360度評価は、従業員の能力や行動を評価するために広く使われている方法です。
360度評価とは、評価対象者のことをよく知る周囲の人たち全員がフィードバックを行う評価方法のことをいいます。
つまり、上司、直属の部下、同僚(つまり評価対象者の周囲360度にいる人々)が、評価対象者の長所と短所などについてフィードバックをします。
しかし、
正しい方法で評価やフィードバックができているか
失敗してしまうのではないか
と不安な方も多いのではないでしょうか。
360度評価を行う際は、事前に適切な計画やフォローがなければ、失敗する可能性があります。
この記事では、360度評価のよくある失敗例とその原因について紹介し、360度評価を成功させるためのポイントをいくつか紹介します。
これにより、360度評価を実施する前に、事前に計画を練り、成功につなげるために必要なポイントを身につけていきましょう。
1. 360度評価の失敗例
360度評価は、他の1対1で行われる評価と比べ、あらゆる方面からの評価されることで多角的な視点が得られ、上司だけからの評価だけでは気づかなかった自己理解が深まり、自身のキャリア開発や目標設定に役立てることができます。
一方で、 評価に対する受け取り方やその後のアクションにどうつなげればよいのか悩むこともあるでしょう。
また、評価者も評価対象者にどの程度の事柄や意見を評価として伝えるべきなのか悩んでしまうこともあるでしょう。
そこで以下に、360度評価を行うときに起こりやすい失敗例を紹介します。
是非、以下の失敗事例を教訓とし、今後の360度評価の実施の際に役立ててみてください。
人間関係の悪化
360度評価が上手くいかない場合、評価の結果が予想外であったり、メンバー同士の意見が対立したりすることがあります。
そのため、人間関係が悪化し、チーム内のコミュニケーションが取りづらくなる場合があります。
具体例
部下が上司を評価する際に、上司が部下に対して不満を抱いていた場合、評価結果に対する感情的な反発が起こり、人間関係が悪化することがあります。
結果的に、評価対象者が評価結果に不満を感じた場合、評価者や他のチームメンバーとの間に緊張が生じ、コミュニケーションが取りづらくなる可能性があります。
メンバーのモチベーションの低下
360度評価の結果が予想外であった場合、自信を失うメンバーや、自分の評価に納得がいかないメンバーが出てきて、チームメンバー全員のモチベーションが低下する可能性があります。
具体例
あるメンバーが高い評価を期待していた場合、実際の評価結果が低く、モチベーションが低下してしまうことがあります。
その結果、そのメンバーは「努力しても正当に評価されない」と感じ、業務の品質やスピードが低下する可能性があります。
評価に客観性・納得性がない
360度評価において、評価基準が明確でない場合や、評価者の評価が偏っている場合、正確な評価ができなくなります。
このため、受け取った360度評価に客観性・納得性がないと感じた場合、メンバーは改善や自己成長に向けた行動を起こすモチベーションが下がってしまいます。
具体例
評価者が個人的な嫌悪感から特定のメンバーに低評価を与えた場合、そのメンバーは客観的な評価が得られず、改善点も具体的に示されなかった場合、自己成長に向けた行動を起こすことができません。
これにより、チームワークの改善やメンバーの自己成長につながらない可能性があります。
時間的・精神的に負担がかかる
360度評価は、評価する人数が多いため、評価者にとっては時間的にも精神的にも負担がかかることがあります。
具体例 1
評価者は評価のために各々の評価者が膨大な量の書類を読んだり、評価のために個別面談を実施したりと時間的な負担がかかる場合があります。
大企業の場合、数百人規模の社員を対象とした360度評価を実施する場合があり、そのために評価者は多大な時間を費やさなければいけません。
このような場合、評価者はその時間を業務時間から割かなければならず、普段の業務に影響が出てしまう可能性があります。
具体例 2
評価者・評価対象者ともに精神的な負担が大きい場合もあります。
ある評価者が同僚の評価を下げ、評価の匿名性が守られていない場合、評価後にその同僚との関係が悪化し、コミュニケーションが取りづらくなることがあります。
また、評価対象者が複数いる場合、評価者は各人の評価をバランスよく行わなければいけない上に、その後の人間関係を考慮しなければならないため、精神的な負担が大きくなることがあります。
評価後にとるべき対策が分からない
360度評価は、評価結果を受けて、どのようなアクションを取るべきかを考える必要があります。
しかし、評価結果に基づいた対策を取るための指示がなかったり、アクションプランが不明確であったりする場合があります。
そのため、評価結果を活用することができず、改善策が見つけられないことがあります。
具体例
評価結果によって、改善が必要な業務項目が特定された場合、それに対する対策が不明確であると、問題が解決しないまま放置される可能性があります。
それが原因で、業務の質が低下することもあります。
2. 360度評価が失敗する原因
360度評価が失敗する原因として、主なものを以下に紹介します。
