退職していく部下には、ある共通した兆候があります。
- 「やる気に溢れた部下が突然やめた」
- 「なんの兆候もなく優秀な社員が辞めていく」
など、退職の兆候を見抜けずに悩んでいるリーダーは多いのではないでしょうか。
今回は退職していく部下の5つの兆候や、優秀な部下を辞めさせないための取り組みについて考察します。
優秀な部下の退職で悩んでいるリーダーの解決策になる情報もお届けしますので、ぜひマネジメントの参考にしてください。
1. 退職の兆候5つの特徴
退職が近い部下には次のような特徴があります。
- 同僚とのコミュニケーションの減少
- 業務への興味喪失や生産性低下
- 有給休暇や長期休暇の増加
- 私用電話で離席することが多くなった
- 挨拶をしない
退職の兆候を見抜くのは至難の業です。なかには退職する素振りを全く見せずに辞めていく社員もいるでしょう。
ただ、部下の普段の仕事ぶりや同僚とのコミュニケーションを見ていると「以前とは変わった」と思う要素がいくつかあるはずです。
突然の退職を防止するには、いつも以上に部下のことをよく見ておくようにしましょう。
同僚とのコミュニケーションの減少
退職する部下の兆候として比較的多いのが、同僚とのコミュニケーションの減少です。
具体的には「ランチを一人で過ごすようになる」「ミーティングの発言が減る」「飲み会に参加しなくなる」などがあげられます。
退職を考える部下が、まわりとのコミュニケーションを避けようとするのには、次のような心理が背景にあるからです。
【同僚とのコミュニケーションを避ける心理】
- 感情的な葛藤(同僚に対する罪悪感が芽生え、交流を避けるようになる)
- プロジェクトへの影響を心配している(自分が辞めることでプロジェクト進行に迷惑をかけたくない)
- 新しい機会を作るための時間が必要(次の職場で必要な人脈を作ったり知識を蓄えたりするための時間が必要)
退職を考え始めると「自分が辞めることで同僚に迷惑をかけたくない」という心理が働き、自然とコミュニケーションが減ります。
また、飲み会や社内レクリエーションについても「無駄な時間」と捉えるようになり、参加を控えることも多くなるでしょう。
退職する社員のほとんどは、次の転職先が決まっています。
辞める会社の同僚に気を使ったり関係を深めていったりするよりは、転職先の企業で必要な人脈を深めることに意識が向くのは自然なことです。
このような「コミュニケーションの減少」を見抜くには、普段から部下に関心を持つ必要があります。
大事なことは「普段との変化を見抜くこと」です。
部下一人ひとりとの関係を深化させておくことで、変化により早く気付けるでしょう。
業務への興味喪失や生産性低下
退職を考え始めると、業務への興味がなくなったり生産性が下がったりする兆候が見られます。
退職を決めた時点で、業務に対するモチベーションを維持していくのは難しくなり、新しい知識を吸収したり新規プロジェクトに参画したりする意識は薄れていくでしょう。
インセンティブ制度がある業務では、報酬が出るタイミングで退職している可能性が高いため、業務に興味を示さなくなる可能性が高くなります。
退職を決意すると、本人の意識は新しい職場に向くようになるため、注意散漫や燃え尽き症候群が原因で生産性も低下します。
ときには業務上のミスや事故が起こることもあり、安全面でも注意が必要です。
帰属意識が薄れた社員には、以前とは違った兆候が顕著に現れます。
退職を未然に防ぐには、普段の会話や社内研修への参加状況などをチェックしておくといいでしょう。
有給休暇や長期休暇の増加
退職が近くなると、有給休暇の取得が増えたり、長期で休むようになったりする社員が多くなる傾向があります。
退職を危惧する部下がいる場合は、定期的に勤怠システムなどをチェックしておくといいでしょう。
有給休暇の取得が増えるのは、おもに転職先企業との面接や転職エージェントとの打合せが多くなるためです。
土日に面接をしている企業は少なく、転職活動をしていると、どうしても平日の有給休暇取得が多くなります。
