経営戦略とは?|事業戦略との違いと役立つフレームワークを紹介

役割

経営戦略とは|15社の企業事例とともにわかりやすく解説します!

2023年9月11日

ビジネスでは常に変化し、競争の激化が日々進んでいます。こうした中で、変化する市場環境に適応し、競争力を高めるためには、戦略的な方針を持つことが求められます。競争が激化する中で、ビジネスを成功に導くためには、確かな経営戦略が不可欠です。 

 

この記事では、経営戦略の知識について解説した上で、様々な種類の企業の経営戦略の事例を詳しく紹介します。それに加え、経営戦略作成のためのプロセス、フレームワークなどについて解説していきます。  

また、[9. 経営戦略に役立つフレームワーク]では、ダウンロード可能なテンプレートを用意していますので、ぜひご活用ください。 

 

1. 経営戦略とは

経営戦略の定義

経営戦略は、企業が競争の激しい環境で自身の経営目的や目標を達成するための戦術や計画を指します。無限ではない資源(人材、資金、物的資産)を最適に活用して、企業の成長と競争優位性を実現するために欠かせない手段です。 

企業は自身の強みを活かし、市場での競争優位を確立する必要があります。経営戦略はそのための道筋を示すもので、目標を具体的な行動計画に落とし込む役割を果たします。 

経営戦略の策定により、従業員は企業の方向性を理解し、共感することができ、外部の利害関係者との関係も強化され、持続的な成長を支える基盤が整います。 

経営戦略は、企業の成長と競争力を築くために、以下の3つの階層に分けられるピラミッドとして表現されます。 

経営戦略の3つのレベル

 

全社戦略(企業戦略)

企業全体の方向性を指し、事業の参入・撤退、買収などを含む会社全体を動かす戦略です。この戦略は、長期的なビジョンや成長戦略を策定する際に重要な役割を果たします。 具体的な内容は以下です。 

  • 市場リーダーシップの確立 
  • 新興市場への進出 
  • デジタルトランスフォーメーション 
  • 経営ビジョンの作成・浸透 

 

事業戦略

特定の事業に焦点を当て、企画・製造・販売などの機能を連携させる戦略です。企業戦略における経営戦術に近く、事業ごとに異なる競争優位を確立するために必要です。 具体的な内容は以下です。 

  • 低価格・高品質商品提供 
  • 地域密着型サービス 
  • 事業モデルの確立  

 

機能戦略(機能別戦略) 

機能戦略とは、価値提供のプロセスの異なる側面、具体的には購買、製造、流通、販売などを最適化する目的で策定される戦略を指します それぞれの機能の価値提供を行うための各部分を最適化するために策定します。

事業戦略と連動し、それぞれの機能が事業戦略を支えるために重要な役割を果たします。機能戦略を簡単に言い換えると「現場レベルの戦略」と言えます。具体的な内容は以下です。

  • マーケティング戦略
  • 生産戦略
  • 人材戦略
  • サプライチェーン最適化

 

この3つの戦略階層が組み合わさり、経営戦略全体を構成しています。全社戦略が企業全体の指針を定め、事業戦略が特定の事業を成長させるための道筋を示し、機能戦略が各機能が連動して目標達成に貢献する方法を具体化します。 経営戦略はこれらの階層が一貫して連動し、会社全体の成果を最大化するために不可欠です。 

 

経営戦略の目的

環境の急激な変化により、経営戦略の重要性が高まっています。近年の人口減少や経済縮小、デジタル技術の進化、新型コロナウイルスの影響など、ビジネス環境は大きく変化しています。このような変化の中で経営戦略を策定する目的は以下の3つです。 

 

アジャイルな適応力の構築

 

経営戦略は事業環境の変動に柔軟に対応し、アジャイルな適応力を企業に注入する役割を果たしています。

環境の変化が激しい現代では、定常的な状況が少なく、未来のトレンドを正確に予測することは難しいため、戦略の適応性が求められています。経営戦略は環境変化に迅速に対応し、競争力を維持するための道筋を示す重要な指針となります。 

 

資源の最適配分

パズルが合わさる図

資源は限りあるものであり、経営戦略はその資源を最適に配分するための道具として機能します。

戦略的な視点から資金、人材、時間などの資源を管理し、事業領域ごとに優先順位を付けることで、収益性や成長を最大化します。経営戦略の役割は、企業の持つ資源を最大限に生かし、競争力を向上させることです。 

