アジャイル開発を円滑に行うには、リファインメントを実施することが必要不可欠です。
みなさんは、リファインメントの目的や実施方法について正しく理解できていますでしょうか?
本記事では、リファインメントの概要、目的から実施の方法まで詳しく解説していきます。
1. リファインメントとは
リファインメントは、アジャイル開発における重要なプロセスであり、開発プロダクトの品質向上や効率的な開発を促進するために行われます。
当章では、リファインメントの概要と目的について詳しく見ていきましょう。
リファインメントの概要
リファインメントは、英語の「refinement」の日本語訳である「洗練、改良、修理」の通り、ものをより良く、洗練されたものにするプロセスを指します。
具体的には、
プロダクトバックログ(プロジェクトのタスクや要件に優先順位を付けたリスト)を見直し、整理すること
を意味します。
一般的には次のスプリントプランニング(スプリントの開始時に行う計画を立てること)の直前に実施されます。
プロダクトバックログは、目標達成までに必要な機能や技術的な改善要素を優先順位付けて記述したリストです。
プロダクトバックログリファインメントとはスクラムセレモニーの一部で、スクラムに含まれる5種類のセレモニー(ミーティング)の一つです。各セレモニーではスクラムチームが集まり、プランニングや進捗確認、見直しなどを繰り返しながらプロジェクトが進行していきます。
リファインメントの手順の概要としては、スクラムチームやステークホルダーが集まり、プロダクトバックログ内のタスクや要件を再評価し、ユーザーのゴールやストーリーを明確化します。これにより、プロダクトが提供すべき価値が明確になり、開発者は実装方法や工数の見積もりについて具体的な情報を得ることができます。
リファインメントのタイミング・必要な時間
リファインメントのタイミングは、スクラムのプロジェクト進行において非常に重要です。通常、リファインメントは次のスプリントプランニングの直前に行われます。つまり、前回のスプリントが終了し、次のスプリントの計画を立てる前に、プロダクトバックログを見直し、整理します。
2017年のスクラムガイドでは「リファインメントは開発チームの作業の10%以下にすることが多い」とされていますが、プロジェクトのスプリント期間に応じてプロダクトオーナーが調整します。
時間を設定する際は、以下の時間を目安に設定すると良いでしょう。
- 1週間スプリントの場合:1〜2時間
- 2週間スプリントの場合:2〜4時間
リファインメントの参加者
2020年のスクラムガイドによると、敏捷性やコミュニケーションの質を維持するためにスクラムチームが10人以下の小規模チームが望ましいとされています。
通常、スクラムチームでリファインメントを行う際、以下の役割を持つメンバーが参加します。
- プロダクトオーナー: プロダクトオーナーはリファインメントの主催者であり、プロダクトバックログの内容と優先順位を調整し、開発の優先度を見直します。また、スプリントの進捗と変更についても開発者に確認します。スクラムガイドでは、プロダクトオーナーが最終的な責任や決定権を持つと定義されています。
- エンジニア(開発者): 開発者はプロダクトバックログのアイテムについて検討し、プロダクトオーナーに共有する役割を果たします。また、プロダクトバックログの内容と受け入れ基準に関する確認を行います。一部では、ストーリーポイントの見積もりも担当します。
- スクラムマスター: スクラムマスターはチーム全体の責任者であり、リファインメントの目的と進行方法を説明し、スクラムメンバーのマネジメントを行います。また、リファインメントを円滑に進めるためにファシリテーションを行うこともあります。
しかし、プロダクトオーナーのようなリファインメントには通常これらのメンバーが参加しますが、プロジェクトやチームの状況によっては他のステークホルダーも参加することがあります。
ステークホルダーの参加により、ビジネス面と技術面の視点からユーザーゴールと実装要件を洗い出すことができ、コミュニケーションの質も向上します。
2. リファインメントの目的
リファインメントには以下の3つの目的があります。
プロダクトバックログの優先順位付け
バックログリファインメントでは、プロダクトバックログの見直しを通して開発の優先順位を付けます。
プロダクトバックログは、開発チームが取り組むべき機能やタスクのリストであり、優先順位が明確でないと作業の進行や成果物の価値が低下する可能性があります。
リファインメントによって、優先順位が明確になり、開発チームは重要な機能やタスクに集中することが可能です。
プロダクトバックログの整理と共有
リファインメントでは、プロダクトバックログを細かい単位で分割し、次のスプリントを円滑に進められる環境を整えることが目的です。
業務内容が重複しているか、分割できていないプロダクトバックログを発見し、適切な形で統合・分割してから共有することで、業務内容に関する質問や不明点を削減する効果が期待できます。
整理されたプロダクトバックログは、スクラムチーム全体で共有され、透明性が高まります。
プロダクト品質と作業効率の向上
