設定、進捗状況の監視、評価、報酬の付与という5つのステップで構成されています。
個人と組織が合意した目標設定を行うことで、組織の目標達成に近づくだけでなく、メンバーのモチベーションを高めることができます。
一方で、以下のようなデメリットもあります。
生産目標のような特定の目標を設定すると、労働者は、品質が悪くなるようなショートカットも含めて、どんな手段を使ってでもその目標を達成する
目標が従業員の主観を無視しがちである
会社の目標と従業員の目標が自動的に一致しないため、動機付けがうまくいかないことが多い
ドラッカー自身も、MBOは「単なるツール」であると言っています。
その後1970年頃にMBOの考えを取り入れて開発された考えがOKRです。
OKR・KPI・KGI・MBOの比較表
3. まとめ
本記事では、OKRとKPIの違いや使い分け、さらに、OKRとKPI以外の目標管理方法であるKGIやMBOとの比較を紹介しました。
最後に、本記事の内容を以下にまとめました。
- OKRは、企業がパフォーマンスを向上させ、変化を促進するのに役立てるための目標設定フレームワークです。チーム内で目標を共有し、個人のモチベーションを上げる効果があります。
- KPIは、正確な頻度(年、四半期、月、週など)で分析するための業績評価指標です。目標までの進捗の管理を定量的に測定できることから、成果が可視化しやすく、効率的に目標達成に近づけることができます。
- KGIは、目標を測定するために使用される指標で、KPI(Key Performance Indicator)の上位に位置する指標です。
- MBOは、組織目標の見直し、労働者の目標の設定、進捗状況の監視、評価、報酬の付与という5つのステップで構成されている目標管理手法、フレームワークの一つです。
OKRとKPIの使い分け方としては、
- 長期的な目標を立てるときや、チームや組織全体が一つの方向性を共有する際は、OKR
- 目標を達成するための短期的な目標として機能し、チームの成果を測定するためにはKPI
を使うと良いでしょう。
一見同じように見えるこれらの目標管理指標・フレームワークですが、これらの違いや、それぞれの特徴、使い分けのポイントを理解できましたでしょうか。
チームや組織の目標や業務の目的に応じて適切な目標管理方法を選択し、目標達成を効率的に進めていきましょう。
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