転職エージェントに登録している場合も、平日にエージェントとの面談が設定されるケースも多いため、休暇申請が増えるかもしれません。
退職を考えはじめると、現在の職場でのモチベーションは下がりますし、次の職場で頑張るために「一度気持ちをリセットしたい」という心理が働きます。
新しい職場では初年度の有給休暇取得が難しいケースも多いため、離職前に残った有給を使い切るのが一般的です。
ただし、いくら退職リスクがある社員だからといっても、有給申請の理由を聞くのは危険です。
有給取得の理由を問いただしたり、取得申請を拒否したりするとハラスメント問題に発展する可能性もあるため、慎重に対応するようにしましょう。
■有給取得に関する裁判所の判例
年次有給休暇における休暇の利用目的は労働基準法の関知しないところであり、休暇をどのように利用するかは、使用者の干渉を許さない労働者の自由であると解すべきである。 |
私用電話で離席することが多くなった
頻繁に私用電話で離席することが多くなった場合も、退職リスクを疑ったほうがいいかもしれません。
転職活動をはじめると、面接の日程調整や、転職エージェントからの連絡に対応することが多くなります。
土日や定時退社後に転職活動をする社員も多いですが、転職先企業によっては日中に電話がかかってくるケースもあります。
自席での個人スマホでのメールやLINE操作が禁止されていることも多く、転職活動中の社員は自然と離席も増えます。
少人数の部下なら離席状況を把握するのは簡単ですが、大きな組織を管轄する責任者の場合は、なかなか個人の離席状況まで把握するのは難しいでしょう。
特に注意したい部下がいる場合は、信頼できる同僚に事情を話し、普段の行動をよくチェックしてもらうように依頼する方法がおすすめです。
挨拶をしない
社員が他の人に挨拶をしなくなった場合、それは組織への帰属意識の低下や退職意識の現われかもしれません。
帰属意識が薄れた社員のなかには、社会人としての常識を逸脱した行動をとる人もいます。
「挨拶する時間も無駄」「いまの職場の同僚や上司に気を遣う必要もない」と、極端に交流を避けるケースも多くなるでしょう。
挨拶が億劫になるため、わざと出社時間をずらしたりして同僚と顔を合わせる機会を減らす社員もいます。
普段の挨拶の頻度や声のトーンからも、部下のモチベーションがわかる場合もあります。
毎朝の部下の表情をよく見て、普段と変わりがないか、よく確認しておくようにしましょう。
2. 優秀な部下が退職の兆候を見せずに辞めていく心理とは?
ここまで退職の兆候について解説してきましたが、もちろん退職の兆候を見せずに突然辞めてしまう社員もいます。
これは特に優秀な社員の場合によく見られる現象で、業務遂行への責任感から「周りにネガティブな影響を与えたくない」と感じ、退職を隠し通すケースもよくあります。
誠実な社員の場合は、同僚や上司に「不義理をしたくない」と感じることも多く、最後まで会社のために尽力するケースも多いでしょう。
このように退職の兆候を見せない社員に対しては、実際のところ対策が難しいのが現状です。
退職者ばかりフォーカスするのではなく、普段から「誰がいつ辞めてもいいような組織作り」を心がけ、業務が属人化しないような取り組みも必要でしょう。
3. 一般企業の退職事情|もっとも多い退職理由は給与以外の待遇
退職の兆候がわかっても、肝心の退職理由がわからないと対策のしようがありません。
厚生労働省の資料などを参考に、年代別の離職理由などを考察してみたいと思います。
退職理由1位は給与以外の待遇|2位は仕事内容に不満
下記は、厚生労働省の令和5年3月3日資料「自己都合による離職の理由別 転職者割合」の資料から抜粋したデータです。
この資料によると、離職理由でもっとも多いのが「給与以外の労働条件に関する不満」、次に「仕事内容に不満」というものでした。
参考(グラフや表の引用元):厚生労働省公式サイト