適切なリファインメントの実施により、プロダクトバックログの内容や作業量に関する透明性が向上します。
これによって、開発者はプロダクトの要件や目標を明確に把握でき、作業を効率的に進めることができます。
また、リファインメントによって不明瞭な要件や重複した作業が明確化され、作業の見直しや品質の向上になり、ユーザーエクスペリエンスの向上にも繋がります。
リファインメントは、開発プロセスにおいてプロダクトバックログを洗練し、優先順位を付ける重要な活動です。
それによって開発チームは効果的な作業を行い、プロダクトの品質と成果物の価値を最大化することができます。
3. リファインメントの必要性
リファインメントは、アジャイル開発において不可欠なステップであり、以下の理由からその重要性が高まっています。
このセクションでは、リファインメントの必要性について詳しく探っていきます。必要性は以下の3つのように分けられます。
プロダクトの品質向上
リファインメントによって、開発プロダクトの品質が向上します。
リファインメントの過程で、機能やタスクの詳細設計や見積もりが行われます。これにより、開発者は明確な要件と目標を把握し、効果的な開発を行うことができます。
また、バックログ内のアイテムを洗練することで、品質の高いプロダクトを提供するための基盤を構築します。
効率的な開発の実現
リファインメントは、スプリントの前に機能やタスクを詳細化するため、開発の効率性を高める役割を果たします。
具体的な要件やタスクの明確化により、開発者は作業の見積もりや優先順位の決定に必要な情報を得ることができます。
これにより、スムーズなプロジェクトの進行や期限の遵守が可能となります。
チームの共有とコラボレーション
リファインメントは、プロダクトオーナーや開発者が協力し、情報を共有し合う重要な場です。
開発チーム全体がバックログの内容や将来のスプリントについて共通の理解を深めることで、コミュニケーションの円滑化や意思決定の迅速化が図られます。
また、問題や課題について話し合いを行い、解決策を共同で見つけることができます。
リファインメントは、プロジェクトの成功に欠かせない要素であり、開発プロダクトの品質向上や効率的な開発を実現するために必要です。
4. リファインメントの実施方法
リファインメントの実施手順
リファインメントを効果的に実施するためには、以下の手順に従うことが重要です。
手順1:詳細の共有と確認
プロダクトオーナーが高い優先順位を付けたプロダクトバックログをスクラムチーム内に共有します。ユーザーストーリーの内容や具体的な受け入れ条件について詳細を共有し、参加者が理解できるようにします。
ユーザーストーリーを作成する際には、誰がどういった目的で何を行いたいかを明確に記述することが重要であるため、この段階で共有と確認を行うことで、スクラムチーム内でのプロダクトバックログの受け入れ条件や作業内容に対する認識を揃えることができます。
手順2:ユーザーストーリーの分割
ユーザーストーリーを小さなタスクに分割することで、各タスクの優先順位付けや見積もりがしやすくなります。タスクの分割は、プロダクトバックログアイテムが適切なサイズになるように行います。
分割の際には、ユーザーストーリーが独立していて、利益をもたらす最小の機能単位になるように心掛け、各タスクは完了の定義が明確であり、受け入れ基準を満たすことが求められます。
手順3:作業量の見積もり
見積もりは、スクラムチームのエンジニアが行います。見積もりには、時間単位やストーリーポイントなどの指標を用いることが一般的です。
その際には、過去の経験や類似の作業に基づいて現実的な予測を行い、エンジニア同士の意見を交換して合意形成を図ることが重要です。
手順4:優先順位の設定
スクラムチームは次のスプリントで実施する内容についてミーティングを行い、ユーザーストーリーの優先順位をプロダクトオーナーやステークホルダーとの協議のもと個別に提案・設定します。
新しく追加されたプロダクトバックログや変更された要件についても、エンジニアが技術的な実現性や納期を考慮しながら個別に判断し、提案を行います。
基本的にはプロダクトオーナーが作成したプランを基にして、エンジニアがユーザーストーリーの追加や見直しを行うことで、バックログリファインメントを進めていきます。
手順5:細部の検討と洗練
各タスクやユーザーストーリーの細部を検討し、必要に応じて洗練を行います。
これには、ユーザーストーリーの受け入れ条件や実装要件の洗い出し、必要な質問や調査、詳細な設計などが含まれ、リファインメントの参加者であるスクラムチームやステークホルダーが意見を交換し、議論を重ねることでプロダクトバックログの品質を向上させます。
手順6:ドキュメントの整備
リファインメントの結果を適切にドキュメント化します。ユーザーストーリーの詳細、受け入れ条件、タスクの見積もり結果などを適切な形式で記録します。
これにより、スクラムチーム内外の関係者がプロダクトバックログの内容を理解しやすくなり、意思決定やコミュニケーションが円滑に行うことが可能です。
以上が、リファインメントの実施手順の概要です。
リファインメントの実施はスクラムの各イベントやタイミングに組み込まれますが、スプリントプランニングのタイミングで特に重要です。
