タレントマネジメントの目的と定義とは?事例集をもとに人材育成に活かす方法や注意点を徹底解説

相乗効果

タレントマネジメントの目的と定義とは?事例集をもとに人材育成に活かす方法や注意点を徹底解説

アメリカのマッキンゼーアンド・カンパニーが言及したタレントマネジメントは、ビジネスパーソンの成長や、企業の目標達成には欠かせないマネジメント方法のひとつです。

今回は、タレントマネジメントの定義や具体的な活用事例を紹介し、組織の成長に活かす方法について考察していきます。

【この記事のポイント】

  • タレントマネジメントの定義や目的を理解できる
  • タレントマネジメントの効果や事例を知れる
  • タレントマネジメントのメリットとデメリットを理解できる
  • タレントマネジメントに必要なツールや管理方法など具体的な情報が入手できる

 

1. タレントマネジメントとは?簡単に解説|一般的な人材マネジメントとの違い

タレントマネジメントを導入する前に、まずは「タレントマネジメントの定義」を理解しておきましょう。定義や一般的な人材マネジメントとの違いを理解しないまま、漠然とタレントマネジメントを導入すると失敗に終わる確率も高くなります。

タレントマネジメントのやり方を間違うと、最終的には企業の成長をも左右してしまうかもしれません。

 

タレントマネジメントの概要

タレントマネジメントは、社員のスキルと潜在能力を最大限に活かすための人事戦略のひとつです。組織の業績向上や戦略的目標達成には、優秀な人材つまり「タレント」が必要です。

タレントマネジメントとは、従業員に企業の成長に必要なスキルを習得させ、成長した人材を適材適所に配置するマネジメント方法ともいえます。

タレントマネジメントについては、立命館大学経営学研究科 守屋教授が執筆したタレントマネジメント論(Talent Managements)に関する一考察に、定義や考察がわかりやすく解説されています。

下記は、その要約です。

 

【立命館大学‗守屋 貴司教授著「タレントマネジメント論(Talent Managements)に関する一考察より】

  • タレントマネジメントとは、優秀なタレント(才能)を有する人材の採用を育成し、適材適所に配置するマネジメント方法である
  • 日本企業でありがちな人的資源管理論では「平等主義」が重んじられるが、タレントマネジメント論では、優秀な人材の「選別化」や「細分化」を強調している
  • 組織の持続的かつ競争的な優位性を獲得するためには、戦略的タレントマネジメントは重要な活動である
  • 日本企業では成果主義人事制度が導入されつつあるが、未だ年功序列的、長期雇用の慣行が根強い。そのため、日本企業では自社が育成した優秀で高度な人材が流出する危機感が低い、従業員側も年功序列的な雇用観光から競争意識が薄れ成長が遅れるケースが多々見られる

優先順位をつける画像

 

タレントマネジメントと人材マネジメントの違い

タレントマネジメントとよく似た人材管理方法に、一般的な人材マネジメントがあります。それぞれ似た部分もありますが、タレントマネジメントと人材マネジメントは対象とする人材やアプローチ方法が異なります。

 

人材マネジメントの対象は、従業員全体であることがほとんどです。人材マネジメントは、企業の成長というよりは組織運営をスムーズにすすめることを目的としています。

一方、タレントマネジメントは高い潜在能力を持つ特定の従業員を対象とします。企業の成長戦略に欠かせないリーダーやキーパーソンを育成し、最終的には経営目標を達成することに重点を置いているのが特徴です。

タレントマネジメントは「組織の成長を成し遂げるための投資」としての意味合いが強いマネジメント方法といえるでしょう。

 

2. タレントマネジメントを導入する目的

タレントマネジメントを導入する目的は、次の2点です。

  • 優秀な人材による経営目標の達成
  • 優秀な人材の育成や定着

タレントマネジメントの導入目的は、単に優秀な人材を管理して適材適所に配置することだけではありません。優秀な人材が組織内で最大限のパフォーマンスを発揮できる環境や支援体制を築くことが重要です。

 

優秀な人材による経営目標の達成

タレントマネジメントを導入するひとつ目の目的は「優秀な人材による経営目標の達成」です。

【引用:日本労務学会誌 戦略的タレントマネジメントが機能する条件とメカニズムの解明―外資系企業と日本企業の比較事例研究―

 