年齢によっても、離職理由はさまざまです。ただ、全体的に見ると、賃金よりも「労働時間や福利厚生面」「仕事内容に満足できない」などの原因が多いことがよくわかります。
給与待遇が原因の退職は経営層の判断も必要になるため、リーダーだけで対応するのは難しいでしょう。
しかし、労働時間や仕事内容に関する不満なら、何らかの対策を講じられるかもしれません。
年代別退職率の状況
年齢別の離職理由を見ると、さきほどの全体感からは少し違った傾向が見えてきます。
「25歳~29歳」の退職理由の2位は「会社の将来に不安を感じている」となっており、会社の内情がわかってくるにつれて「自身のキャリアと会社の将来にミスマッチを感じている」状況が垣間見れます。
45歳~49歳の中堅層の退職理由の第2位は「人間関係がうまくいかない」という理由です。
中堅層になると他部署との調整業務を任されることもあり、部下のマネジメントをしながら上司の指示にも従う「板挟み状態」に悩む人が多いのかもしれません。
【年代別の離職理由1位2位】
1位の理由 | 2位の理由 | |
20歳~24歳 | 労働条件(賃金以外)がよくない…32.6% | 満足のいく仕事内容ではない…28.4% |
25歳~29歳 | 労働条件(賃金以外)がよくない…30.7% | 会社の将来に不安…28.6% |
30歳~34歳 | 賃金が低い…29.8% | 労働条件(賃金以外)がよくない…26.8% |
35歳~39歳 | 会社の将来に不安を感じた…32.6% | 労働条件(賃金以外)がよくない…30.2% |
40歳~44歳 | 満足のいく仕事内容ではない…28.7% | 労働条件(賃金以外)がよくない…27.9% |
45歳~49歳 | 満足のいく仕事内容ではない…31.8% | 人間関係がうまくいかない…25.7% |
離職理由はさまざまでも、退職するにはそれなりの理由があるはずです。
退職の兆候をいち早くキャッチし、部下の状況にあったサポートができるよう、日頃から準備しておくことが重要です。
4. よくある退職理由の具体例
「給与以外の労働条件に不満がある」「会社の将来に不安を感じる」などの退職理由でも、実は別のところに要因があるかもしれません。
そこで、一般的なよくある退職理由と、その問題に潜む背景などについても深堀りしていきます。
給与に対する不満
厚生労働省の調査結果にもあるように、退職理由TOP5のなかで上位を占めるのが「給与に対する不満」です。
特に若年層の場合は手取りが20万円を切るケースもあり、市場価値が下がりはじめる35歳までに退職を決意する社員も多いようです。
30歳~34歳の世代では、結婚や子育てでお金が必要になることも多く、生活水準を改善するための転職が増える傾向にあります。
しかし、単に「給与が低い」という理由だけで転職しているのかというと、そうではありません。
特定のスキルや技術をもった社員のなかには、「自分の市場価値に見合った給与を受け取っていない」など、スキルと報酬のミスマッチが原因で退職を考えている場合もあります。
給与に対する不満を解決するには、資格手当によりスキルに見合った報酬を与えたり、インセンティブ制度を導入したりして、実務に見合った報酬が得られる仕組みを検討してみましょう。
上司と合わないなど人間関係に問題がある
人間関係のトラブルは退職の大きな要因となります。
特に上司との関係がうまくいかない場合、社員はストレスを感じやすくなり、退職を考えるようになります。
リーダーやマネージャーに昇格した場合は、部下マネジメントや他部署との人間関係に悩むケースも多いでしょう。
【よくある人間関係の悩み】
- 部下の人心掌握ができず組織のパフォーマンスが上がらない
- 部下からの突き上げに悩んでいる(問題社員を抱えている)
- 高い目標を掲げられる一方で上司からサポートも少ない
- 他部署との人間関係に悩み、プロジェクトの推進に支障をきたしている