 

競争優位性の確立

経営戦略の目的には、競合他社との差別化を図り競争優位性を築くことも含まれます。

市場の変化に対応し、顧客のニーズを把握してそれを満たす戦略を立案することで、独自の価値提供を実現します。そのため競争優位性は企業を他社と差異化し、顧客の信頼を獲得するための重要な手段です。 

これらの目的に基づき、環境変化への適応力を持ち、持続的な成長を実現するために経営戦略が策定されます。 

 

2. 経営戦略の種類

経営戦略の代表的なものとして以下に5つご紹介します。

それぞれの経営戦略の企業事例については、次の章から詳しく解説しますので、是非最後までご覧ください。 

 

多角化戦略

多角化戦略とは、既存資源を活用して、新たな市場や分野に進出する戦略です。これにより、不確実な経済状況や多様化するニーズに対応することができます。 

主な形態には水平型(関連性の高い分野への進出)、垂直型(川上または川下の市場への進出)、集中型(新しい市場への進出)、集成型(全く異なる市場への進出)があります。 

多角化はリスク分散やライフサイクル対応のメリットがある一方で、利益率低下や経営効率悪化のリスクも伴います。多角化戦略を行う上で、自社に合った規模での段階的実行、関連性の高い事業からの開始、企業理念の遵守、M&Aの活用が重要となります。 

 

差別化戦略

ゴールに向かう人

差別化戦略は、製品やサービスのユニークな特性や付加価値を通じて競争優位を確立する戦略です。 

この戦略の鍵となる要素は、消費者に対して他社製品との明確な差別化を提供することにあります。 

例えば、特異なデザイン、革新的な技術、特定のニーズに特化した機能、あるいはブランドイメージの強化など、様々な形で差別化が可能です。

差別化戦略は、単に目新しいだけでなく、その特性が消費者にとって価値があることが重要です。差別化戦略を取る際は、市場のニーズと嗜好を深く理解し、持続可能な差別化を実現する必要があるでしょう。 

 

価格戦略

お金

価格戦略は、市場における価格競争力を中心に展開する経営戦略です。 

この戦略の核心は、低価格での市場支配を目指すことにあります。具体的には、徹底したコスト削減、規模の拡大、そして効率的なオペレーションの実現を通じて、低価格を実現することが求められます。 

コスト削減には、生産の効率化や低コストの原料調達、外注といった要素が含まれます。また、規模の拡大による固定費の分散化や、流通や販売のプロセス改善によるローコストオペレーションの確立が重要です。 

しかし、この戦略は大規模な資金力を要求するため、中小企業には実施が困難な場合が多いでしょう。 

 

カスタマーサービス戦略

カスタマーサービス戦略では、質の高いカスタマーサービスを提供することで、顧客ロイヤルティ、つまり顧客との長期的な信頼関係を築くことにフォーカスする戦略です。 

顧客サービスが優れている企業は、問題発生時や質問が生じた場合に、迅速かつ効果的に対応し、顧客がスムーズに課題を解決できるようサポートします。これに加え、デジタルテクノロジーを活用して、対面や電話での対応だけでなく、AIチャットなど多様な形のコミュニケーションを提供することもあるでしょう。これにより、顧客は自分の好みに合わせてコミュニケーションをとる手段を選択でき、よりパーソナライズされたサービスを享受できるようになります。これにより、顧客は安心感を得て、企業に対して信頼を抱くようになります。そういったDX化やDXに関する事例についても併せてご覧ください。 

DX(デジタルトランスフォーメーション)とは?IT化の違いや注目されている背景・流れ・補助金

また、積極的な顧客サポートは、競争激化する市場において差別化を図る手段ともなります。

消費者は購買の意思決定において、提供される商品やサービスだけでなく、それに伴うカスタマーサービスの質も考慮します。そのため、質の高いカスタマーサービスを提供することは、企業の競争力向上に繋がります。 

 

グローバル戦略

ITツール

グローバル戦略は、全世界を一つの市場と捉え、国境を越えたビジネス展開を行う戦略です。

市場規模の拡大、コスト削減、技術力向上などが主なメリットです。グローバル戦略を実行するには、人材の確保、文化の違いへの対応、具体的な期間と予算の計画、自社の強みと弱みの分析、現地市場の詳細な調査など、幅広い側面での対策が求められます。

