皆さんは正直なところ、チームで仕事をするとき、チームメンバーが多ければ多いほど、かえってチームワークの効果は低くなるということを感じたことはありませんか?
チームメンバーが増えると、人が増えた分だけ期待通りに作業効率が良くなるわけではありません。作業過程において、予想外の問題が生じることもあるでしょう。
さらに、個人的な要素や社会的な要因が各メンバーに影響を与えるため、当初掲げたチームの目標が妨げられることもあります。
この現象の原因の一つに、リンゲルマン効果という現象があります。
本記事では、リンゲルマン効果について理解し、その効果を最小限に抑え生産性の低下を防ぐための対策を解説します。
1. リンゲルマン効果とは何か?
リンゲルマン効果とは、
複数人で共同作業を行う場合に、一人あたりの貢献度が低下する現象
です。
つまり、人数が多ければ多いほど、個人の貢献度が低下してしまい、全体の生産性が悪化する可能性があるということです。
また、リンゲルマン効果によって発生する「社会的手抜き」とは、個人が他者がやってくれると期待して自分自身の責務や義務を怠ることを指します。
具体的には、
自分自身の役割や責務を他人に任せてしまうことや、社会的な問題に対して他人に責任を負わせること
が含まれます。
ビジネスにおいては、チームや組織の規模が大きくなるほど、個人の貢献度が低下しやすいため、チームマネジャーやリーダーはリンゲルマン効果に注意し、効果的なチームワークを促進することが求められます。
2. リンゲルマン効果と傍観者効果の違い
リンゲルマン効果に類似した言葉として、傍観者効果があります。
傍観者効果とは、他者を助けるべき状況に直面した際、周囲に多くの人がいると、自分自身が何もしなくても他の人が対応するだろうという考えが生まれ、自分自身が援助をすることが抑制される現象のことです。
具体例として、会議などでの意見の提出などが挙げられます。多くの人がいる場で自分だけが意見を言うと、周りからの反応や評価が気になり、自分自身が発言を控えたり、他の人が発言するのを待っていたりする状況に陥ることがあります。
このような傍観者効果は、チームで仕事を行う上で問題となることがあります。
例えば、緊急事態が発生した際に、誰もが他者に対して待機状態に陥り、現場に対応することができない場合があります。このため、ビジネスにおいては、チームワークを養い、役割分担を明確にするなどの取り組みが必要です。
3. リンゲルマン効果が発生する原因
本章では、具体的にリンゲルマン効果を発生させている主な原因4つを解説していきます。
当事者意識、責任感の低下
リンゲルマン効果は、個人が自身の役割や責任に対する当事者意識を持たず、貢献意欲を低下させることから生じます。理想的には、自分の貢献が集団全体に与える影響を理解し、責任感を持ち自分の担当領域の業務を全うすることが重要です。
しかし、プロジェクトでの役割や担当領域が曖昧である場合、「誰かが代わりにやってくれるだろう」または「自分がやらなくても責任を追及されることは無いだろう」という思考がリンゲルマン効果を引き起こす可能性が高まります。この結果、プロジェクト全体の成果に対する貢献意欲が低下し、リンゲルマン効果が発生します。
さらに、これによりプロジェクトが完了した後に、リーダーが適切にメンバーを評価し、その後の改善を促すことも難しくなるため、以降のプロジェクトでも同様にリンゲルマン効果が繰り返し発生する恐れがあります。
メンバーがそれぞれ当事者意識を持つためには、役割と責任の明確化が重要です。各メンバーが自身の貢献と責任を理解し、当事者意識を持つよう促進しましょう。
集団による同調行動
リンゲルマン効果は、集団内での同調行動によっても引き起こされます。集団全体のモチベーションが低い場合やモチベーションの低いメンバーを放置したままにした場合、他のメンバーも徐々にモチベーションが低下し、貢献意欲が減少します。
特に、個人の成果や努力が適切に評価されない状況では、負の同調行動が顕著に現れます。チーム全体が低いモチベーションでプロジェクトに取り組む場合、個人が高いモチベーションを維持することは難しくなり、チームの目標や個人の成果に対しコミットする意欲が減少するでしょう。
この問題を克服するためには、リーダーは積極的にメンバーへのモチベーション管理を行い、チーム内でのお互いへの協力を促進するためのコミュニケーションが不可欠です。リーダーはチームのモチベーションを高め、個人の貢献を評価する文化を醸成する役割を果たすことが理想でしょう。
また、透明性のある目標設定や評価システムを導入することで、個人の貢献が明確に認識され、メンバー同士の負の同調行動を防ぐことができます。
不適切な評価による貢献意欲の低下
個人の貢献が報酬や昇進に反映されない評価システムは、リンゲルマン効果を引き起こす要因です。
特に、優れた成果を上げても、評価基準が曖昧で成果に対する報酬や昇進の差がほとんどない場合、個人は「努力しても報われない」「評価が不公平だ」と感じ、貢献意欲が低下します。逆に、公正に貢献度が反映される評価システムは、個人のモチベーションを高め、チーム全体の成果に寄与します。