人間関係の悪化が退職のきっかけになることもありますが、兆候を早めに発見できれば、対人絡みの問題を解決できる場合も多いです。
人間関係のトラブルを抱えると、自身の意見やアイデアを共有することも少なくなり、おのずと生産性も下がります。
日頃のちょっとした変化や業績低迷が見られたら、まず人間関係に問題がないか早めにフォローするようにしましょう。
キャリアパスの不明確さ
「キャリアパスが不明確である」と感じると、将来に対する不安から退職を考えるようになります。
例えば次のようなケースです。
- スキルアップの機会が限られる(このまま在籍しても成長ができない)
- 身近に目標となる人がいない(目指したい人が身近にいない。将来のキャリアビジョンを描きにくい)
- キャリア開発のサポートがない(やりたいことがあっても上司や会社がサポートしてくれない)
- 職務に一貫性がない(頻繁に業務が変わるためスキルアップができない)
将来に不安を抱える社員には、明確なキャリアパスを示し手厚いサポートをすることで不安を緩和できるかもしれません。
多少時間がかかるかもしれませんが、ロールモデルとなる若手社員を早くから育成しておくことも大切です。
評価システムへの不満
「成果と人事評価が連動していない」「上司から気に入られている社員が出世していく」など、評価に関する不満も退職理由のひとつです。
具体的には次のようなケースがあります。
- 評価が不公平
- 評価基準が不透明
- 目標設定に納得感がない
- 評価に主観が入ることが多い
人事評価システムを変更するには、経営層はもちろん、人事部との協力が必要不可欠です。
部署内で人事評価に関する悩みを抱えている部下がいるなら、経営層に評価制度に関する改善提案をしていくのも、リーダーとしての役目かもしれません。
また、人事制度が整っているのに評価に関する不満があるなら、それは上司の責任です。納得感のある評価をしていくには、できるだけ計測可能なKPI目標を設定するようにしましょう。定性的な目標は評価がしづらく、部下の納得感を得るのが難しいケースがあります。
目標を設定したら、少なくとも四半期に一度は評価面談をするのがおすすめです。「四半期面談は面倒」と感じるかもしれませんが、部下を正当に評価するためには、短いスパンでの評価やフィードバックが必要不可欠です。
面談時には、次の四半期の具体的な目標を設定し、毎月KPIに対する進捗率を振り返るようにしましょう。「小さなことでも正当に評価される仕組み」、そして「公平性と透明性が担保された評価制度」が整うと、自然と退職リスクも減っていきます。
プライベートの問題(介護など)
家庭の事情や介護の負担などが原因で、退職を考えることもあります。家族の介護に時間と体力を割かれ、日々の業務に支障をきたしているかもしれません。
また、家族間のお金の問題や離婚など、上司が踏み込めないような問題を抱えている社員もいます。
プライベートの問題については、会社や上司がサポートできる範囲が限られます。
ただ、時差出勤や時間休を認めるなど、働きやすい環境を用意したり、リモートワークを適宜導入したりすることで、問題解決の糸口が見いだせるでしょう。
日々のコミュニケーションや面談を重ね、部下が言いづらいことを上手に引き出してあげるのも上司の役目です。
目標達成や業務遂行に伴うストレスの増加
目標達成のプレッシャーや業務の負荷が増加すると、社員はストレスを感じ、退職を考えるようになります。市場変化が激しい昨今、状況によっては高い目標が必要になるケースがあるかもしれません。
しかし、高い目標を追いかけるために必要なリソースを提供しなかったり、サポートをしなかったりすると、「見放された」と思い部下のモチベーションは一気に下がります。
上司は、目標達成に向けて部下と一緒に取り組む「並走意識」を持つことが大切です。日々の業務をきめ細かくウォッチし、必要に応じてサポートができるように日頃から準備しておきましょう。
5. 退職の兆候を早期に見抜く方法と対策
いくつかある退職の兆候を早期に見抜くには、次の方法があります。
