近年、チームづくりや人間関係の構築において、相互理解の必要性が強調されるようになりました。
みなさんは相互理解が強調されるようになった背景と、職場における相互理解の意味をご存じでしょうか。
また、相互理解を深めるには具体的にどうすればいいのでしょうか。
本記事ではそのような皆様の相互理解に対する疑問や深め方を解説してまいります。
1. 相互理解とは
相互理解とは「お互いの考え、立場、価値観、発言の意図や目標などを理解し合う」ことです。
上司・部下・同僚だけでなく、取引先とのスムーズなコミュニケーションをするにも相互理解は重要になります。
ついつい自分の立場や思考で考えがちですが、相互理解を深めるコミュニケーションを意識することで、お互いの思考や立場の違いの尊重することができ、仕事の連携を円滑に進めることにもつながります。
またチーム全体が相互理解を促し、それぞれの強みを活かし、弱みを補完するマネジメントを行うことでチーム全体を強く活性化させていくことが可能になります。
相互理解が求められている背景
働き方の変化
パンデミックをきっかけに、出社が当たり前とされていた文化から、リモートワークやハイブリッドワークの働き方の上でいかに人間関係を構築するか、コミュニケーションを取れるかが問われています。
今後はオンラインを前提にした、新しい組織や人間関係の構築・維持方法について考える必要があります。
コミュニケーションの変化
働き方の変化に伴い、コミュニケーションの形も変化しています。
特にパンデミック以降は、オンライン上でのコミュニケーションの設計・管理に注目が高まっています。
具体的には、プラットフォームやツールを導入し、その中でプロジェクトやチームの目標達成に向けてコミュニケーションが十分に行われているかをモニタリングすることで、オンラインコミュニケーションの質の向上を図っています。
また、オンライン・オフライン関わらず、定期的な目標進捗を共有する仕組みや、必要な情報を社内共有して今後につなげる「ナレッジ共有・活用」の仕組みといったコミュニケーションの構造設計の重要性も高まっています。
ただし、共通の目標や課題を共有するためには、各メンバーが安心して発言できるような心理的安全性の高いチームを作る必要があります。
そのためには、お互いの状況や考え方を理解する相互理解が欠かせません。相互理解を深めることで、心理的安全性が高まり、チーム内の発言の質や量が向上することで、どんな形においてもコミュニケーションの質を高めることができます。
人材の多様化
日本の職場におけるダイバーシティの推進は、世界と比べて遅れているのが現状です。世界経済フォーラムが発表した2022年版ジェンダー・ギャップ指数ランキングでは、日本の順位は146か国中116位(前回は156か国中120位)でした。
先進国の中で最低レベル、アジア諸国と比較しても低い結果となりました。
しかし、近年では女性の管理職比率の向上や定年後再雇用制度をはじめとした、⼈種、国籍、年齢、性別、⽂化、障がいなどの様々なバックグラウンドを持つ人材の登用に注目が集まっており、職場やチーム内での人材の多様性が高まっています。
様々な立場や考え方を持つ人たちと共通の一つの目標を達成するには、まずお互いの状況や特質について理解を深めることが前提になります。
特に、日本は欧米のコミュニケーションと比較して「high-context culture(ハイコンテクスト文化)」だと表現されることが多くあります。
これは、言葉よりも、情報の共有、視覚的な情報などといった非言語的な行動に大きく依存するコミュニケーション文化のことを意味します。
母国以外の文化や、自分が所属したことのない業界の文化については、ルールや立場ごとに望まれている行動様式が曖昧で分かりづらく、仕事の場面で多くの問題に直面することがあります。
例えば、自分が担当するべき業務範囲はどこまでなのか、このプロジェクトのゴールはいつまでにどれくらいの完成度のものなのか、といった業務の割り当て範囲に関して、定義があいまいな場合が多くあります。
お互いの業務に対しどれくらいの期待値を抱いているのかを明確にするために、多様性のあるチームでは相互理解が必要になります。
多様性について理解を深めたい方、チームの多様性を活かす方法について知りたい方はこちらの記事をぜひご覧ください。
キャリアの自律化