リファインメントを適切に行うことで、スプリントバックログの作成やスプリントの進行に必要な情報が整理され、スムーズなプランニングが可能になります。
リファインメントの実施のポイント
リファインメントを効果的に実施するためには、以下の3つのポイントに留意する必要があります。
チーム全体の参加
リファインメントは、開発チーム全体の協力と参加が不可欠です。
開発者、プロダクトオーナー、スクラムマスターなどの関係者が積極的に参加し、意見やアイデアを共有することで、より良い結果を生み出すことができます。
定期的なリファインメントミーティングを設けることで、チーム全体の共有理解を深めることが重要です。
バックログの適切な選択
リファインメントでは、バックログ内のアイテムを適切に選択することが重要です。
開発スプリントに取り組む予定の機能やタスク、優先度の高いアイテムにフォーカスしましょう。これにより、議論や設計の効率化が図れます。
また、プロダクトオーナーやステークホルダーとのコミュニケーションを通じて、バックログの優先順位を調整し、目標に合致したアイテムを選択することも必要です。
詳細な設計と見積もり
リファインメントでは、機能やタスクの詳細設計と見積もりを行います。
これにより、開発者は実装に必要な情報を得ることができます。詳細な設計には、ユーザーストーリーやタスクの細分化、要件の洗練化が含まれます。
見積もりでは、開発にかかる時間やリソースを予測し、スプリントの計画を立てるための参考情報となります。チーム全体の知識やスキルを活かし、設計と見積もりを行うことが重要です。
リファインメントの実施の注意点
リファインメントを行う際には、以下の3つの注意点に留意することが重要です。
時間の適切な割り当て
リファインメントには適切な時間を割く必要があります。十分な時間を確保し、議論や設計に集中することで、意義のあるリファインメントを実施することができます。
プロダクトオーナーやスクラムマスターは、リファインメントのための時間枠をスプリント計画に組み込む必要があります。また、リファインメントミーティングの時間管理にも注意しましょう。
時間を適切に使い、効率的かつ生産的なディスカッションを行うことが求められます。
コミュニケーションの促進
リファインメントでは、関係者間のコミュニケーションを活発化させる必要があります。
開発者、プロダクトオーナー、スクラムマスターなどのチームメンバーは、定期的なコミュニケーションを通じて意見やアイデアを共有し合う必要があります。
コミュニケーション手段としては、ミーティングやワークショップ、チャットツールなどを活用しましょう。コミュニケーションの促進により、情報共有や意思決定のプロセスをスムーズに行うことができます。
フォーカスとバランスの保持
リファインメントでは、フォーカスとバランスを保つことが求められます。過度な詳細に陥りすぎず、プロダクトの全体像や優先順位を見失わないように注意しましょう。
リファインメントの目的は、プロダクトの品質向上と効率化です。適切なレベルの詳細設計や見積もりを行いつつ、プロジェクト全体の視野を持ち続けることが重要です。
また、各リファインメントセッションで異なる機能やタスクにバランスよく取り組むことも大切です。
これらの実施ポイントと注意点を順守することで、効果的なリファインメントを実現することができます。
リファインメントは、アジャイル開発プロジェクトにおいてプロダクトの品質や開発効率を向上させるための重要なプロセスです。
チーム全体の協力と参加、適切なバックログの選択、詳細な設計と見積もり、時間の適切な割り当て、コミュニケーションの促進、フォーカスとバランスの保持は、リファインメントの成功につながります。
また、リファインメントの実施には、アジャイル開発の原則やプロジェクトの要件に応じた柔軟さが求められます。リファインメントは継続的なプロセスであるため、開発の進捗や変化に応じて適宜調整することも重要です。
リファインメントを効果的に実施し、プロダクトの品質向上と開発効率の向上を図りましょう。
5. まとめ
この記事では、「リファインメント」というアジャイル開発における重要なプロセスについて解説しました。以下にまとめを示します。
リファインメントは、アジャイル開発において継続的に行われるプロセスであり、プロダクトの成果物やチームのパフォーマンスを向上させるための活動
実施には、チーム全体の参加、適切なバックログの選択、詳細な設計と見積もりなどのポイントに留意する必要がある
効果は、プロダクトの品質向上、効率的な開発の実現、チームの共有とコラボレーション
実施手順は、プロダクトバックログの詳細共有と確認、ユーザーストーリーの分割、作業量の見積もり、優先順位の設定、細部の検討と洗練、ドキュメントの整備が重要
成功のポイントは全体的な参加、適切なバックログの選択、詳細な設計と見積もり、適切な時間割り当て、コミュニケーションの促進、フォーカスとバランスの保持が必要
チーム全体が協力し、適切な方法やポイントに留意しながらリファインメントを実施することで、プロジェクトの成功に大きく貢献することができます。
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