また、ローカライゼーションとグローバルスタンダードのバランスを見極めることが重要で、地域ごとのニーズに応じた製品やサービスの提供を行いながら、グローバルなブランドイメージを維持する必要があります 。 

 

3. 多角化戦略の企業事例

三菱商事

三菱商事は「中期経営戦略2024 MC Shared Value(共創価値)の創出」という方針を採用し、不確実性の高まる経営環境に対応しています。

経営方針は、地政学リスクやグローバルサプライチェーンの再構築、デジタル化、脱炭素など多様化する社会・産業のニーズに先見性を持って対応することに重点を置いています。

これは、あらゆる産業知見とグローバルネットワークを駆使したインテリジェンスを有機的に結びつけ、総合力を強化する戦略です 。 

 

ダノングループ(Danone Group)

ダノンは現在、ヨーグルト、ミネラルウォーター、シリアル食品、ビスケットなど幅広い食品製品を世界的に製造・販売しています。 

ダノングループは、1919年にスペイン・バルセロナで医師であるアイザック・カラッソ氏によって創業され、その歴史は乳製品、特にヨーグルトの製造から始まりました。 

ダノングループの多角化戦略は、積極的な企業買収や事業の再編を通じて進化してきました。1990年代には、BSN(ビスケット、糖菓、飲料などを手がける企業)が異なる産業分野で積極的な企業買収を行い、1994年にはGroupe Danoneに社名を変更し、ダノングループの名前を採用しました。 

握手

その後、主要な収益源であるダノンのヨーグルト事業に焦点を当て、三大分野に集中する戦略を進めました。これに伴い、菓子類や食品事業の売却が行われ、2007年には主要なビスケット部門がKraft Foodsに売却されました。同時に、健康と持続可能性に焦点を当てる方向へのシフトが見られ、食品事業の再編は組織の戦略的な方針の一環であると言えます。 

 

ソニーグループ

ソニーグループは、エレクトロニクス、ゲーム、金融、イメージング、音楽、映画など多岐にわたる事業を展開しています。多角化を成功させたポイントは、本業に関連する分野からのスタートと、業種にこだわらない多角化戦略への進展にあります。 

ソニーグループの始まりは、1946年(昭和21年)5月、資本金19万円従業員数約20名の小さな会社「東京通信工業」 でした。1968年にCBS・ソニーレコード(現在のソニー・ミュージックエンターテインメント)が設立され、製造業を超えた分野に進出しました。

この戦略は、事業間のシナジー効果や経営リスクの分散に効果を発揮し、エレクトロニクス事業の不振を金融などほかの事業でカバーする形で危機を乗り越えました。 

 

4. 差別化戦略の企業事例

アップル(Apple Inc.)

アップルの差別化戦略はイノベーションに焦点を当てています。 

アップルは独自のデザイン、技術、ユーザーエクスペリエンスを通じて製品を際立たせ、サムスン、グーグル、ソニーなどの競合他社との差別化を図っています。 

また、製品だけでなくブランド評判や顧客体験などの無形の要素も重視しています。 

 

ロレアル(L'Oréal)

化粧品

ロレアルは「ユニバーサリゼーション」という独自の戦略を採用しています。

これは、グローバリゼーションを行いながらも、各地域の消費者の願望、ニーズ、伝統を理解し尊重することを指します。

つまり、各国の消費者のニーズに合った化粧品を現地で開発・生産するため、現地チームに裁量権を与え、各国の消費者との親密な関係性を確保しています。 

ロレアルは地域ごとに異なるニーズに対応するため、地元のチームを強化し、ローカルレベルでの製品開発を行っています。 

 

ロールス・ロイス(Rolls-Royce Holdings)

ロールス・ロイスは航空宇宙市場での推進力と分散エネルギーシステムの市場リーダーです。彼らは技術革新に重点を置き、より効率的で環境に優しい製品の開発に注力しています。 

また、製品だけでなく、エンジンメンテナンスプログラムなどのサービスも提供し、顧客との関係を深めてきました。

このアプローチにより、顧客に利益をもたらすだけでなく、ロールス・ロイスがエンジンの健康状態をモニタリングするための貴重なデータを収集することができます。このデータに基づき、効率向上のために先進的な技術や素材を活用し、環境目標を達成するために電気エンジンやハイブリッド電気エンジンを開発しています。 