年功序列や終身雇用といった従来の企業文化の崩壊に伴い、ジョブ型雇用や成果主義を導入する企業が増えてきています。また、雇用の流動性も高まり、転職を選ぶ際のハードルも低くなっています。
これらのことから、社員は自身の目指す将来や目標に向けて、企業に依存したキャリアではなく、自律的にキャリアを考え、自分で設定したゴールに対し価値を見出す重要性が増しています。
組織の中で自律的に働くには、「自分が何をしたいのか」いう自己理解だけでなく、組織・チーム・同僚や上司から自分が「何を求められているのか」の理解、さらには周囲から自分について理解してもらうことが必要になります。
マネジメントスタイルの変化
メンバーのエンゲージメントを高めるには、リーダーからメンバー一人ひとりに対する一方的な理解だけでなく、メンバーからのリーダーに対する理解を得る必要があります。
昔のいわゆる「昭和型マネジメント」というマネジメントでは、
・部下は上司の背中から自発的に学ぶべき
・残業・長時間労働は当たり前
・飲みニケーションは必要
・仕事はプライベートより優先すべき
という考え方が存在していました。
しかし、上記のようなトップダウンの「昭和型マネジメント」では、特に若手人材の思考と大きく乖離しているためモチベーション低下につながり、最悪の場合は離職してしまう可能性があります。
メンバーとリーダーの双方向の理解が無ければ、チームや組織としての方向性にズレが生じ、メンバーのモチベーションが下がるだけでなく、チーム全体の生産性も低下します。
ここで注意する点として、お互いが相手の立場になって考え歩み寄ることが前提になります。
相互に抱えている懸念を引き出せずにいると、目標の達成に時間がかかる恐れがあります。
これを防ぐためには、早い段階でお互いが自己開示をして擦り合わせていく「相互理解」を意識したコミュニケーションを設定する事がマネジメントにおいて重要になります。
2. 相互理解がもたらすメリット
報告・連絡・相談の活性化
いくら個人の数値目標が重視される職種でも一人で仕事を回すことは不可能です。
どのような業務でも必ずリーダーへの報告、メンバーへの共有、同僚からの助けが必要になります。
相互理解が深まると、信頼関係が構築され、報告・連絡・相談が活発になります。
上下関係にとらわれずメンバーはリーダーに相談しやすくなり、お互いのことを知っているため仕事で困った際には誰に相談をすればいいのか把握できます。
仕事関係の些細な悩みも相互理解が適切に行われていて、報連相が活発になれば解決することもあります。
また、報連相が活発な組織ほど無駄な時間や工数が削減され業務効率が高く、生産性も向上します。
さらに相互理解は密なコミュニケーションを促し話し合いや議論が活発になることで、
「お互いが何を考えているか」把握し「自分は理解されている」という安心感をもたらします。
仕事での不要なストレスも減りチーム全体のモチベーションアップにもつながります。
お互いをフォローし合う関係になる
チーム内で相互理解が深まることでお互いをフォローし合う関係性が生まれます。
お互いの強みや弱みを知っていることで、適切なタスクの分担が可能になり役割が明確化します。
お互いの仕事を補完し合う関係性から、各々が得意領域で仕事をすることで相乗効果を生みだす関係に発展させることができます
相手が不得意で自分が得意な業務は積極的に引き受け、相手も同様にすることで信頼関係を築くと共に生産効率も格段に上昇できるでしょう。
また信頼関係が生まれるとフラットに意見が言いやすい環境が構築され、より建設的な議論につながります。
同僚のみならず、リーダーとメンバーが相互理解を深める事で個性や強みを活かしたマネジメントが可能になります。
相互理解を深めることで、あらゆる場面でお互いをフォローし合う関係性へと発展できるでしょう。
3. 相互理解不足によるデメリット
プロジェクトの失敗
相互理解が不足しているとプロジェクトの失敗に繋がります。
周囲を巻き込んで何かに取り組むということは、相互理解に基づいた信頼関係が重要です。
他人を信頼していないと仕事を任せることも難しい上に、スムーズな意思疎通が行えないと、業務の配分ミスや進捗のずれが生じてしまいます。
また、プロジェクトメンバーの特性を理解せずに、プロジェクトを推進していくと依頼した仕事が適切に処理されず、適切な情報共有が行われません。
これは結果的に生産性を下げることになり、プロジェクトの失敗に繋がってしまいます。
