ダイバーシティ、エクイティ、インクルージョンが進み、個々に合わせたコミュニケーションが必要となっています。
そうした中で、感情に焦点を当てたコミュニケーションが注目されています。エモーショナルインテリジェンスを活用したコミュニケーションは、良好な人間関係を作るために必要なコミュニケーション方法です。
こちらでは、エモーショナルインテリジェンスを活用したコミュニケーションの概要を説明しながら、メリットや注意点、具体例を解説していきます。
こちらを読んでいただくことで、エモーショナルインテリジェンスを活用したコミュニケーションについて理解でき、組織の人間関係が改善されるだけでなく、業績も右肩上がりになっていくことでしょう。
1,エモーショナルインテリジェンス(EQ)とは、
エモーショナルインテリジェンス(EQ)とは、感情に関連する知能やスキルのことです。具体的には、自分の感情がどのように行動や思考に影響を与えるかを認識する能力や自分の感情を活用して目標を達成するための意欲や情熱を維持する能力、他人の感情を理解し、その感情に対して共感を示す能力などのことを言います。
「エモーショナルインテリジェンス(Emotional Intelligence)」という名前は、
Emotional(エモーショナル): 感情や気持ちに関連する
Intelligence(インテリジェンス): 知能や理解力を意味する
という2つの単語から成り立っています。
つまり、「エモーショナルインテリジェンス」は、感情に関する知能や理解力を示す言葉です。この概念は、感情の認識、理解、管理、そして他者との感情的なつながりを強化する能力を含むとされています。
この概念の起源は、1995年に心理学者のダニエル・ゴールマンが出版した著書『Emotional Intelligence: Why It Can Matter More Than IQ』によって広まりました。ゴールドマンは、『Emotional Intelligence』の中で、感情の知能が個人の成功や幸福において重要な役割を果たすと主張しました。
近年では、感情的知性が人間の行動や職場での成功に影響するとして注目されています。
また、現代はビジネスのグローバル化やダイバーシティによって 一人ひとりに合わせたコニュニケーションが必要となっており、注目を集めています。
EQの根底には、感情が思考や行動に与える影響を理解し、感情の管理が重要であるという考えがあります。これにより、感情的なスキルが知性や学業成績と同等に重要であるとされています。
2,エモーショナルインテリジェンスを活用したコミュニケーション
エモーショナルインテリジェンス(EQ)を活用したコミュニケーションは、感情の理解と管理を基盤とし、自己認識、自己調整、動機づけ、共感、社会的スキルを活用して効果的な対人関係を築くことを目的としています。
このアプローチは、個人の幸福や職場での成功に大きく貢献するため、現代社会でますます重要視されています。以下に、EQを活用したコミュニケーションについて詳しく説明します。
1.自己認識
自己認識は、自己の感情を正確に認識し、その影響を理解する能力です。自己認識が高い人は、自分が感じている感情やその原因を理解し、これを基に自分の行動を適切に調整できます。例えば、プレゼンテーション前に緊張を感じる場合、その緊張の原因を理解し、リラックスするための対策を講じることができます。
2.自己調整
自己調整は、自己の感情を効果的に管理し、否定的な感情が対話に影響を与えないようにする能力です。例えば、上司からの厳しいフィードバックに対して感情的に反応するのではなく、そのフィードバックを冷静に受け止め、建設的に改善策を考えることができます。自己調整は、ストレスやフラストレーションを適切に管理し、冷静で効果的なコミュニケーションを維持するために不可欠です。
3.動機づけ
動機づけは、自分の感情を利用して目標達成に向けた意欲を維持する能力です。高い動機づけを持つ人は、困難な状況に直面しても前向きな態度を維持し、目標に向かって努力を続けます。コミュニケーションにおいても、自己の目標やビジョンを明確に持ち、それを基に他者と建設的に対話することが重要です。例えば、プロジェクトのリーダーとして、チームメンバーに目標達成への意欲を伝え、全員が共通の目的に向かって協力するよう促すことができます。
4.共感
共感は、他人の感情を理解し、その感情に寄り添う能力です。共感力が高い人は、相手の立場や気持ちを理解し、それに基づいて適切な対応を行います。例えば、同僚がストレスを感じている場合、その感情を認識し、サポートや励ましを提供することで、対人関係を強化し、チームの士気を高めることができます。共感は、信頼関係を築くために不可欠なスキルであり、効果的なコミュニケーションの基盤となります。