 

5. 価格戦略の企業事例

ウォルマート(Walmart)

ウォルマートは、一貫して低い価格で品質の高い製品を提供する戦略を採用しています。 

これは、消費者が急激な価格変動よりも安定した低価格を好むという消費者分析によって建てられた戦略です。 Walmartの価格を抑える秘訣は、特に自社ブランドの商品を企画・開発することで、市場志向の価格設定を行っている点です。

また、ウォルマートのWebサイトでの購入においては、無制限の配送に一定の定額料金を設定していることも大きな差別化となっています。 

ウォルマートは低価格で製品を提供することにより市場の各セグメントに参入し、コスト・リーダーシップ(Cost Leadership)として大きな利益を上げています。 

 

株式会社サイゼリヤ

イゼリヤは創業以来、低価格で品質の劣らないイタリア料理を提供することで成長を遂げてきました 。 

サイゼリヤの価格競争力の維持は、商品の原料となる野菜の生産過程をシステム化するなど、効率化・システム化によって実現されています 。 

コストカット

コストダウンの仕組み化はそれだけではありません。サイゼリヤは工場で可能な限りの加工を済ませた食材を各店舗に送ることで、少ない人数での調理を可能にしています。

また、メニュー数を抑えることでコストダウンを実現しています 。これにより、店舗での人件費を大きく抑えることができ、質の安定性と価格の低さの両方の提供を可能にしています。 

 

株式会社大創産業(ダイソー)

ダイソーは、ほとんどの商品(98%)を100円で販売する、日本最大の100円ショップ運営企業です 。 

ダイソーは物流に着目し、コストダウンを図りました。 具体的には、ダイソーは、ポイント・オブ・セール(POS)技術を活用して、効率的な配送と在庫補充システムを構築しました。

このシステムの原理をわかりやすく言い換えると、新しい商品が入り次第陳列することで、顧客に常に「新しい商品や面白い商品があるかもしれない」と思わせ、じっくり買い物するために滞在時間を延ばすことで、より多くの商品を購入することにつながる「トレジャーハント」型の小売モデルです。

辞書 

これにより、ダイソーは100円ショップとしての一律価格設定に加え、効率的な配送と在庫管理を重視しています。 

 

6. カスタマーサービス戦略の企業事例

ザッポス(Zappos)

ザッポスは顧客体験に重点を置いたブランドを構築しており、従業員全員が顧客体験を優先事項として理解しています 。 

ザッポスの会社のコアバリューには「サービスを通じてWOWを提供する」や「変化を受け入れ、それを推進する」などがあり、これらの価値は顧客との相互作用に反映されています 。 

また、新入社員は文化に適合するかどうかを評価するための面接を受け、会社の歴史や顧客サービスの重要性について学ぶ4週間のトレーニングプログラムに参加します 。 

また、ザッポスの特徴的な点として、無料配送と返品、24/7のカスタマーサービスが挙げられるでしょう。 ザッポスは顧客が簡単でリスクフリーな取引を行えるように、双方向の無料配送を提供し、365日の返品ポリシーを持っています。また、顧客サービスは24時間365日対応しています 。 

 

ディズニー(The Walt Disney Company)

老若男女問わずファンが多いディズニーですが、これはディズニーは「すべての年齢の人々に最高のエンターテイメントを提供することで幸せを創造する」というミッションに基づいているからだと言えるでしょう。 

ディズニーが顧客満足度を長年安定して維持している理由の一つに、5つの基本原則と7つのガイドラインがあると言われています。

これは従業員に対するサービスガイドラインで、具体的には、「安全、礼儀正しさ、インクルージョン、ショー、効率(Safety, Courtesy, Inclusion, Show, Efficiency) 」という5つの基本原則と、「笑顔、親切な挨拶、即座のサービス回復」などの7つのサービスガイドラインに従っています 。これらのガイドラインと基準に基づいて、従業員全員が同じレベルのサービスを提供できるようにトレーニングされています 。 

 

インターコンチネンタルホテルズグループ(InterContinental Hotels Group)

インターコンチネンタルホテルズグループは顧客情報との照合のために、データをリアルタイムで抽出・加工できるデータ管理システム を構築し、顧客とのコミュニケーションを改善しています 。 

