CCPM(クリティカルチェーン・プロジェクトマネジメント)とは|基本から簡潔に解説!

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CCPM(クリティカルチェーン・プロジェクトマネジメント)とは|基本から簡潔に解説!

2023年6月19日

「CCPM」や「クリティカルチェーン」という言葉を聞いたことはあっても、「どういったものなのか、いまいちよくわからない」という方も多いのではないでしょうか。 

 現代は「VUCA」と呼ばれる時代であり、プロジェクトも複雑化しています。 そのため、マネジメントでは多くの要素を考慮する必要があります。 

さらに、進捗状況や要素が目まぐるしく変化することも多く、1人のマネージャーだけでは限界があります。 

 

CCPMの特徴は、リソースの管理だけでなく進捗状況やトラブルに応じて調整するための時間的余裕を「バッファ」として設定し、進捗を管理する点です。 

 プロジェクトマネジメントには様々な手法がありますが、本記事ではCCPMの定義から、CCPMのメリット・デメリット、CCPMを使ってプロジェクトを管理する具体的な手順、その際の注意すべきポイントまで分かりやすく解説いたします。 

 

1. CCPMとは

さっそく、本章でCCPMについて詳しく解説していきます。 

CCPMの定義と歴史

CCPM(Critical Chain Project Management)は、プロジェクト管理手法の一つであり、「クリティカルチェーン」を用い、バッファ(時間の余裕)の設定とリソースの効果的な割り当てを通じてプロジェクトの進捗とスケジュールを最適化する手法です。 

分かりやすく説明すると、各タスクにバッファを含んだ期限の設定を行うのではなく、最短でそれぞれのタスクが完了する前提の期限を設けて、プロジェクトの納期前(プロジェクトの最後)にプロジェクトバッファとしてバッファを設定する方法です。 

原則として、プロジェクトバッファは、プロジェクト全行程に見積もられた時間の50%を最後尾に割り当てられることが多くあります。 

CCPM

CCPM(クリティカルチェーンプロジェクトマネジメント)の手法は、1990年代後半にエリヤフ・M・ゴールドラット博士が「クリティカルチェーン」という著書で初めて開発しました。 

この手法は、古くからあるプロジェクトマネジメントの標準であるプロジェクトマネジメント協会(PMI)のPMBOKガイドを代替するものとされています。 

 

ゴールドラット博士は、CCPMの基礎となる「制約条件の理論(TOC理論: Theory of Constraints)」の創始者でもあり、密接に関連しています。 

TOC理論とは、制約(Constraint)と呼ばれるシステム内の制限要素を特定し、その制約要素を通じて全体最適を追求することに焦点を当てた理論です。 

制約条件の理論により、CCPMでは制約要素(ボトルネック)を見極め、その制約要素を解決することでプロジェクトの効率性と成果を最大化できます。 

 

CCPMの必要性

CCPMは、プロジェクトの遅延やコスト超過を抑えるだけでなく、効率的なリソースの割り当てやリスク管理にも有用な手法です。 

CCPMを使うことが求められている理由は大きく以下の2あります。 

 

従来の手法の限界 

従来のプロジェクトマネジメントの手法(例:ウォーターフォール)では、タスクの見積もりやスケジュールの作成に余裕を持たせることが一般的です。 

しかし、この方法では実際のタスクの変動やリソースの制約を考慮しきれません。その結果、プロジェクトが遅延し、コスト超過が発生することがあります。 

CCPMは、制約要素に焦点を当て、リソースの効果的な割り当てとバッファの設定を通じて、プロジェクトの遅延とリスクを最小限に抑えます。 

 

不確実性と変化に対処する必要性 

現代のビジネス環境では、不確実性と変化が日常的に発生します。 

プロジェクトも例外ではなく、リソースの制約や予期せぬ問題によって影響を受けます。 

CCPMによってマネジメントすることで、変動する状況に対応するためのフレキシブルな計画と制約に焦点を置いた進捗管理が可能になります。 

また、バッファの設定により、プロジェクトの進捗状況やリソースの変動に対応する余裕を確保することができます。 

 