5.社会的スキル
社会的スキルは、他者との効果的なコミュニケーションや関係を築くためのスキルです。これには、対人関係の管理、協力、説得、対立の解決などが含まれます。例えば、プロジェクトマネージャーとして、チームメンバー間の対立を建設的に解決し、協力的な雰囲気を作り出すことが求められます。社会的スキルが高い人は、他者とのコミュニケーションをスムーズに進め、ポジティブな職場環境を築くことができます。
円滑で平等なコミュニケーションを築くためには、感情に配慮したアプローチが必要になります。組織やチームで特に問題になることが多いのが、上司と部下のコミュニケーションです。双方の価値観共有や相互理解が必要となります。上司と部下のコミュニケーション方法についてはこちらの記事で詳しく解説しています。
3,コミュニケーションタイプの分類
人間のコミュニケーションのタイプは、さまざま存在します。1949年には、アメリカの心理学者ジョセフ・ウォルピ氏によって以下のタイプに分けられました。
エモーショナルインテリジェンスを活用したコミュニケーションの基礎となっています。
アサーティブタイプ(Assertive)
アサーティブタイプは、自分の意見や感情を率直に伝える一方で、他者の意見や感情も尊重するタイプです。自己主張と他者への配慮のバランスを取ることが可能で、健全な対話を促進し、効果的な問題解決や強固な人間関係の構築ができます。
しかし、強い自己主張が受け入れられない文化や環境では、自己中心的と誤解される可能性があります。また、アサーティブタイプでない相手と話す場合に、相手が圧倒されることもあります。
アサーティブコミュニケーションができる人が多くいる職場では、コミュニケーションが良くなり、生産性が向上します。また、感情によるやりとりが行われるため、ステレスを溜め込みすらくなります。
アサーティブコミュニケーションについては、以下の記事で詳しく解説しています。
アグレッシブタイプ(Aggressive)
アグレッシブタイプは、相手の気持ちを考えずに一方的に自分の意見を主張するタイプです。明確な自己主張ができ、短期間で自分の望む結果を得られることができる人です。また、リーダーシップが求められる状況ではタイプを生かして組織を引っ張っていくことが可能です。
しかし、自分の要求を通すことに集中したり、相手の意見や感情を無視したりします。すぐに腹を立てて周りに当たります。
組織やチームで活動していく中で、長期的には対人関係を悪化させ、孤立するリスクが高いとされています。また、他人を軽視する傾向があることから、周囲からの反発や反感を招きやすいとされています。
リーダーや上司がアグレッシブタイプの場合、コミュニケーション方法によっては、パワーハラスメントに繋がってしまうようなタイプなので、思い当たる人はいますぐに改善しましょう。
また、組織内にアグレッシブタイプの人がいる場合は、アンガーマネジメント研修などを行い、感情表現を制限する対策をとりましょう。
パッシブタイプ(Passive)
アサーティブタイプの対極にあるタイプとされるのがこちら、受け身タイプです。自分の意見を主張することが苦手としており、対立することを避ける傾向にあります。協調性を大切にするパッシブタイプは、他人に対して配慮があり、関係構築が上手に行うことが可能です。
しかし、自分で考えていることを主張できないことで、自分のニーズや感情が満たされないことが多く、長期的にはストレスや不満が蓄積される傾向にあります。また、他者からのお願い事などを断ることができず、仕事を抱え込むこともあります。
組織やチーム内にパッシブタイプがいる場合は、定期的に1on1を行うなどして意見を聞いてあげることが必要です。パッシブタイプは、自身の意見を表に出すことに不安を感じることが多くあるので、否定しない組織作りが大切です。
パッシブ・アグレッシブタイプ(Passive-Aggressive)
パッシブ・アグレッシブタイプは、表面的には従順で控えめに見えるが、内心では反抗的な態度を持つタイプです。周囲に対する不満があったとしても、直接言わずに陰口を言ったり態度に出して伝えたりします。
表面上は従順ですが、内心では不満を持ち続けています。また、かまってちゃんと呼ばれるこのタイプがいる組織は、長期的に信頼関係が崩壊しやすい傾向にあります。
問題が解決されずにくすぶり続けることが多いため、定期的な改善が必要です。
以上4つのコミュニケーションタイプについて紹介しました。自分に少しでも当てはまるものはありますでしょうか?