TM(タレントマネジメント) は、マッキンゼー社のウォー・フォー・タレント(Waror Talent)という有能な人材の獲得こそが企業の競争優位に直結するという概念(Michaels,Handfield-Jones and Axelrod, 2001)によって実務上重視されるようになった

経営目標の達成には、タレントマネジメントが不可欠です。企業の成長戦略を成し遂げるためには、組織のニーズとタレント能力とのマッチングが必要となります。優秀な人材を戦略的に配置すれば、組織目標と個人スキルがシナジー効果を生み、結果として経営目標の達成につながります。

 

優秀な人材の育成や定着

ふたつ目の目的は、優秀な人材を育成し定着させることです。

 

中長期的に企業の成長を継続していくには、組織に長期的に貢献できる人材が必要不可欠です。優秀なスキルを身につけたのにも関わらず、成長した段階で他社に転職していくようでは、企業の長期的な成長は望めません。

組織の目標達成に向けて長期的な貢献をしてもらうには、個々のキャリアパスを明確にし、成長を促す環境を提供する支援体制も必要です。

定期的なフィードバックや専門的な研修、メンタリングプログラムなどを提供し、組織目標の達成に貢献するよう深い動機付けも必要になってくるでしょう。

タレントの育成と定着は、組織の知識とスキルの基盤を強化し、競争優位性を維持するための戦略的な取り組みといえます。

にこやかに話し合う上司と部下の画像

2. タレントマネジメントを導入することによる効果

タレントマネジメントの導入効果は、おもに次のつです。

  • 戦略的な人材配置
  • 従業員エンゲージメントの向上
  • 企業業績への寄与
  • 定着率向上やキャリアパスの明確化
  • リーダーやマネジメント層の育成

高いスキルを持った優秀な人材を適材適所に配置すれば、従業員の成長と共に組織全体のパフォーマンスもアップします。また、個人が成長することで企業業績に貢献できれば、成果は給与などにも反映され、従業員のモチベーションもあがるでしょう。

これらのプラス要素がうまく循環すれば、結果として定着率も上がり、知識やノウハウなどナレッジの共有も可能になります。

 

戦略的な人材配置

タレントマネジメント導入の最大の効果は「戦略的な人材配置ができる点」でしょう。

タレントマネジメントを導入すれば、年齢や経験などの基本的な人事データだけではなく、従業員のスキルやパフォーマンスデータ、そして能力評価結果を一元化できるようになります。

パーソナルデータと、組織が目指す方向性そしてビジネスニーズをかけ合わせることで、個々の能力を最大限活かせる部署に配置できるでしょう。戦略的な人材配置ができると、結果として組織全体の業績向上に直接的な影響を与えるのです。

 

従業員エンゲージメントの向上

タレントマネジメントは、従業員のエンゲージメント向上にも大きく寄与します。

タレントマネジメントには、能力開発や公平で透明性のある評価基準が不可欠です。納得感がある評価制度を確立できれば、従業員は仕事に対する貢献度が正当に評価されると感じ、エンゲージメントは上がるでしょう。エンゲージメントが高い従業員は、創造性と生産性が向上し、組織全体の目標達成にも寄与します。

事実、厚生労働省の資料「労働経済の分析」では、企業が従業員の能力開発に注力すれば、従業員のモチベーションは各段に上がると証明されています。

厚生労働省資料「労働経済の分析」より企業の能力開発に対する評価別にみた仕事に対するモチベーション】

 

企業業績への寄与

タレントマネジメントは、従業員の能力を最大限に活用し、組織全体の業績向上に直接的に寄与します。

タレントマネジメントによって強化されたチームは、市場の変化に迅速に対応し、新しい機会を捉える能力が高まります。これにより、企業は持続可能な成長を達成し、競争力を維持することができるのです。

消費者庁の公式資料「消費者志向経営と従業員エンゲージメント」によると、エンゲージメントが高い企業は、低い企業と比較し収益面でも約2倍の差があることが証明されています。

 

定着率向上やキャリアパスの明確化

中長期的に従業員を支援する体制を確立できれば、従業員の定着率が向上し、結果として組織も安定するでしょう。

タレントマネジメントでは、明確なキャリアパスの提供が不可欠です。組織内でのキャリアパスが明確であれば、職場への満足度と忠誠心が高まります。離職率が下がれば、組織にとっては人材維持ができるようになり、採用や育成費用のコストもおさえられます。