また、リーダーは適切にメンバーを評価していると感じていても、メンバーが「自身の成果が報酬や昇進にどのように影響するのか」といった評価の基準や構造を把握できない場合、不適切な評価だと感じる恐れがあります。
このように、評価構造の透明性が不足していると、各メンバーは自身の成果や努力以外の偏った評価や人間関係に基づいた評価が行われているのではないかと、不安や疑念が生じます。
リーダーは、評価システムを正しく検討し、各メンバーの貢献度が明確に評価されるように設計する必要があります。成果に応じた報酬や昇進の仕組みを整え、個人が努力し、貢献する意欲を刺激することが重要です。
加えて、透明性のある評価プロセスを確立し、公平な評価を行うことも必要です。
チームメンバー間のコミュニケーション不足
コミュニケーション不足はリンゲルマン効果の原因の一つとなり得ます。特に、チーム内で十分な情報共有やコミュニケーションが行われない場合、各メンバーのチームに対する帰属意識が薄れ、チームの心理的安全性が低下します。
これにより、メンバーの貢献意欲が低下し、リンゲルマン効果が生じる可能性が高まります。
コミュニケーションの不足を防ぐためには、チームは効果的なコミュニケーションツールやプロセスを導入し、情報の透明性を確保する必要があります。特に、リモートワークが増える現代では、適切なコミュニケーションプラットフォームを活用し、チームメンバー間のコミュニケーションを促進することが不可欠です。
加えて、日頃からリーダーが自らメンバーに話しかけるなど、お手本として積極的なコミュニケーションの姿勢をチーム内で見せることで、オープンで透明性のあるコミュニケーション文化を醸成することも重要です。
4. リンゲルマン効果が発生しやすい企業の特徴
一人ひとりの裁量権が少ない企業
一人ひとりの従業員に裁量権がほとんど与えられていない企業では、リンゲルマン効果が発生しやすい傾向があります。 これは、チーム内でタスクや責任領域が十分に明確化されていない場合によく見られます。
あるプロジェクトにおいて、各従業員の役割や責任が定義されていない場合、自分が何をすべきかを明確に把握できず、貢献度を評価されにくい状況になります。この不透明さは、従業員が自分の業務に対する責任を感じにくくし、他のメンバーがどのように貢献しているのかを把握しにくいため、リンゲルマン効果の発生につながります。
具体的な例として、プロジェクトマネージャーがすべての裁量権や決定権を持っているのにかかわらず、プロジェクトの進行を十分にコントロールできず、タスクが重複したり、漏れたりする場合が挙げられます。
このような状況では、従業員は自分の役割や貢献度が不明確であるため、努力や貢献をする意欲が低下し、結果的にリンゲルマン効果が発生します。
テレワークなどによりコミュニケーションロスが多い企業
テレワークや分散した作業環境において、円滑なコミュニケーションを取る事が難しい場合、リンゲルマン効果が発生しやすくなります。これは、従業員がリーダーやチームメンバーとの実際の対面が減少し、情報の透明性が低下するためです。
テレワークの増加に伴い、従業員同士の対話や情報共有がリモートで行われることが一般的になりました。これにより、従業員同士のコミュニケーションが不足すると、自分が直接的に他のメンバーやチームに貢献しているという実感が薄れ、結果として手抜きが生じ、リンゲルマン効果が浮上します。
例えば、チームメンバーが異なる地理的な場所から仕事を行う場合、対面でのコミュニケーションが制限されることがあります。これにより、情報の共有や問題の共有が難しくなり、リーダーや管理職が各メンバーの貢献を適切に評価するのが難しくなる可能性が高まります。
評価制度が整っていない企業
評価制度が整っていない企業では、リンゲルマン効果が発生しやすくなります。評価制度が整っていないと、従業員は自分の貢献度が適切に評価されないと感じる可能性が高まります。特に、成果や努力に対する報酬や昇進の仕組みが不透明で、公平性が欠けている場合、従業員は「努力しても報われない」「評価が不公平だ」と感じ、貢献意欲が低下します。
逆に、貢献度が反映される評価制度は、個人のモチベーションを高め、チーム全体の成果に寄与します。
また、報酬や昇進が、個人の努力や成果の大小に関わらずメンバー全員に同じように与えられる場合、優秀なメンバーにとってはモチベーションが低下し、不満が生じることがあります。
5. リンゲルマン効果がチームに与える影響
他メンバーの負荷過多
リンゲルマン効果により、チーム内で手抜きをするメンバーが発生したり、一人当たりの生産性が低下したりする事で、結果的に想定していた量以上の仕事が増えてしまう可能性があります。
例えば、チームでのプロジェクトにおいて、メンバーの一人が自分の仕事を他のメンバーに押し付けて自分は手を抜くような行動を取る場合、そのメンバーの仕事量が減る一方で、他のメンバーの仕事量が増えることになります。
最悪の場合、業務を押し付けられたメンバーが業務を完了できず、プロジェクトの進行に遅れが出る可能性もあります。
他メンバーのモチベーション低下
リンゲルマン効果が発生した場合、一部のチームメンバーが手抜きをしても、全体の成果に対する評価が均等になってしまうため、頑張っているメンバーたちのモチベーションが低下してしまうことがあります。