実施する目的の説明不足
360度評価は、従業員の能力開発や組織の改善を目的として行われます。
しかし、評価の目的が明確でないまま実施されると、参加者はどのような目的で評価を受けるのか理解できず、不満を持つことがあります。
たとえ人事担当が360度評価を推進していても、評価者である上司や同僚が360度評価の意義や目的に関心がなければ有効なフィードバックや公平な評価が行われないかもしれません。
360度評価に真剣に取り組まない理由はいくつかありますが、360度評価の効果がどの程度なのかを理解していない、最悪の場合、360度評価自体についてそれほど詳しく知らないという場合もあります。
具体例
360度評価を実施する際に「人事異動のための評価」という目的を明確にせずに行った場合、参加者が昇給を期待して評価に臨むと、期待に反して給与アップがないと参加者は不満を持ってしまうかもしれません。
評価が評価対象者の利益に影響する
360度評価が、評価対象者の昇進や昇給など、人事・業務成績に影響する場合、評価対象者と評価者の関係性が影響し、公平な評価が行われない可能性があります。
具体例
上司が評価対象者の部下である場合、上司に嫌われないようにと思い、不公平な評価を行う可能性があります。
また、上司が評価対象者と親しい関係にある場合、友情や感情に基づいた評価を行う可能性があります。
評価項目・設問が適切ではない
360度評価において、評価基準が明確でない場合、評価対象者はどのような評価を受けたのか理解できず、評価に対して納得できないことがあります。
また、評価基準が不適切である場合、評価が評価者の主観に偏ってしまうことで評価対象者が適切な評価を受けられないこともあります。
具体例
360度評価の評価基準に「優れたコミュニケーション能力」という項目のみを設定し、この項目が何を基準に優れていると判断できるかを設定しなかった場合、参加者はどのようなコミュニケーションが優れているのか分からず、受け取った評価に納得できない可能性があります。
評価後のフォローが不十分
360度評価の価値は評価自体ではなく、評価対象者が自分に対する360度評価を受け取った後にどのように内省し、どの程度行動に移され、改善に役に立っているかが重要です。
多くの360度評価が失敗するのは、フィードバックを受け取った後、評価対象者にすぐに忘れ去られ、行動に移されないからです。
フィードバック後のアクションプラン計画の設計が伴わなければ、評価対象者の行動も変化しません。
3. 360度評価を失敗させないポイント
360度評価の目的と評価基準を明確にする
360度評価の目的と評価基準をが不明確だと、評価対象者は自分が受け取った評価に納得することが難しくなります。
その結果、評価後の自己啓発や自己成長につながりにくいだけでなく、従業員のモチベーションを下げてしまう可能性があります。
評価者・評価対象者の双方に対して「なぜ360度評価を行い、どう役に立つのか」という目的の説明を十分に行うことが、評価者・評価対象者から公平で有効な360度評価結果を得るために必要不可欠です。
360度評価を行う目的の例
従業員の能力開発や、昇進判断、報酬制度の改善など。
評価基準の例
業務達成度、コミュニケーション能力、チームワーク、リーダーシップなど。
評価すべき項目を明確に定めることが重要です。
また、各項目に対して評価基準を設け、評価者が客観的に評価できるようにすることも大切です。
360度評価において、目的と評価基準を明確にすることで、評価者・評価対象者双方が共通の目標を持ち、評価の透明性を高めることができます。
360度評価の明確な計画を立て、メンバーに周知する
360度評価には多くの人が関わるため、計画を明確に定めないと、評価対象者や評価者に不満や不信感を抱かせる可能性があります。
また、評価の期間やスケジュールを明確にしないと、評価者が評価を急いで行い、評価結果が不正確になる可能性やその後のフィードバックの質が低下する恐れがあります。
そのため、計画を明確に定め、進捗状況を報告することが大切です。
具体例
360度評価の計画を立てる際には、評価対象者や評価者の選定方法、評価の期間やスケジュール、評価結果のフィードバック方法などを明確に定めます。
また、計画を立てたら、評価対象者や評価者に計画をメンバー全員が確認できるプラットフォームやメールなどで周知し、進捗状況を報告することで、透明性を高め、計画をスムーズに進めることができます。
目的に沿って360度評価の設問や評価方法の設計を考える
360度評価の設問や評価方法の設計は、正確で信頼性の高い評価結果を得るため目的達成に欠かせません。
また、評価者・評価対象者が理解を深めることで、評価対象者にとって改善点や成長のための具体的なアクションプランを立てることが可能になります。
設計を考える際に気を付けるべき3つのポイントを解説します。
目的に沿っているか
360度評価の目的や評価対象者の役割に合わせて、評価設問を設計することが重要です。
目的に沿っていない設問が多く存在すると、評価者は設問に対して回答するモチベーションが下がり、回答の質が下がる恐れがあります。
具体例