インタラクティブマーケティングを通じて収益を増やし、ロイヤリティを高め、顧客を満足させる方法を模索しています。

具体的には、顧客がゴールドステータスを獲得した直後にゲストにメールを送ることで特典を知らせたり、 ホテルのWebサイトのCookie データや Web の動作を通じて非会員を特定しデータを蓄積しキャンペーンに活用したり、 IHG はフランチャイズ加盟店に対し、特定のホテルや顧客ベースに合わせてカスタマイズされた方法でイベントやサービスを提供する、などの取り組みを行いました。 

インターコンチネンタルホテルズグループ は製品、チャネル、販売チームを顧客担当の執行副社長の下に統合し、顧客タッチポイントごとに価値を創造する機会として捉えています 。 

 

7. グローバル戦略の企業事例

世界地図

トヨタ自動車(Toyota Motor Corporation)

トヨタは世界的な自動車メーカーとして知られ、グローバル戦略を展開しています。 

トヨタは地域ごとに異なる市場ニーズに対応するため、製品の標準化と地域特有のカスタマイズのバランスを取っています。 

また、持続可能性と技術革新に焦点を当て、環境への配慮や新しいモビリティソリューションの提供など、グローバルな課題にも積極的に取り組んでいます。生産拠点や研究開発拠点を世界中に展開し、地域ごとの競争力を高めつつ、グローバルなブランドイメージを築いています。 

 

サムスン電子(Samsung Electronics)

サムスン電子は韓国発の大手電子企業で、グローバル市場での競争力を強化するために幅広い戦略を展開しています。サムスンは製品の多様性と高品質を通じて世界中の消費者に訴求し、スマートフォン、テレビ、家電製品、半導体など幅広い分野でトップクラスの製品を提供しています。 

また、グローバルな販売網の構築や研究開発への投資を通じて、迅速な市場変化への適応力を強化しています。 

インドの事例を見てみましょう。 サムスンはインド市場に参入した際、1996 年にインドに製造および研究開発センターを設立し、 2015年には「Make for India」戦略を採用しています。これにより、インド特有のニーズに合わせた製品開発を行っています。 

また、現地に合わせた人材育成にも力を入れており、インドの現地語であるヒンドゥー語を覚えた社員が派遣され、現地密着型で人材を育成し活用することにより、インド特有のニーズに合わせた製品開発を行っています。 

 

プロクター・アンド・ギャンブル(Procter & Gamble)

P&Gは家庭用品や個人用製品の製造・販売で知られ、グローバル戦略を展開しています。 

P&Gは世界中で消費者の嗜好や文化の違いに対応するために、地域ごとに異なる商品ラインやマーケティング戦略を展開しています。 

 

P&Gは、多岐にわたる日用品のポートフォリオを有し、各製品カテゴリーで市場リーダーシップを築いています。これにより、地域ごとの消費者ニーズに柔軟に対応し、地域ごとの市場での強固なポジションを確立しています。 

同時に、共通のブランド価値観や品質基準を維持し、研究開発とイノベーションに注力しています。地域ごとの市場特性を理解し、効果的な製品供給とマーケティングを通じて、グローバル市場での強固なポジションを築いています。 

 

8. 経営戦略策定の流れと重要な要素

経営戦略策定の基本的な流れ

経営戦略の策定は、成功への鍵を握る重要なプロセスです。以下では、経営戦略策定の基本的な流れを詳しく解説します。以下の流れに沿って順番に進むのではなく、各ステップにおいて、仮説・検証を繰り返し行うなど戦略策定によって異なる場合があります。 

経営戦略の流れ

 

1.  経営理念・ビジョンの策定  

経営戦略の第一歩は、経営理念とビジョンの明確化です。経営理念は、企業が何を実現し、どのような存在意義を持つべきかを示すものです。ビジョンは、将来の理想像や目標を描くものであり、会社が望む方向性を具体的に示します。これらの基盤を構築することで、戦略の方向性が明確になります。 

 

2. 外部環境の分析  

外部環境の分析は、ビジネスにおける機会と脅威を洗い出す重要なステップです。市場の動向、競合他社の戦略、法的・経済的な要因など、外部からの影響を正確に把握します。この分析によって、市場ニーズやトレンドを把握し、競争優位を確立するための戦略を検討します。 

外部環境の分析では、KSF(Key Success Factorを抽出することがポイントです。KSFとは事業を成功させるための成功要因のことです。KSFを抽出することで、自社にある経営資源の配置・活用を考えることが可能になります。 