仮に優秀な1人の社員によって一時的にプロジェクトを終わらせることができたとしても、メンバーの育成やナレッジの共有が行われず、長期的、持続的な組織の発展が難しくなります。
退職が相次ぐ
相互理解不足によるデメリットのひとつに退職が相次いでしまうことがあります。
相互理解が上手く行われていない職場では人間関係の悩みは解決されにくくなります。
なぜならお互いが何をやっているのかも分からず、仕事の相談する場が設けられていないため、「仕事を振ってくるリーダー」や「仕事を効率的に進められていないメンバー」などにマイナスの感情が蓄積していくことになります。
マイナスの感情が蓄積しコミュニケーションの齟齬が多くなってくると結果的に業務パフォーマンスが低下するという負の連鎖が続き、離職につながってしまいます。
4. 相互理解を深める方法
相互理解がいかに仕事において重要かを解説してきました。
次に、相互理解不足をどのように改善していけば良いか、具体的な施策をいくつかご紹介します。
相互理解を深め、チームの関係性を向上させていきましょう。
1on1ミーティング
1on1とは、リーダーとメンバーが1対1で行う対話のことです。
相互理解を目的とした1on1では「部下の成長のためである」ということを意識しましょう。
人事評価の面談とは異なり、メンバー自身の成長や現状に対する不満・相談のヒアリングの場であると明確に伝えることが重要です。
リーダー自ら自己開示し歩み寄りつつ、必要に応じて業務外のことにまで話を広げていくなど個人の距離感に応じて相互理解を進めていきましょう。
具体的に1on1で何を話せばいいか不安な方、効果的な1on1の仕方を知りたい方はぜひこちらのリンクを参照ください。
また弊社では、そういった「相手を深く知る」ためのアクション資料をご用意しております。
具体的にManagement3.0のプラクティスの1つであるパーソナルマップのテンプレートや、作成したパーソナルマップをどのように展開していくのかなど進め方の例を示した資料となっております。
もしよろしければ以下URLからダウンロードしてご使用ください。
座席のフリーアドレス制
フリーアドレス制とは、社内で固定席を設けずに、曜日やプロジェクトによってデスクの場所を変えながら仕事を行う制度のことです。
この制度を導入することで同じ部署でも色々な人と顔を合わせる機会が増え、これまで接点が無かったメンバーとのコミュニケーションが促されます。
プロジェクトを横断した繋がりが増えるなど、効果的に運用することができれば業務の生産効率を上昇せることができます。
グロースファインダー
相互理解を深めるためには、フィードバックが欠かせません。
フィードバックを用いたグループワークの一つにサイバーエージェント社が作成したグロースファインダーがあります。
グロースファインダー(Growth Finder)とは文字通り、成長ポイント(Growth)を見つける(Finder)グループワークです。
また以下の記事内容でワーク内容を理解するとともに、弊社が提供しているグロースファインダーのワークのテンプレート資料を利用しメンバーへの理解を深めてください。
是非以下のURLからダウンロードしてご使用ください。
グロースファインダーから得られる効果として3つ挙げられます。
1. 自分自身の強みや弱みを再確認し、伸ばすべきところや改めるべきところを理解することができる
2.客観的な視点で自分の成長できるポイントを認識することができる
3.他のメンバーと互いのグロースファインダーを開示しあうことで相互理解を深め、信頼関係を構築することができる
<手順>
時間の目安としては、一人につき10~20分です。
1.対象者を選定し、一度部屋から退席
2.部屋に残った人が対象者の「強み」をA4の紙に書き出します。(2分)
3.続けて対象者の「弱みまたは改善すれば更によくなる点」をA4の紙に書き出します。(2分)
*対象者がリーダーの場合は、書き出しやすくするために語尾をあいまいな「かも」にすると良い
4.ファシリテーター役が紙を回収し、ホワイトボードにそれぞれ書き出す
*誰が言ったか不明確にすることが大切
5.全員で「強み」と「弱みまたは改善すればよくなる点」についてディスカッション(5分)
共感した点や追加の意見等々を話し合います。