CCPMとCPMの違い

CPMは、プロジェクトの納期の遅延を防ぐため、最長時間を要するパス(クリティカルパス)を特定する方法です。 タスク間の依存関係と時間に焦点を当て、スケジュールを作成します。 リソースの制約よりも、タスクのスケジュールが重視されます。 

プロジェクトの遅延を引き起こす可能性のあるタスクを特定し、プロジェクトマネージャーが最初から予防策を講じるよう導くことができます。 

 

一方 、CCPMはリソースに対する制約要素に注目し、可能な限り最速でプロジェクトを完了させることを目的とし手利用されることが多くあります。 

リソースの制約やバッファの設定を通じて、プロジェクトの遅延とリスクを最小限に抑えることに重点を置きます。 

当手法では、リソースの制約要素を特定し、プロジェクトバッファを設定します。 

 

2. CCPMのメリット

こちらではCCPMのメリットについて解説します 

プロジェクトに合わせて、どのように活用できるか考えながら読んでみましょう。 

 

最適な進捗管理が可能

CCPMは制約要素にフォーカスし、リソースの制約とバッファの設定を通じてプロジェクトの進捗とスケジュールを最適化します。 

これにより、リソースの効果的な割り当てと進捗の最適化が可能となり、プロジェクトの納期遅延を最小限に抑えることができます。 

 

リスクの最小化

CCPMはプロジェクトバッファとタスクバッファを導入することで、遅延に対処する余裕を持たせます。 

これにより、予期せぬ遅延やリソースの制約による影響を吸収し、プロジェクトのリスクを最小化することができます。 

 

リソースの効果的な管理

CCPMはリソースの制約要素を特定し、リソースの効果的な割り当てを行います。 

これにより、リソースの過負荷やボトルネックの発生を防ぎ、プロジェクトの効率性を向上させます。 

 

チーム内でのコミュニケーションの促進

CCPMではバッファの設定により、チーム全体がプロジェクトの納期に向けて協力し、タスクの優先順位を合理的に決定します。 

これにより、チーム間のコミュニケーションが活性化し、目標達成に向けた協力体制が築かれます。 

 

プロジェクトの予算管理

 CCPMではプロジェクトバッファの設定により、リソースや時間の余裕を明確にすることができます。 

これにより、プロジェクトの予算管理が容易になり、予算の適切な配分やコスト制約の管理が可能となります。 

計画を立てている画像

3. CCPMのデメリット

メリットもある一方で、以下のようなデメリットもあります。 

 

複雑性の増加

CCPMは他のプロジェクト管理手法に比べて複雑であり、実施にあたって十分な理解と専門知識が必要です。 

プロジェクトマネージャーや関係者が新しい手法を学び、適切に適用するためのトレーニングや教育が必要となる場合があります。 

 

プロジェクトリソースの制約 

CCPMではリソースの制約を重視し、バッファの設定によるスケジュール最適化を行います。 

しかし、制約が厳しい場合、リソースの不足や過負荷が生じる可能性があります。このため、リソースの適切な管理と調整が必要となります。 

 

プロジェクトチームの適応と変革の必要性

CCPMの導入はプロジェクトチームに変革を求めます。 従来のプロジェクト管理手法とは異なるアプローチや作業スタイルへの適応が必要となります。 

また、新しい役割や責任の明確化、コミュニケーションの改善など、組織内の文化や慣行の変革が求められる場合もあります。 

プロジェクト全体の視点の欠如

CCPMでは制約要素に焦点を当てるため、他の重要な要素や依存関係に対する注目度が低下する可能性があります。 

プロジェクトの全体的なビジョンや戦略的な視点を見失わないように注意が必要です。 

 

導入コストと時間の増加

CCPMの導入には時間とリソースが必要となります。 

プロジェクトチームのトレーニングやツールの導入、既存のプロセスやワークフローの変更など、導入に伴うコストや時間が増加する可能性があります。 

4. CCPMの手順

それでは具体的にどのようにCCPMを使って計画・管理できるかご紹介します。 

 