たとえば、他社が価格競争力を重視している中で、顧客は丁寧なサービスを求めている場合、KSFは「サービス力の向上」になります。この場合、従業員のサービススキル向上に注力すると同時に、顧客の満足度を評価の指標として組み込むなど、全体的な展望を描くことになります。 

外部環境の分析を行う際に活用できるフレームワークは3章で詳しくご紹介します。 

 

また、 KSFとは何か、重要性や目的、KPIとの違いなどに関してはこちらの記事で詳しく説明しています。ぜひご覧ください。 

KSFとは|KPIとの違いや重要性、具体例をまとめて解説します!

 

3. 内部環境の分析

KSFを導き出した後、企業の内部環境を分析することで、自社の強みと弱みを明確にします。 財務データ、従業員の能力、ブランド価値など、内部の要因を評価することで、自社の競争力や戦略的な優位性を把握し、KSFに適合した戦略を構築します。 

外部環境の機会と組み合わせて自社の戦略的ポジションを把握するSWOT分析や、損益計算表や賃借対照表といった財務の情報などの分析が効果的です。 

 

4. 戦略オプションの立案

外部環境と内部環境の分析を基に、複数の戦略オプションを検討します。異なるシナリオを考えることで、将来の変化にも対応できる柔軟性を持った戦略を設計します。各オプションのリスクとリターンを評価し、最適な選択肢を特定します。 

 

5. 戦略の選択と実行

選択した戦略を実行するためには、具体的な行動計画が必要です。目標設定、タスクの割り当て、予算の策定など、実現に向けた詳細なプランを策定します。戦略が実行されることで、成果を得るための道筋が整い、全社員の方針理解も深まります。

 

6. モニタリングと修正

戦略の実行中は、定期的なモニタリングが不可欠です。進捗状況や成果の評価を通じて、計画の達成度を確認します。必要に応じて調整や修正を行い、進路を最適化します。PDCAサイクルを繰り返すことで、持続的な改善を実現します。 

 

7. 戦略のレビュー

戦略の実行結果を客観的に評価し、達成度を確認します。成功した要因と課題を分析し、次のステップに生かします。また、外部環境の変化や新たなチャンスに合わせて、戦略を再評価し、適切な調整を行うことが戦略の継続的な成功につながります。

 

経営戦略の考え方に影響する要素

経営戦略の成功には、重要なキーワードが存在します。ここでは、いくつかの鍵となる用語を紹介しましょう。 

 

コアコンピタンス(中核的強み)  

企業が独自の価値を生み出すための要素で、他社に模倣され難く、顧客に利益をもたらす能力を指します。技術力やサービス力、コスト構造などが含まれます。自社の強みを理解し、経営戦略に活かすために大切なものです。 

 

企業遺伝子(企業DNA)  

企業の文化や価値観、長い歴史に培われた要素を指します。企業遺伝子を尊重し、継承することで企業らしさを強化できます。また、社内外への影響があり、ブランドイメージを向上させる効果もあります。 

 

イノベーション(革新)  

新しいアイデアや技術による発展や変化を指します。破壊的・持続的・オープン・リバースなどのタイプがあり、市場での差別化や新しい価値提供を可能にし、変化の時代において、経営戦略における重要な要素です。 

 

インテグリティ(誠実さ) 

 高潔さや真摯さを指し、ビジネスにおける信頼性や社内外への影響に関連します。経営陣の資質や価値観は戦略に大きな影響を与えるため、リーダーの選定や育成に注意が必要です。 

 

サステナビリティ(持続可能性)

企業の持続的な成長や社会的責任を意味します。ESG経営が注目され、環境・社会・ガバナンスの要素を重視する経営手法が増えています。企業の評価に影響を及ぼし、将来の事業展開にも影響を与えます。 

 

アントレプレナーシップ(起業家精神)  

新規事業の挑戦意欲や能力を指します。リスクを恐れずに新しいアイデアに取り組む姿勢が求められ、アントレプレナーシップを活用することで、企業の成長と展開を推進できます。 

  

これらの要素は経営戦略の構築において重要な要素です。企業は自身の状況に合わせてこれらの概念を適切に組み込み、長期的な成功を追求する戦略を展開することが求められます。しっかりと考え抜かれた経営戦略は、ビジネスの未来に大きな影響を与えることでしょう。 