6.対象者が入室、ファシリテーター役から簡単に説明し、共有します。
7.対象者の方から簡単に感想を述べます。提示された強みや弱みについての意見を述べ、改善点を宣言します。(7分~8分)
以上が手順となります。
ただし、グロースファインダーから得られる効果を最大化するためには、ワークの中でもらったフィードバックを受け取るときのマインドが重要になってきます。
どういったマインドかについての詳細はぜひこちらの記事をご覧ください。
ジョハリの窓
「ジョハリの窓」とは、サンフランシスコ州立大学の心理学者ジョセフ・ルフトとハリー・インガムによって1955年に発表された心理モデルで、二人のファーストネームから「ジョハリの窓」と呼ばれるようになりました。
特に企業においてコミュニケーション促進、キャリアや能力開発、教育研修の場面で、自己分析や自己開発の一つの手法として活用されています。
ジョハリの窓の効果は主に2つあり、これらにより相互理解の前提となる自己理解を深めることができます。
自己開示
自己開示はチーム内の関係性を築く上で重要になります。
なぜなら、自己開示できていると思える状態こそが心理的安全性のあるチームを作るためです。
チームとしてタスクは進めているが、どこか他人行儀な気がする
と言った課題を抱えているチームは、まずは自己開示がどれくらいできているかの認識を揃えるためにも効果的です。
他者からのフィードバック(相互の期待値のすり合わせ)
他者からのフィードバックはチームの質を上げるためには欠かせません。
関係性ができていても、健全なフィードバックができないことでただ仲が良いだけのチームから脱却できないこともよくあるかと思います。
そんな時に、周りからどうみられているのかを知れることでフィードバックしやすい環境作りができます。
また、周りから見た新しい自分を知ることでどうみられているのかを発見し自分がどうみられたいのかということを周りとすり合わせるきっかけにもなります。
それでは具体的にジョハリの窓を使ったワークの手順をご紹介します。
簡単にできる方法として、紙を使って行う方法があります。
<手順>
以下の5つのステップがあります。
①複数人集めて用紙を用意する
例えば、性格、スキル、意外な一面、得意なことなどテーマ別にあらかじめ選択肢を用紙に記入しておくと、記入しやすいでしょう。
性格の場合、明るい、負けず嫌い、フレンドリーなど
②記入用紙の選択肢から、「自分」に該当する項目を書き出す
③記入用紙の選択肢から、「他者」に該当する項目を書き出す
④それぞれに該当する項目を「4つの窓」に分類する
⑤フィードバックをする
これによって、秘密の窓(自分だけが知っていて、他人にはまだ知られていない自己)が狭まり、解放の窓(自分も他人も知っている自己)が広がります。
チームにおける自己開示が進めば進むほど、相手にとっても自分にとってもストレスなく仕事をすることが可能になります。
ジョハリの窓の詳しい仕組み、他の企業の取り組み事例や自己理解を深める方法について興味がある方はぜひこちらの記事もご覧ください。
ランチ会
ランチ会など業務以外のタイミングも相互理解を深めていくためには重要になります。
ランチは就業時間内で行えるため、仕事とプライベートを分けている社員でも参加できるメリットがあります。
特に、オフィスでは相談しづらいことやお互いの人柄などについて知れる絶好の機会です。
業務外ということで一歩踏み込んだ会話により密な信頼関係に発展することも少なくありません。
仕事の話をする前に、相手の価値観や性格を知ることも重要です。
日頃の何気ないランチでも工夫次第ではかなり効果的な施策になり得ます。
5. まとめ
以上、相互理解に関する記事でした。
相互理解を深めることで信頼関係が構築されていき結果的に個人のみならずチーム全体の生産性を向上させます。
また生産性の向上だけでなく、報告・連絡・相談が気軽にでき、お互いをフォローし合う関係になることで働きやすい環境づくりが出来上がります。
相互理解は人と人のコミュニケーションであるため、正解はありません。
記事で紹介した施策だけでなく、時と場合に応じて工夫してコミュニケーションしていく必要があります。
自社の企業文化や従業員の属性や関係性に合わせて、自社に最適な方法で相互理解を深めていきましょう。
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