みなさんは学生時代、あまり興味がない苦手科目の勉強よりも、興味がある科目の勉強のほうが学習意欲が高かった、という経験はありませんか。
また、勉強は好きじゃないが、親に「勉強したら30分ゲームしていいよ」と言われてしぶしぶ勉強を始めた経験をした方もいらっしゃるかもしれません。
仕事にも、退屈なものから面白い仕事まで様々なものがあります。
目標を達成するためには、時に退屈な仕事をこなす必要も出てくるでしょう。
このような仕事を、どうすれば面白く、やりがいのある問題に変えることができるかを考えなければ、迅速かつ確実に仕事をこなすことが難しくなります。
そこで、内発的動機づけを活用することが有効です。
人が何か行うとき、ある活動自体が単純に楽しいからこそ、追求するよう動く原動力のことを内発的動機と言います。
これによく比較されるのが、外的報酬や圧力に応じて行動する原動力である外発的動機です。
つまり、内発的動機づけがあれば、誰かに指示されたり、報酬を目的にしたりしなくても、仕事自体を楽しみながら成果を出すことができます。
キャリアの早い段階でこのスキルを活用する方法を学ぶことで、どんな分野でも目標を達成するために必要な適応能力と、日々の仕事にもっとやりがいを持って取り組めるようになるでしょう。
本記事では内発的動機、そしてよく比べられる外発的動機、さらにどのように内発的動機を高められるかについて解説していきます。
1. 内発的動機づけとは
内発的動機の定義と例
心理学では、モチベーションを大きく分けて「内発的動機づけ」と「外発的動機づけ」の2種類に分類しています。
内発的動機づけとは、外的な報酬を求めるのではなく、それ自体にやりがいを感じているために、その行動自体に取り組む状態のことです。
【内発的動機づけの事例】
- 親を喜ばせたいからではなく、問題を解くのが楽しいから数学を勉強する。
- ピアノを練習するのは、楽しいからであって、賞を取りたいからではない。
- 小説を読むのは楽しいからであり、読書感想文を書く必要があるからではない。
- ボーナスを得るためではなく、自分が楽しいと思うから仕事を頑張る。
- ダイエットのためではなく、リラックスするために散歩をする
内発的動機が注目される背景
内発的動機づけが注目され始めたきっかけは、アメリカの心理学者エドワード・デシ博士が1985年に出版した『人間の行動における内発的動機づけと自己決定』において、人々は本能的に探求し、成長し、自己実現を追求する傾向があると主張したことから広まりました。
これが冒頭でも説明した内発的動機に該当します。
内発的動機の特徴は以下のようなものがあります。
- 達成感:プロセスが困難でも成功を感じること。
- 没入感覚:自分でコントロールしながら没頭し、楽しい時間を過ごすこと。
- 有能感:自己効力感を持ち、環境との相互作用でスキルを向上させること。
- 自己決定:内発的動機により、他者からの報酬ではなく自発的に頑張ること。
- 成長欲求:稀な経験やフロー感を通じて自己成長を感じること。この感覚は短期的なものではなく、数ヶ月から数年の経験を通じて持続する。
内発的動機づけのメリット
内発的動機を持つ人は、以下のような傾向がある可能性が高いという研究結果があります。
高い成果を発揮できる
内発的動機を持つ人は、より良い結果を得ることができる傾向があります。
自己充足感や興味に基づいて取り組むため、意欲的に取り組み、成果を上げることができます。
高いコミットメント
内発的動機を持つ人は、個人的なコミットメントをより強く感じることができます。
自己の興味や価値観に基づいて行動するため、取り組む活動に対して熱意を持ち、長期的なコミットメントを続ける傾向があります。
忍耐力がある
内発的動機を持つ人は、より持続的に仕事をこなし、困難に直面したときに辞める可能性が低いです。
自己充足感や内部からの動機づけによって仕事のやる気を維持しているため、困難や障壁に対しても忍耐力を持ち、継続的に取り組むことができます。
クリエイティブ
内発的動機を持つ人は、より創造的で斬新なアイデアや解決策を思いつく可能性が高いです。
自己の興味や好奇心から生まれるアイデアや独自のアプローチを取ることができるため、クリエイティブな思考や発想が促されます。
内発的動機づけのデメリット
維持が困難
内発的動機づけは、外部からの刺激や報酬に依存しないため、自己駆動型の動機づけとなります。
しかし、この動機づけは維持が難しく、モチベーションが低下することがあります。
努力の制限
内発的動機づけでは、個人の興味や情熱に基づいて行動するため、特定のタスクや目標に対してのみモチベーションが高まります。