プロジェクト全体期間を見積もる

まず、予算、期限、人数、タスクに必要な工数などプロジェクトの構成要素・制約条件を整理し、そこから各タスクにかかる時間の見積もりを算出します。 

作業期間を見積もる方法として、 WBSに基づく方法や3点見積もり法など様々なものがありますが、作業やリソースを細分化し、工程表を立てることで見積もりの精度を高めることができます。 

 

リソースの割り当て

CCPMでは、各タスクの完了に必要な人員と所要時間を推定し、プロジェクト全体におけるリソースの必要性を判断します。 事前にリソースが制限される可能性(例:チームメンバーの休暇)を把握している場合は、それを考慮して計画を立てます。 

このように、プロジェクトが始まる前に大部分のプロジェクト計画を行うことができるのがCCPMのメリットです。 

 

リソースの可視化と管理は手動で行うことは難しいですが、ツールを活用することで効率的に管理できます。 予算の都合でツール導入が難しい場合でも、色分けなどの簡単な工夫でリソースの分配状況を確認できます。 たとえば、各メンバーに割り当てたタスクに色を付けることで、視覚的に担当タスクを確認できます。 

これにより、クリティカルパスのスケジュールで同じ人が複数のタスクを同時にこなす必要があるかどうかを簡単に確認し、リソースプロファイル内のタスクの並び替えを行うことができます。 

また、生産性を低下させるマルチタスクを避けるために、一人の人間が同時に2つ以上のタスクにアサインされないようにすることが理想的です。 

 

クリティカルチェーンの決定

プロジェクトの全体的な依存関係や作業の流れ、リソースを考慮して、クリティカルチェーンを特定します。 まず、PERT図(アローダイアグラム)を使って、クリティカルパスを見つけます。 クリティカルパスは、リソースの制約を考慮せずに、プロジェクトを最短期間で終了するためのタスクの経路を指します。 

一方、クリティカルチェーンは、リソースの制約を考慮した最短経路を指します。 クリティカルチェーンを決定する際には、タスクの重なりや人員数の変動などを考慮します。 

このとき、ガントチャートが役立ちます。ガントチャートは、タスクの期間や人員のスケジュールを可視化し、クリティカルチェーンの決定に役立ちます。 ガントチャートを活用して、プロジェクトの進行状況やリソースの管理を行いましょう。 

 

バッファの設定

バッファには、プロジェクトバッファ、合流バッファ、リソースバッファがあります。 

プロジェクトバッファ

プロジェクトバッファは、プロジェクトの納期を守るために計画されるバッファです。組織によって基準値が決められますが、通常はクリティカルチェーンの長さの半分が基準とされます。このバッファはプロジェクト全体のスケジュールを前倒しにし、プロジェクトの開始時期を決定する役割を持ちます。

計算方法としては、全体の見積もり時間を50%削減した後、その削減分の50%をバッファとして使用します。 これは、予想以上の遅延が発生した場合にプロジェクトの影響を緩和する役割を果たします。 

実際の研究によると、CCPMプロセスでプロジェクトバッファを導入すると、プロジェクトの完了を25%早めることができるとされています。 

 

合流バッファ

合流バッファは、クリティカルチェーンの末尾に配置されるバッファです。 クリティカルチェーンはプロジェクトの進捗に応じて変化することがありますが、合流バッファを挿入することで、クリティカルチェーンの変化を避け、柔軟なスケジュールを確保します。 

また、合流バッファ自体はクリティカルチェーンに食い込むことはできませんが、クリティカルチェーンに至るまでの依存関係にあるタスクを完了させる際の時間的余裕を生み出すことができます。 

 

リソースバッファ

リソースバッファは、重要なアクティビティに必要なリソース(時間、設備など)を確保するためのバッファです。 クリティカルチェーン内に配置され、リソースの確保に関するリスクを軽減します。 