 

リーダーやマネジメント層の育成

優秀層を支援するタレントマネジメントは、組織の未来を担うリーダーやマネジメント層の育成にも寄与します。

早期に潜在能力を持つ人材を発見し、適切な研修プログラムやメンター制度などを導入すれば、将来の幹部を担う時期リーダー層を確保することもできるでしょう

タレントマネジメントは、戦略的な人材配置やエンゲージメントの向上、企業業績向上やリーダーシップの育成といったメリットがあるマネジメント手法です。これらの要素は相互に関連し合い、組織の持続可能な成長と成功を支える基盤となります。

 

3. タレントマネジメントを導入することによるデメリット

タレントマネジメントシステムの導入は、企業にとって多くの利点をもたらす一方、いくつかのデメリットもあります。

もっとも顕著なデメリットは「コストと長期的管理の必要性」です。

タレントマネジメントは財務的な負担だけでなく、組織運営にも大きな影響を及ぼすことがあるため、導入には慎重な検討が求められます。

 

専用ツールの導入と初期投資コストがかかる

タレントマネジメントシステムを導入する際には、HRシステム(※人事管理システムのこと)の導入などの費用がかかります。

単なる人材管理だけではなく、個々のスキルや能力評価、将来のキャリアパスなどの情報を一元管理し企業戦略に沿った配置をするには、専用のシステムが必要です。

 

ちなみにHRシステムには「クラウド型」と「オンプレミス型」があります。クラウド型はソフトそのものではなく専用ツールのライセンスを購入するため、初期費用は安いですがランニングコストが発生します。企業規模にもよりますが、初期コストは0万円~50万円程度と低めで、月額費用は3~10万円程度かかるケースやライセンスごとに300円~500円程度課金されるタイプもあります。

オンプレミス型の場合は、契約方法によってはランニングコストは不要で、初期コストが100万円程度必要になるかもしれません。

 

いずれにしても、専用ツールの導入は短期的な利益を求めるのではなく、長期的な投資として捉え、計画的に進める必要があります。

お金

 

人材リリースの配分に不均衡が生じる

タレントマネジメントのやり方によって発生する「人材リソース配分の不均衡」もデメリットのひとつです。

タレントマネジメントは全従業員のパフォーマンスを管理する一方で、企業戦略に応じて抜擢する人材は特定されてしまいます。そのため、一部の優秀社員にだけ注目が集まってしまい、そのほかの従業員は疎外感を感じることがあります。

 

日本経済新聞社とNTTコム オンライン・マーケティング・ソリューションのNTTコムリサーチが共同で実施した人事評価に関する意識調査によると、評価制度に不満を感じているビジネスパーソンは4割弱

「評価者の好き嫌いで評価される」(38.7%)、「評価者が直属の上司しかおらず、評価が一面的」(24.9%)も理由にあげた人が多かった。75.0%の人が課長・部長クラスの直属の上司が評価を決めていて、上司との相性が評価を左右することに不公平感があるようだ。

 

【引用:日本経済新聞「人事評価に「不満」4割日経など意識調査 「基準曖昧」で不公平感

 

「自分は頑張っているのに評価されない」

といった感情はモチベーションダウンを招き、組織全体の士気に影響を与える可能性があります。

ただ、全従業員の希望のキャリアを実現するのは不可能です。ある程度の不均衡が出る点は想定したうえで、全従業員が適切なサポートを受けられるようにすることが重要です。

 

長期的な人材マネジメントが求められる

タレントマネジメントはその本質上、長期的な人材マネジメントが求められます。

短期的な成果を重視する組織も多いですが、タレントマネジメントは中長期的なキャリアサポートが必要になるため、最低でも3年、長ければ5~10年のスパンで管理していかなくてはいけません。短期的な成果を求める組織文化と、タレントマネジメントの長期的な目標との間に生じるギャップは、企業によっては大きな障壁となるでしょう。

組織が長期的なビジョンや戦略を持たずにタレントマネジメントを導入すると、中途半端に終わるリスクがあります。タレントマネジメントを推進する場合は、組織の長期的な目標と人材育成方法を一致させ、組織文化に根付かせる必要があります

 