その結果、他の重要なタスクや目標に対して努力を割くことができない可能性があります。
忍耐力の欠如
内発的動機づけは個人の興味や楽しみに基づいていますが、困難や挑戦が生じた場合にはモチベーションが低下する可能性があります。
内発的動機づけだけで困難を乗り越えるための十分な忍耐力を持つことができない場合、行動が停滞する可能性があります。
外部報酬への依存
内発的動機づけは、外部からの報酬や認知ではなく、内部からの自己実現を重視します。
しかし、外部報酬が介入すると、内発的動機づけが低下する可能性があります。例えば、報酬や評価のためだけに取り組むようになると、本来の興味や楽しみが薄れ、モチベーションが低下する場合があります。
2. 外発的動機づけとは
外発的動機づけの定義と例
外発的動機づけとは、外部からの報酬や認知、他者の期待や圧力などに基づいて行動する状態のことを指します。
【外発的動機の事例】
- 賞を獲得するためにスポーツに参加する。
- 両親からの叱責を避けるために部屋を掃除する。
- 成績ランキングで上位の順位を取りたいという理由で勉強する。
- 昇進やボーナスを得るために仕事で頑張る。
- お返しのプレゼントをもらうために誕生日やクリスマスにお祝いをする。
外発的動機づけのメリット
一般的には外発的動機づけよりも内発的動機づけのほうが望ましいとされていますが、外発的動機づけも効果的に使えばメリットが多く存在します。
生理的欲求の充足
人が生きていく上で必ず必要な衣食住、それらを追求する理由や方法は様々かもしれませんが、人の主なたちの選択の核となる原動力となっています。
内発的動機づけのきっかけになる
たとえ最初は外的報酬のために行っていた活動であっても、その感情が外発的動機から徐々に内発的動機に変えることができます。
自分がボーナスをもらうために取り組んだ仕事に対し、誰かが「よくやった」と褒めれば、それを誇りに思い、次の仕事のやる気につながるかもしれません。
きっかけ作りになる
外発的動機づけは、初めての経験や新しいタスクに取り組む際に特に有用です。
外部からの要因が存在することで、新しいことに挑戦する意欲や行動を引き出すことができます。
短期的な成果の向上
外部からの報酬や認知は、一時的に成果を改善することがあります。
報酬に対する欲求や目標達成の意識が高まることで、短期的なパフォーマンスの向上が見られるかもしれません。
外発的動機のデメリット
内発的動機の抑圧
外部報酬や認識に頼ることで、個人の内発的動機を現象させる可能性があります。
当初の内発的な興味や喜びに基づいて行動する代わりに、外部報酬を得ることが主な目的となり、個人の意欲や情熱が低下する可能性があります。
創造性の低下
外発的動機は、具体的な目標や報酬に向けて行動することを促します。
しかし、創造性は柔軟で自由な思考を必要とする場合があります。
外部報酬に焦点を当てることで、個人のクリエイティブなアイデアや発想が制約される可能性があります。
効果が短期的
外発的動機は、短期的な目標達成には効果的かもしれませんが、長期的な継続的な動機づけには不十分な場合があります。
外部報酬がなくなったり、認識が得られなくなったりすると、個人のモチベーションが低下する可能性があります。
3. 内発的動機づけを高める方法
それでは具体的にどのように内発的動機づけを高めていけばよいのでしょうか。
まず、内発的動機づけを高めるには何が必要なのでしょうか。
様々な理論が議論されていますが、最も有名な基本的心理欲求理論をわかりやすく解説します。
内発的動機出づけを高める条件
心理学者のリチャード・M・ライアン(Richard M. Ryan)とエドワード・L・デシ(Edward L. Deci)は1985年に論文で内発的動機づけを高める方法の一つとして基本的心理欲求理論を提唱しました。
基本的心理欲求理論は、これら3つの欲求を満たすことによって、個人はより内発的に行動することが可能だと説明しました。
自律性(Autonomy)
自律性は、個人が自分自身で行動を決定することに対する心理的欲求です。
個人は自分の意志で行動することや、自分自身の価値観や目標に基づいて行動することを望んでいます。
自律性の欲求が満たされると、個人は自主性を持ち、より内発的動機づけで行動することができます。
有能感(Competence)
有能感は、個人の能力とその証明に対する心理的欲求です。
個人は自分の能力を高めたり、スキルを磨いたりすることを望んでいます。
有能感の欲求が満たされると、個人は自信を持ち、課題に取り組む能力が向上し、内発的動機づけが促されます。