- 同僚や他部署からの情報収集
- 1on1面談を通じた意思疎通
- キャリアビジョンの設定とサポート
- 人事評価方法の変更
- 中長期的な教育支援プログラムの提供
同僚や他部署からの情報収集
社員間のコミュニケーションは、退職の兆候を見抜くうえで、非常に有用な情報源となります。
退職を決意した部下が、転職活動中に上司に本音を言うケースはほとんどありません。
上司が気づいたときには転職先が決まっていることが多いでしょう。
特定のメンバーの動向を常にヒアリングするのは難しいですが、定期的に他部署や同僚との飲み会などを開催し情報収集すると、意外な事実がわかるかもしれません。
1on1面談を通じた意思疎通
1on1面談は、部下と直接コミュニケーションを取り、悩みや不満を早めに解決できる重要な機会です。
定期的な1on1面談をおこなうことで、社員の心の中にある問題や懸念点を早期に把握し、解決策を見つけることができるようになります。
1on1面談の目的は「部下が自ら考えて気づきを得ること」です。
面談のテーマは多岐にわたりますが、将来のキャリアビジョンや身近な目標などをテーマにすると、お互い話しやすいでしょう。
もし、将来の目標について面談したときの反応が悪ければ、退職する可能性があるかもしれません。
もしかすると「些細なことで悩んでいた。転職を考えていたけど解決した」と、面談をきっかけに考えが変わることもあります。
1on1を取り組みたいが何を話せばいいかわからない方は、ぜひこちらの記事で1on1の手順や話題を解説してますのでぜひご覧ください。
シニアエンジニアとの1on1についての記事にはなっておりますが、他職種にも通じる点が多々ございます。
キャリアビジョンの設定とサポート
社員一人ひとりの状況に応じたキャリアビジョンを設定し、上司がサポートすれば、退職を未然に防ぐことができます。
退職を考えはじめ、モチベーションが下がっている社員が「自社組織内で〇〇をしたい」「成長したい」など、高い目標に向かって努力するケースはほとんどありません。
そのため、将来のキャリアに関するヒアリングをするだけで、退職の兆候をキャッチできる場合もあります。
一方で明確なキャリアビジョンを描く部下には、強みや興味を深く理解し、上司が惜しみなく支援を提供するように心がけましょう。
ただし、キャリアビジョンを描くうえでは次のような課題もあります。
- 「キャリアビジョンを描け」と言われても、選択できるキャリアがわからない
- 目標となる先輩社員がいないため、どうやって目標を描けばいいかわからない
将来のキャリアが不明確なら、リーダー自身が他部署と調整をしたり経営層の協力を得たりして、ロールモデルになるような先輩社員とのミーティングを設定するのがおすすめです。
希望の部署などがあるなら、職場見学や社内留学(短期間他部署を経験させること)などを企画してみるのもいいかもしれません。
急な退職があると、余計な採用コストや育成コストが発生します。
キャリアビジョンの策定やサポートには時間と手間がかかりますが、後で発生する無駄なコストを考えれば、早めに取り組んだほうがいいでしょう。
人事評価方法の変更
退職を未然に防ぐためにも、人事評価制度の変更は企業が考えるべき課題です。
特に上司の主観が入り納得感のない評価をする企業や、評価基準が明確でない企業の場合、退職リスクは高まります。
部下が安心して目標に邁進してもらうには、明確な評価基準が重要です。年齢や経験に囚われず、若手でも評価される評価制度も検討してみましょう。
また、納得感のある評価をするには「360度評価制度」もおすすめです。上司自身が部下や他部署から評価されることで、俗にいう「お気に入り人事」も減るでしょう。
評価制度と報酬制度を連動させることで、退職理由のひとつである「給与の不満足」も解消されます。
※360度評価についてはこちらの記事をご覧ください。
中長期的な教育支援プログラムの提供