適切な評価やフィードバックが難しい

タレントマネジメントにおけるもう一つのデメリットは「評価基準の設定と公平なフィードバックの提供が難しい」点にあります。

人事評価は、できるだけ定量的で、かつ主観を取り除く必要があります。しかし、実際の現場では上司の偏見や主観が評価に影響を与えるケースも多いでしょう。また、中長期的に人材育成をしていくうえでは、上司のフィードバックスキルを身につける必要もあります。定期的な1on1面談や評価面談を通じ、部下の成長度合いや将来のキャリアに向けて適切なフィードバックができると、従業員のモチベーションも上がり成長が期待できます。

 

一方で、フィードバックのタイミングが遅かったり、部下の自立性を損なうような高圧的なフィードバックをしてしまうと、タレントマネジメントは成功しません。タレントマネジメントの成功には、評価とフィードバックプロセスの透明性と公正性が必要です。

 

4. 具体的なタレントマネジメントの実践方法

タレントマネジメントを具体的に実践していくには、つぎのステップを踏むといいでしょう。

  1. タレントの識別と育成
  2. フィードバック体制の構築
  3. キャリアパスの設計
  4. サクセッションプランニングとエンゲージメント強化

 

タレントの識別と育成

タレントマネジメントの最初のステップは「タレントマッピング」、つまり組織内のタレントを特定し個々のスキルや能力を明確にマッピングすることです。

タレントマッピングでは、企業の将来的な戦略を明確にしたうえで人材ニーズを定義し、将来戦略と個々の能力とのギャップを埋めていく取り組みが求められます。

タレントマッピングで個々のギャップが明確になれば、それに基づいた教育プログラムを導入していくといいでしょう。タレントを正確に識別したあとは、個々の能力を最大限に引き出すための長期的なサポートが必要です。

カテゴライズ

 

フィードバック体制の構築

タレントマッピングができたら、つぎにフィードバック体制の構築に進みましょう。

効果的なタレントマネジメントには、公正な評価基準と効果的なフィードバック体制の構築が欠かせません。定期的な1on1の面談やパフォーマンスレビューを通じて、従業員の進捗や課題を共有し、従業員のモチベーションを維持しながら能力向上をサポートしていきましょう。

具体的には、1年間の面談スケジュールを事前に決めておくことや、人事部が各部署のフィードバック状況をきめ細やかに管理していくことが求められます。

また、納得感のあるフィードバックをしていくには、公正かつ実現可能な評価基準を設定することも重要です。

 

フィードバックの具体的な方法についてはこちらの記事をご一読ください。

【実践】ビジネスにおけるフィードバックとは?具体的な方法とコツを紹介

 

キャリアパスの設計

つぎに、従業員が自らのキャリアを積極的にデザインし、組織の成功と共に成長できるように個別のキャリアパス設計をしていきましょう。

組織のビジョンに合致したキャリアの成長をサポートしていくことで、個々のキャリアの成長をサポートします。希望のキャリアが実現できるよう、専門の教育プログラムを提供する方法も効果的かもしれません。

これにより、従業員は自己実現を図りながら、組織の目標達成にも貢献することができます。

 

サクセッションプランニングとエンゲージメント強化

個々のスキルや企業戦略に沿ったキャリアパスが明確になったら、つぎにサクセッションプランニングを行うようにしましょう。

サクセッションプランニングとは、

将来の経営幹部を担うような重要人材を特定し、育成やサポートをしていくプロセスのこと

です。

ただし、優秀人材は優秀であるゆえに他社に流出してしまうリスクがあります。したがって、組織の持続的な成功を実現させるためには「サクセッションプランニング」と「エンゲージメント強化」の両立が必要です。

 

育成すべき社員には重要なポジションを与えつつ、経営幹部とのコミュニケーションや連携を強化する取り組みも必要になってくるでしょう。例えば、定期的に経営層とメンバー層が意見交換できるミーティングを設定したり、従業員アンケートなどを通じて経営陣に直接意見を伝えられる機会を設けたりすると効果的です。

 

5. タレントマネジメントの事例集|成功と失敗から学ぶポイント

自組織でのタレントマネジメントを成功させるには、他社事例を参考にするといいでしょう。

今回は、グローバル戦略においてタレントマネジメントに成功した企業や、ダイバーシティの実現においてタレントマネジメントを活用した企業の事例を詳しく紹介します。

 