昇進評価が目的の場合、業務に関する技能や知識、コミュニケーション能力、リーダーシップ能力など、評価すべき項目を明確にし、評価設問を作成するのが望ましいでしょう。
評価設問は、主観的な評価やバイアスを排除するために、客観的な評価基準に基づいて作成することが重要です。
具体例
アンケート形式やインタビュー形式など。
評価設問に合わせた方法を選択します。
適切な評価者を選定しているか
適切な評価者を選定することは、360度評価の客観性を高めるために非常に重要です。
評価者の選定によって、360度評価の信頼性や有効性が左右されてしまうためです。
そのため、評価者を選ぶ際には、評価対象者との関係性について注意深く調査する必要があります。
特に、評価者が評価対象者と親しい関係にある場合、偏った評価が行われる可能性があります。
そのため、可能な限り関係性や評価に偏りが少なくなるように評価者を選定することが大切です。
具体例
同じ部署やプロジェクトに属するメンバーを評価者とする場合、他の部署やプロジェクトに所属するメンバーも評価者に加えることで、より客観的な評価を行うことができます。
評価結果の匿名性
評価対象者が評価者に恐れや不安を感じている場合、正直な評価が得られず、評価結果が歪んでしまうことがあります。
正確な評価結果を得るためには、評価対象者に匿名性を保証することが重要です。
ただし、匿名性を保証する場合でも、評価者による個人情報の漏洩や悪意のある評価などの問題が起こる可能性があるため、問題発生時の適切な対策を事前に用意しておくことが必要です。
適切なフィードバックとフォローを行う
評価をすることがゴールではなく、評価対象者のその後につなげることが本来の360度評価の目的です。
また、評価直後に1回だけ振り返えば十分だと考える人も多いですが、それでは360度評価の効果が十分に発揮されているとは言えません。
定期的に上司と1on1を行い進捗状況を確認したり、自身に不足しているスキルやスタンスを補うためのコーチングを行ったりすることで自己成長につなげることが必要です。
1on1
1on1では評価対象者と上司や同僚が定期的にミーティングを行い、アクションプランの進捗状況を確認することが重要です。
主に話す内容としては、アクションプランの成果や、新たな課題や障害について話し合うことが望ましいでしょう。
共有するアクションプランは、チームやメンバーの目的や基準に応じたものを用意する必要があります。
また、そのアクションプランには、期限や具体的な行動計画、評価の基準なども含まれているとなお良いです。
具体例
営業部門での360度評価の目的は、顧客との関係構築能力や、営業戦略の立案・実行力、顧客からの信頼度などが挙げられます。
これらの基準を明確にし、そこから細分化したアクションプランを立て、共有することで、営業部門全体のパフォーマンス向上につなげることができます。
アクションプランの具体例
- 1か月あたりの顧客アンケートの実施や顧客との面談の回数を倍に増やす
- 営業担当者の対応スキルやコミュニケーション能力を向上させる研修の実施
- 営業戦略の改善点や課題の振り返りを行うミーティングの開催
コーチング
また、コーチングを通じて、各々の評価対象者に必要なスキルや知識を習得し、自己成長を促すことができます。
360度評価では、弱点を見つけて改善することに重点が置かれがちですが、評価対象者の強みを見落としてしまうことがあります。
評価対象者の強みは、プロジェクトの成功に重要な要素であることがあるため、バランスよく評価する必要があります。
弱点は常に対処すべきですが、強みに焦点を当てることも、チームの成功にとって同じくらい重要なことです。
その人自身の能力や特性を伸ばす一つの方法として、コーチングは有効な手段でしょう。
コーチングとのティーチングとの違いや、コーチングについての詳細が気になる方はぜひこちらの記事もご覧ください。
4. まとめ
360度評価は、従業員の能力や行動を評価するための重要な方法ですが、失敗する可能性があることも事実です。
本記事で紹介した内容を以下にまとめました。
360度評価は、従業員の能力や行動を正しく評価するための重要な方法です。
360度評価の失敗として、以下のようなものがあります。
- 人間関係の悪化
- メンバーのモチベーションの低下
- 評価に客観性・納得性がない
- 時間的・精神的に負担がかかる
- 評価後にとるべき対策が分からない
360度評価が失敗する主な原因は以下の5つです。
- 実施する目的の説明不足
- 評価が評価対象者の利益に影響する
- 評価項目・設問が適切ではない
- 評価後のフォローが不十分
360度評価を失敗させないポイントとして、以下の4つを意識してみましょう。
- 360度評価の目的と評価基準を明確にする
- 360度評価の明確な計画を立て、メンバーに周知する
- 目的に沿って360度評価の設問や評価方法の設計を考える
- 適切なフィードバックとフォローを行う
以上のポイントを押さえて、360度評価を成功させていきましょう。
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