社員のスキルアップとキャリアを支援する教育プログラムは、社員の満足度とロイヤリティを高める効果があります。
社内リソースを使って研修プログラムを作るのが難しい場合は、専門の研修会社にアウトソーシングする方法も検討しましょう。
多少の費用はかかりますが、社内の重要なリソースを割く必要もないため、トータルで考えると費用対効果は高いです。
6. 退職を引き止める方法
部下から、突然の退職の申し出があった場合には、次の方法で遺留できないかチャレンジしてみましょう。
- 個別面談で本音を聞き出す
- 冷静に考える時間を与える
- 業務内容やキャリアパスの変更
ただし、「他社で成長したい」「違うステージで頑張りたい」など前向きな退職理由なら、応援する気持ちも大切にしましょう。
退職理由や本人の特性、自社が置かれた状況などを整理し、部下にとって最適な方法をアドバイスするのも上司の役目です。
個別面談で本音を聞き出す
社員から退職の申し出があったら、まずは理由を聞くための個別面談を実施しましょう。
ただし、いきなり退職を考えている部下と面談をはじめるのは禁物です。
なぜなら、事前の情報収集をしないまま面談しても本音を引き出せないからです。
同僚や他部署のメンバーから、部下が抱えていそうな問題を事前にヒアリングしておくと、よいアドバイスができるかもしれません。
部下から見てあきらめていたような課題でも、上司の立場からすればすぐに解決できるケースも多いです。
面談では、いくつかの質問を用意し「聞き切る」ことが重要です。部下の言葉を遮って、いきなり強い口調で遺留するのは逆効果です。
「なにか上司から言われるかも」「引き止められるかも」と思われた時点で、部下は本音を言えなくなります。
聞き役に徹して、できるだけ退職に至った本当の理由を伝えてもらうように心がけましょう。
冷静に考える時間を与える
冷静に考える時間を与えることも、退職を思いとどまらせる有効な手段です。
退職を決意した部下のなかには「感情的になっていた」「短絡的に物事を判断していた」と早急に退職を決断してしまったケースも多く、冷却期間を置くことで考えが変わることも多々あります。
「自分は評価されていない」と勝手に思い込んでしまい、退職してしまうこともよくあります。
なかには社内の給与制度やインセンティブ制度の仕組みを理解せず、間違った判断をしてしまい「給料が少ない」「将来の見込みもない」と辞めてしまう社員がいるかもしれません。
退職理由を聞いたあとは、部下と上司それぞれは1週間程度冷静に考える時間を持ちましょう。冷静になることで、良い方向に向かうこともあります。
業務内容やキャリアパスの変更
業務内容やキャリアパスの変更を提案してあげると、考え直してくれるケースも多いです。
しかし「上司に辞めると伝えたら希望の部署に行けた」などの噂が社内に広まると、ほかの社員のモチベーション低下にもつながります。
業務を変更する場合は、本人特性をよく見極めたうえで、周りからも納得感がある変更をするようにしましょう。また業務や部署が変わったあとは、適切な目標設定と評価が重要です。
「厳しくすると、また辞めると言い出すかも…」と甘やかすのは逆効果です。部下一人ひとりと真剣に向き合い、公平にそして透明性のある評価をしましょう。
まとめ
部下の退職意向にいち早く気付くためには、コミュニケーションを重視し、1on1面談などを通じて部下の本音を聞きましょう。
個人のキャリアアップを考えると退職を応援したほうがいい場面もありますが、優秀な社員の退職は食い止めたいものです。部下一人ひとりに愛情を注ぎ、部下と並走する気持ちをもてば、突然の退職に悩むことも減ります。
リーダーには、部下を守り育成しながら、組織全体のパフォーマンスを上げる責務があります。ときには人事制度改革などを提言するなど、経営層や他部署との調整についても覚悟を持って臨むようにしましょう。
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執筆者:嶋よしかず