例えば、プロジェクトの成功に必要な成果が達成された場合、その功績を手抜きをしたメンバーと同じ評価や報酬として受け取ってしまうことになり、頑張っていたメンバーたちの不満や不公平感が高まることが考えられます。
これにより、チーム全体のモチベーションが下がり、今後の業務に影響を与える可能性があります。
チーム全体のパフォーマンス低下
リンゲルマン効果によって、一部のチームメンバーが手抜きをしている状況が生まれると、全体的な生産性が低下する可能性があります。
手抜きをするメンバーがいると、その人たちに割り当てられたタスクが他のメンバーに回ってきます。その結果、他のメンバーの負荷が増大し、それによって生産性が低下してしまうことがあります。
例えば、あるチームがプロジェクトを進める際に、一人のメンバーが手抜きをしている場合を考えてみましょう。そのメンバーが担当していたタスクが他のメンバーに回ってくるため、他のメンバーの負荷が増大してしまいます。
手抜きをしているメンバーの仕事が完了しないため、全体のスケジュールが遅れる可能性もあります。
6. リンゲルマン効果を防ぐための対策
タスクの分割や役割分担
チームメンバーの負担を減らすためには、タスクを分割したり、役割分担をしたりすることが重要です。
この方法を取ることで、メンバー間の負担が均等になり、リンゲルマン効果を引き起こすリスクが低くなります。プロジェクト管理者が、各メンバーに担当箇所を割り当てることで、タスクの均等分担が可能になります。
例えば、営業チームが新規顧客開拓を目的とした営業活動を行う場合、チームメンバーごとにターゲットとなる顧客を割り当てることができます。
また、営業プロセスを段階的に分割し、各メンバーが担当するプロセスを決めることも有効です。これによって、各メンバーが自分の役割を明確に把握し、作業の重複や漏れを防止することができます。
さらに、各メンバーが互いの進捗状況を共有することで、全体的な進捗状況を把握することもできます。
このようにタスクの分割や役割分担をすることで、各メンバーに適したタスクを担当させることができ、生産性が向上すると同時に、リンゲルマン効果を引き起こすリスクが低くなるという利点があります。
さらに詳しく役割分担の効果や方法について理解を深めたい方はぜひこちらの記事もご参照ください。
コミュニケーションの改善
リンゲルマン効果を引き起こす主な原因の一つは、コミュニケーション不足にあります。
そのため、チームメンバー間でのコミュニケーションを活発化することが大切です。定期的にミーティングを行ったり、プロジェクト進捗の共有を促したりすることで、メンバー間の情報共有がスムーズに行えるようになります。
例えば、プロジェクト進行中のチームメンバーが、各自が作業している進捗状況を共有するために、週に一回ミーティングを行うことが対策に挙げられます。
ミーティングでは、各メンバーが自分が担当している作業の進捗状況や課題点、今後の予定などを発表し、他のメンバーと共有します。
このようなミーティングを通じて、チームメンバー間での情報共有がスムーズになり、作業の重複や漏れを防ぎ、プロジェクト全体の進捗状況を把握することができます。
また、コミュニケーション不足によるミスやノイズを減らすことで、メンバーのストレスや不満を軽減し、リンゲルマン効果の発生を防ぐことができます。
フィードバックの活用
フィードバックによって、課題や問題点を特定し、改善策を検討することができます。また、メンバー間の意見交換が促進され、チーム全体のコミュニケーションも改善されます。
フィードバックは、定期的な個人面談や360度フィードバックなど、様々な方法で行うことができます。
例えば、プロジェクトの進捗状況や成果物の品質など、特定の課題についてフィードバックを取り入れることができます。
進捗状況に関するフィードバックでは、各メンバーの進捗状況や遅延しているタスクを確認し、必要に応じてスケジュールの見直しを行います。成果物の品質に関するフィードバックでは、他のメンバーが作成した成果物に対して評価を行い、改善点を指摘することで、全体的な品質向上に繋がります。
また、フィードバックを通じて、メンバーの強みや課題を把握し、役割分担を見直すこともできます。
より効果的なフィードバックについて興味がある方はぜひこちらの記事もご覧ください。
7. まとめ
リンゲルマン効果について、ご理解いただけたでしょうか。
最後に本記事のポイントを以下にまとめました。
- リンゲルマン効果:共同作業での個人の貢献が低下する現象
- 傍観者効果:周囲に他人がいると自分の行動の積極性が減少する現象
リンゲルマン効果の原因として
- 当事者意識の低下
- 集団による同調行動
- 不適切な評価
- コミュニケーション不足
が挙げられます。
リンゲルマン効果を防ぐポイントとして、
- タスクの分割や役割分担
- コミュニケーションの改善
- フィードバックの活用
が重要です。
以上の点を見直すことで、是非リンゲルマン効果を防ぎ、チームワークを実現してみましょう。
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