企業戦略に沿った幹部候補生の育成に成功|味の素株式会社

ひとつ目の事例は、幹部候補生の登用条件などを明確に定め、優秀な人材を適材適所に配置できた味の素のケースです。

味の素は、2014年~2016年の中期経営計画において「2020年に世界の食品メーカーのトップ10に入る」ことを経営目標として掲げていました。味の素のタレントマネジメントでは、人を起点とした「適財適所」ではなく、戦略や職務を起点とした「適所適財」という言葉を使います。そして、企業戦略の実現に必要な人財の条件を社内で見える化し、幹部候補生を300名抜擢する計画を遂行しました。

具体的には、戦略上鍵となるポジションに必要な職務記述書を作成し、全基幹職に公開。ポジションの詳細と従業員の目標を明確化させ、個々のスキル向上に役立つ仕組みを確立させました。

 

タレントマネジメントの施策導入当初は「優秀な人材は言われなくても管理できている」などの反発もあったようです。しかし、人事部が粘り強く説明会を20回以上も実施し、制度改定の主旨を従業員に伝達するなどきめ細やかな管理を徹底していきました。その成果もあり、タレントマネジメントへの理解度は向上しました。

結果、幹部候補生の育成プログラム「味の素グループリーダーシップ研修」の受講者は、研修受講の数年後に約 7 割が昇進や昇格を果たしており、基幹人財の計画的な育成に成功しています。

 

ダイバーシティ戦略に沿ったタレントマネジメントで女性管理職比率向上に成功|株式会社LIXIL

ふたつ目の事例は、ダイバーシティ戦略に沿ったタレントマネジメントを実践し、女性管理職比率の向上に成功した株式会社 LIXILの事例です。

株式会社 LIXILは、2014 年に女性の活躍推進を加速するアクションプランとして「WeDo アクション」を策定しました。具体的には、管理職登用者の女性比率を30%以上、新卒採用者の女性比率30%以上、リーダー育成プログラム参加者の女性比率20%以上とし、会社や社員双方にとってストレッチを必要とする目標としました。

ダイバーシティ戦略に沿ってタレントマネジメントを浸透させるため、人と組織について議論するCEOが参加する会議体を活用し、女性管理職候補者の発掘にも努めています。

 

また、中長期的に女性社員を育成するため、妊娠から職場復帰までの面談スケジュールを具体的に決め、手厚いサポートが行われています。

その結果、2012年時点での0.2%しかなかった女性管理職比率が2018年時点では6.1%まで向上。さらに、新卒の女性採用比率は5年連続で30%以上。リーダーシップ育成プログラムへの女性参加率は5年連続20%以上となり、ダイバーシティ戦略に沿ったタレントマネジメントの成果が現れています。

ビル群

 

6. タレントマネジメント導入に必要なツールや管理方法

タレントマネジメントを成功させるためには、専用のHRシステムの導入や管理が必要です。

コストがかかる点には注意が必要ですが、人材の識別から育成・評価に至るまでの一連のプロセスを効率的に行うには、専用ツールの導入をぜひ検討してみましょう。

 

専用の人材マネジメントツールとシステムの導入

タレントマネジメントを効率よく運営していくには、次のような人材マネジメントツールなどの導入が必要です。

  • タレントマネジメントソフトウェア……タレントの識別、育成、評価、配置等のタスクをサポートする専用のソフトウェア
  • HRシステム……個人の業績データやキャリアなどの情報を一元管理するシステム

例えば、タレントマネジメントに活用できる「カオナビ」には、次のような機能が備わっています。

機能効果
スキル管理保有資格分布やスキルマップ、資格取得状況推移などの管理ができる
人材配置シミュレーション異動候補者リストの作成やキャリア分析機能。また人材配置をした場合の人件費などの管理ができる
離職率低下、定着率向上退職者傾向分析や労務負荷分析を行うことで、離職率を下げることができる。従業員満足度調査や面談記録でエンゲージメント向上が図れる

 

カオナビ公式サイトには、従来のExcel管理ではできない総合的な人材管理を実現することで、個のスキルを適材部署で活用できた事例も紹介されています。

 

人事評価制度の刷新などを検討

中長期的な人材サポートを続けていくには、つぎのようなツール導入も効果的です。

  • 360度フィードバックツール……同僚や上司、部下からの多角的な評価を取り入れるためのツール
  • 人事評価サポートツール……評価シートの作成や集計を通じて人事管理を最適化できるツール