パズルが合わさる図

 

9. 経営戦略に役立つフレームワーク

本章では、経営戦略策定に役立つ4つの代表的なフレームワークを紹介します。 

以下のフレームワークは、特に外部分析・内部分析を行う際に有効です。 また、各フレームワークごとに、ダウンロード可能なテンプレートを用意していますので、ぜひ一緒にご活用ください。 

 

3C分析

3C分析は、

  • Company(自社)
  • Customer(市場・顧客)
  • Competitor(競合)

3つの要素を分析するマーケティング環境分析のフレームワークです。 

これによって、自社の提供サービスや製品、顧客のニーズ、競合他社の動向を総合的に把握することが可能です。自社分析によって自社の強みと弱みを洗い出し、顧客分析によってターゲット層の価値観を理解し、競合分析によって市場競争の位置を確認することができます。 

3C分析は、シンプルな構造で使いやすく、営業やマーケティング部門における事前分析ツールとして大いに活用されています。ただし、変化の速い業界では定期的な見直しを行う必要があります。 

 

3C分析の詳しい説明と手順が載っているテンプレート資料はこちらからダウンロードできます。ぜひご活用ください。 

 

SWOT分析

SWOT分析は、

  • Strength(強み)
  • Weakness(弱み)
  • Opportunity(機会)
  • Threat(脅威)

4つの要素を分析し、自社の内部環境と外部環境を評価するフレームワークです。 内部の強みと弱み、外部の機会と脅威を明らかにすることで、戦略策定や意思決定に役立ちます。

SWOT分析によって、自社のポジショニングや競争力を把握できるほか、組織内で共通の認識を得ることも可能です。 

しかし、外部環境の分析に時間がかかることや、状況とかけ離れた結果になる可能性もあるため、慎重なアプローチが必要です。 

 

SWOT分析の詳しい説明と手順が載っているテンプレート資料はこちらからダウンロードできます。ぜひご活用ください。 

 

PEST分析 

PEST分析は、

  • Politics(政治)
  • Economy(経済)
  • Society(社会)
  • Technology(技術)

という4つのマクロ環境要因を分析するフレームワークです。 外部環境の影響を理解し、将来の予測や新たな参入領域を考える際に役立ちます。

政治的、経済的、社会的、技術的な要因の変化が自社に与える影響を洗い出すことで、戦略策定の方向性を調整できます。 

ただし、業界によっては要因が多岐にわたるため、分析の深さを調整することが重要です。 

 

PEST分析の詳しい説明と手順が載っているテンプレート資料はこちらからダウンロードできます。ぜひご活用ください。 

 

ファイブフォース分析

ファイブフォース分析は、競争環境を理解するためのフレームワークで、

  • 新規参入業者
  • 代替品
  • 買い手
  • 売り手
  • 競合他社

5つの要因を分析します。 

これによって、競合他社とのパワーバランスや市場の潜在的なリスクを把握できます。競合要因ごとに影響を評価し、自社の戦略を立案する際の参考にすることができます。しかし、分析項目が多く、特に競合の多い業界では情報収集が難しいこともあります。  

ファイブフォース分析の詳しい説明と手順が載っているテンプレート資料はこちらからダウンロードできます。ぜひご活用ください。 

 

優先順位をつける画像 

 

これらのフレームワークを組み合わせて活用することで、経営戦略策定においてより洞察力を深め、成功に向けた戦略を確立することができるでしょう。 

 

10. まとめ

最後に本記事の内容を以下にまとめました。  

経営戦略とは、

企業が競争の激しい環境で自身の経営目的や目標を達成するための戦術や計画を指します。無限ではない資源(人材、資金、物的資産)を最適に活用して、企業の成長と競争優位性を実現する手段です。 

経営戦略を構成する要素として

  • 全社戦略(企業戦略): 企業全体の方向性を指す会社全体を動かす戦略
  • 事業戦略: 特定の事業に焦点を当てた戦略
  • 機能戦略(機能別戦略): 企画・製造・販売などの機能ごとに策定される戦略

があります。

経営戦略策定の流れは以下です。

  1. 経営理念・ビジョンの策定
  2. 外部環境の分析
  3. 内部環境の分析
  4. 戦略オプションの立案
  5. 戦略の選択と実行
  6. モニタリングと修正
  7. 戦略のレビュー

 

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