関係性(Relatedness)
関係性は、個人の行動を他者や集団と関連づけ、他者のために行動したいという心理的欲求です。
個人は他者とのつながりや関係を求め、共感や支援を提供したり受けたりすることで満足感を得たり、意義を感じたりします。
関係性の欲求が満たされると、個人は社会的なつながりを持ち、内発的動機づけが増強されます。
これら3つを意識したマネジメントを行うことで、チームや組織内のメンバーの内発的動機を高めることができ、最終的に全体の生産性を高めることができます。
職場で内発的動機づけを高める方法
それでは、具体的に職場のメンバーに自律性、有能感、関係性を高めるにはどうすればいいのでしょうか。
まず注意すべき点としては、それぞれメンバーやチームの個性や状況に応じて最適な方法や、複数のアプローチの組み合わせを考えてから適応することが重要です。
それでは、具体的な方法を5つ紹介します。
目標設定と自律性の促進
メンバーに自分自身の目標を設定し、それを追求する自律性を持つ機会を与えることが重要です。
具体的な例としては、メンバーと定期的な目標設定や進捗レビューを行い、彼らが自分の仕事に対して意見やアイデアを持ち、自分自身でタスクの計画や実行を行えるような環境を提供することです。
スキルの向上と成長の機会
メンバーの能力向上と成長を支援することは、内発的動機づけを高める上で重要です。
具体的な例としては、トレーニングや研修プログラム、プロジェクトへの参加や新しい責任の委任など、スキルの向上と成長に関連する機会を提供することです。
意義と関係性の強化
メンバーに仕事の意義や他者との関係性を強く認識させることは、内発的動機づけを高める助けとなります。
具体的な例としては、組織のビジョンや目的を明確に伝え、個々の仕事がどのように他者や組織に貢献しているのかを示すことです。
また、チームワークや協力を促進する活動やプロジェクトを組織することも有効です。
定期的なフィードバック
メンバーが自己評価やフィードバックを行う機会を与えることは、内発的動機づけを向上させる手段です。
具体的な例としては、定期的な評価やフィードバックセッションを実施し、メンバーの成果や努力を認め、肯定的なフィードバックや具体的な改善点を提供することです。
評価方法として、360度評価を取り入れるのも一つの方法です。
上司以外の複数人から評価を踏まえてフィードバックを行うことで、メンバーが納得しやすくなるでしょう。360度評価についてはこちらの記事をご覧ください。
挑戦の機会の提供
メンバーに創造的な自由や挑戦的なプロジェクトへの参加機会を提供することは、内発的動機づけを高める効果的な手段です。
具体的な例としては、メンバーに自分のアイデアやクリエイティブな解決策を提案する機会を与えることや、新しいプロジェクトやイノベーションに参加する機会を提供することです。
さらに、メンバーが自分のスキルや才能を最大限に活かせる環境を作り、彼らが自己表現や新しいアイデアを追求できる場を提供することも重要です。その環境下でしっかりと成果を出した際には、適正な評価を行い、会社ナレッジとして共有していくことが求められます。
レコグニションとは何?その概要をわかりやすく解説し導入方法も紹介します!
まとめ
いかがだったでしょうか。内発的動機づけについて理解を深めることはできましたか?
改めて本記事の内容を以下にまとめました。
内発的動機づけとは、
外的な報酬を求めるのではなく、それ自体にやりがいを感じているために、その行動自体に取り組む状態のことです。
一方で、 外発的動機づけとは、
外部からの報酬や認知、他者の期待や圧力などに基づいて行動する状態のことを指します。
内発的動機づけを高めるには、
- 自律性(Autonomy):個人が自分自身で行動を決定することに対する心理的欲求
- 有能感(Competence):個人の能力とその証明に対する心理的欲求
- 関係性(Relatedness):個人の行動を他者や集団と関連づけ、他者のために行動したいという心理的欲求
を高めることが重要です。
職場で内発的動機づけを高める方法として、以下のものが挙げられます。
- 目標設定と自律性の促進
- スキルの向上と成長の機会
- 意義と関係性の強化
- 定期的なフィードバック
- 挑戦の機会の提供
メンバーの内発的動機を向上させ、個々のメンバーの最大の能力を発揮する能力を高めるためにも、本記事でご紹介した内発的動機づけを高める方法をいくつか試してみてはいかがでしょうか。
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