360度評価をするなら、リクルートが提供している「360度評価システム | MOA」などのツールもおすすめです。

 

「360度評価システム | MOA」は、部下が上司を客観的に評価したり、同じグレードの他部署のスタッフなどからの評価を受けたりすることで、個々の社員の「気づき」のサポートが可能になります。グレード別で世間一般の平均的なレベルとの比較もできるため、自組織の課題も見つけやすくなります。

 

「HRbrain」は、人事評価をクラウド管理できる人事評価サポートツールです。人事評価にかかる業務を一元化でき、進捗管理や未提出者への催促も簡単にできるため、ストレスなく中期的な人事管理サポートが可能です。

 

スキルとキャリア開発の支援ツールの導入

従業員のスキルとキャリア開発のための専用支援ツールの導入も効果的です。

例えば、次のようなツールがあります。

  • e-ラーニングプラットフォーム……オンラインでスキルや知識を学ぶためのプラットフォーム
  • メンタリングプログラム……経験豊富な先輩や上司が後輩や部下の成長をサポートするプログラム

 

「GLOBIS学び放題」は、すでに3,300社以上に導入されているeラーニングプログラムです。

「GLOBIS学び放題」は、社員の育成目的に応じ、マーケティングや経営戦略など14のカテゴリに分かれた研修プログラムの利用が可能です。初期費用無料で、1IDあたり6ヵ月で約1万円のコストで利用できるため、比較的導入のハードルは低いツールといえます。

 

部下のきめ細やかなサポートを続けるには、MENTORING to GROWTH《オンライン版》のようなメンタリング支援ツールの導入も効果的です。

単なる雑談の時間になりがちなメンターとの面談も、専用ツールがあれば、話すべきことが明確になり有意義なメンタリングが可能になります。

専用ツールとzoomなどのオンラインツールを併用すれば、テレワーク中のメンタリングも円滑に進みます。専用アプリも提供されていますので、属人的なサポートから脱却し全体のサポート状況を一元管理したい人事担当者にもおすすめです。

デジタル化のイメージ画像

 

7. 今後のタレントマネジメントの将来性を考察

タレントマネジメントは、厳しい競争環境で企業が勝つためには必要不可欠な人材マネジメント手法といえます。

ただ、昨今のAIやビックデータの活用など、テクノロジーの変化によりタレントマネジメントのやり方も日々変わりつつあります。グローバル化や多様性への理解を踏まえた人材管理も必要になってくるでしょう。

最後に、今後のタレントマネジメントの将来性について考察します。

 

テクノロジーの進化とタレントマネジメント

AIとビッグデータの進化は、タレントマネジメントを根本から変えつつあります。

AIやビックデータを活用すれば、戦略に応じた人材配置も的確にシミュレーションできるでしょう。また、従業員のパフォーマンスやモチベーショントレンドも瞬時に察知できるようになり、的確なタイミングでのサポートも可能になります。

一方、リーダーやマネジメント層は、データ分析に割いていた時間を部下とのコミュニケーションに使えるようになります。

 

グローバル化と多様性への理解

グローバル化への対応や多様性への理解が求められる昨今、タレントマネジメントにおいても新しい視点が必要になってくるでしょう。

個人が持つ価値観を数値化したり、女性や外国人のキャリアサポートをしつつ適材適所に配置していくためには、経営層のタレントマネジメントへの覚悟も求められます。

グローバル化や多様性に対応するための取り組みを実践すれば、組織に新しい視点やスキルが組み込まれ、イノベーションが生まれます。異なる文化や価値観を持つ人材を効果的にマネジメントすることで組織内の多様性が高まり、広範囲な市場や顧客層への対応が可能となるでしょう。

 

8. まとめ

タレントマネジメントは、短期的ではなく中長期的な管理が必要で、専用ツールの導入などコストも必要になってきます。

経営層やマネジメント層が覚悟をもってタレントマネジメントを実践すれば、企業の業績に寄与できるのは間違いありません。

競争が激化する市場と働き方の変革が進むなか、タレントマネジメントも革新が必要です。定められた方法に固執するのではなく、時代の要請に応じて人材管理の手法を変更していく柔軟性も求められるでしょう。

 

 

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執筆者:嶋よしかず

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