自分のコミュニケーションの傾向を認識したうえで、良好なコミュニケーションを取れるように意識をして改善をしていきましょう。
4,EQを活用したコミュニケーションのメリット
エモーショナルインテリジェンスは、感情の理解と管理を中心にコミュニケーションを行なっていくため人間関係の構築、パフォーマンスの向上などのメリットがあります。エモーショナルインテリジェンスを活用したコミュニケーションのメリットを以下で紹介します。
1,人間関係の強化
感情を正直に表現し、共感することで、より深い信頼と理解を生むことができます。これにより、関係が強化され、相手との結びつきが深まり、コミュニケーションの促進が起こります。
2,問題解決能力の改善
感情的な側面を考慮することで、対話がより建設的になり、問題解決がスムーズに進むことがあります。感情を理解することで、根本的な問題をより効果的に解決できます。
3,ストレスの軽減
自分の感情を適切に管理し、相手の感情にも配慮することで、対話におけるストレスを軽減できます。これにより、よりリラックスしたコミュニケーションが可能になり、コミュニケーションコストを軽減することができます。
4,チームワークの向上
チーム内での感情的な理解と共感が高まることで、協力的な雰囲気が生まれ、チームのパフォーマンスが向上します。
5,個人の自己成長
感情的な自己認識を高めることで、自己成長が促進されます。自己理解が深まることで、個人の成長や自己改善が進む可能性があります。
5,EQを活用したコミュニケーションの具体例
EQを活用したコミュニケーションをビジネスで活用する具体例をいくつか紹介します。これらの例は、感情の理解と管理を通じて、業務の効率や人間関係を改善する方法になります。
顧客サービスの向上
カスタマーサポートの担当者が、顧客の感情に共感し、適切な対応を行うことで顧客サービスの向上につながります。
例えば、顧客が製品の不具合に不満を持っている場合、まずはその感情を理解し、共感を示した後、問題解決のための具体的な手段を提案します。これにより、顧客満足度が向上し、リピーターを増やすことができます。
チーム内のコミュニケーション
チームメンバーがプロジェクトの進捗や問題について話し合う際に、感情的な反応を理解し、相手の意見に対して共感的に対応することができます。
例えば、チームメンバーがストレスを感じている場合、その感情を認識し、支援を提供することで、チームの士気と協力関係が強化されます。
また、チーム内で価値観を共有することも大切です。
具体的な共有方法は、以下の記事に掲載されているので参考にしてください。
リーダーシップとマネジメント
リーダーが部下との1対1の面談など、部下の感情や悩みに耳を傾け、共感的なフィードバックを行ことができます。部下が職場でのストレスやモチベーションの低下を感じている場合、その感情に寄り添い、解決策を一緒に考えることで、パフォーマンスとエンゲージメントが向上します。
営業や交渉の場面
営業担当者が顧客との商談中に、顧客の感情やニーズを読み取り、その感情に基づいて提案をカスタマイズします。
例えば、顧客が価格に対して懸念を示している場合、その懸念を理解し、感情的に納得できる提案をすることで、成約の可能性が高まります。
従業員のフィードバックと評価
上司が従業員にフィードバックを提供する際に、感情を適切に管理し、建設的なコメントを心がけます。
例えば、パフォーマンスが不十分な場合でも、否定的な感情を抑え、改善のための具体的なサポートを提供することで、従業員の成長を促進します。
企業の文化と価値の形成
組織の文化や価値観を形成する際に、従業員の感情や意見を反映させ、共感を基にした企業のビジョンや方針を策定します。かんことで、従業員が企業の価値に共感し、感情的に繋がることで、企業全体の一体感が強まります。
クライシスコミュニケーション
企業が危機的な状況に直面している際に、従業員や顧客に対して感情的に配慮したコミュニケーションを行います。
例えば、リコールや不祥事の際に、率直に状況を説明し、感情的な影響を軽減するための対策を説明することで、信頼を維持します。
EQを活用したコミュニケーションをビジネスに取り入れることで、顧客満足度やチームのパフォーマンスを向上させ、より良い人間関係を築くことができます。また、感情的な側面に配慮することで、企業の信頼性やブランド価値を高めることができます。
6,EQを活用したコミュニケーションの注意点
EQを活用したコミュニケーションは、人間関係を深めるために非常に有効ですが、その実施においてはバランスや注意が必要です。以下にあげる注意点を理解し、効果的に活用することで、より良いコミュニケーションと人間関係の構築が可能になります。
1,感情の過剰な表現
感情をあまりにも強く表現すると、対話が感情的に過熱し、逆効果を招く可能性があります。バランスを保ち、適切な方法で感情を伝えることが重要です。
2,相手の感情の誤解
相手の感情を理解しようとする際に、誤解や推測が生じることがあります。感情的なフィードバックを受け取る際には、確認の質問を行い、誤解を避けるようにしましょう。
3,感情的な自己開示のリスク
自分の感情を過度に開示することで、プライバシーの侵害や対人関係の不安定化を引き起こす可能性があります。適切な範囲で自己開示を行うことが必要です。
4,感情的な偏り
感情が対話や判断に過度に影響を与えると、客観性を欠くことがあります。感情と論理のバランスを取るように心がけることが大切です。
5,対話の目的が曖昧になる
感情的な対話が目的を超えて感情的な表現に偏ると、対話の目的が曖昧になることがあります。目的を明確にし、建設的な対話を心がけることが重要です。
7,まとめ
最後までご覧いただきありがとうございました。
今回はエモーショナルインテリジェンスを活用したコミュニケーションについて解説しました。
エモーショナルインテリジェンスを活用したコミュニケーションを意識して社会生活を送れるようになれば、きっと人間関係も改善され、業務の生産性も向上することでしょう。
グローバル化やダイバーシティーが進み、さまざまな価値観を持つ人達と交流をせざるを得なくなる現代社会においてエモーショナルインテリジェンスを活用したコミュニケーションは必要なものです。
こちらで学んだポイントや実例を参考にしながら、エモーショナルインテリジェンスを活用したコミュニケーションを身につけましょう。
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