すべてのCCPMプロジェクトにリソースバッファが存在するわけではありませんが、必要な場合には重要なリソースの利用状況を管理し、スケジュールの安定性を確保する役割を果たします。 

 

進捗とコミュニケーションの管理

パーキンソンの法則によると、社員が時間内にタスクが終わっても、報告して次のタスクに取り掛かるのではなく、先延ばしにして、最後の瞬間まで仕事を始めたり、時間を埋めるために仕事を引き延ばしたりすることがあります。 

これは学生症候群とも呼ばれます。皆さんの中にも、学生の時に夏休みの宿題を夏休み明けギリギリまで手を付けずにいた方も多いのではないでしょうか。 

これを防ぐために、タスクに必要な時間を半分にすること、またチーム内でコミュニケーションを積極的に取る事で、チームメンバーに適度な緊張感を持たせることができます。 

この習慣は、集中力を持続させ、時間内に仕事を終わらせるよう後押しすることができます。 

 

5. 効果的なCCPMを実施するためのポイント

リソースの最適化

CCPMでは、リソースの最適化も重要な要素です。 リソースの過負荷やボトルネックを避けるために、リソースの予約と割り当てを効果的に行う必要があります。 

リソースの使用状況を監視し、必要なリソースを適切に調整することで、プロジェクトの進行とタイミングのコントロールを実現します。 

 

全プロセスの理解

プロジェクトを適切に実行するためには、最初から最後までの流れを理解し、全体のプロセスを把握しておく必要があります。 

プロジェクトのスコープや目標、タスクの依存関係などを明確にし、プロジェクト全体を俯瞰することで、計画や実行において一貫性を保つことができます。 

 

制約条件の把握

プロジェクト開始時点から、プロジェクトに必要な要件や制約条件を正確に把握しておくことが重要です。 

これにより、プロジェクトの進行や成果物の品質に影響を与える要素を事前に把握し、対策を計画することができます。 

 

変更への柔軟な対応 

プロジェクトにおいて後続の工程での変更や前工程への戻りが必要になる場合があるかもしれません。 そのような条件付きのポイントを特定し、変更に柔軟に対応することが求められます。 

変更の管理は、プロジェクトの計画と実行を円滑に進めるために重要な要素です。 

 

納期遵守 

CCPMでは、納期前か納期どおりにプロジェクトを完了することが最優先事項です。 

時間的な制約に焦点を当て、プロジェクトの成功基準として納期の遵守を重視します。 納期の遵守は、プロジェクトの信頼性や顧客満足度に直結します。 

 

チームワーク 

CCPMでは、チームメンバー間のコミュニケーションと協力が欠かせません。 

進捗状況の共有や問題の早期発見、リソースの調整などを円滑に行うために、コミュニケーションチャネルを確立し、チームワークを強化しましょう。 定期的なミーティングや進捗報告など、情報共有の仕組みを設けることも重要です。 

 

6. まとめ

いかがでしたでしょうか。初学者にとっては似ている単語が多々出現していて難しい内容でもあるかと思いますので、本記事の内容を以下にまとめました。 

 

CCPMとは、「クリティカルチェーン」を用い、バッファ(時間の余裕)の設定とリソースの効果的な割り当てを通じてプロジェクトの進捗とスケジュールを最適化する手法です。 

CCPMの手順として、以下尾5つのステップがあります。 

  1. プロジェクト全体工数を見積もる
  2. リソースの割り当て
  3. クリティカルパスの決定
  4. バッファの設定
  5. 進捗とコミュニケーションの管理

また、実施する上でのポイントとしては以下のものがあります。 

  • リソースの最適化 
  • 全プロセスの理解 
  • 制約条件の把握 
  • 変更への柔軟な対応 
  • 納期遵守 
  • チームワーク 

 

CCPMは、効果的に活用することで、プロジェクトの遅延やコスト超過を抑えるだけでなく、リソースの分配やリスク対応に有用です。 

是非本記事の手順やポイントなどを参考に、効果的にCCPMを活用してみましょう。 

 

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