人的資本の基礎知識をわかりやすく解説!背景やISO30414との関わり

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人的資本の基礎知識をわかりやすく解説|人的資本経営のメリットや背景とは

昨今、人的資本の重要性が企業経営において高まっています。その背景には、ESG投資やSDGsなど人への投資や人権が重視される状況が生まれています。また、労働市場の変化や投資家からの注目も人的資本を企業経営の中心位おく要因となっていると言えるでしょう。

人的資本とは、人材が持つ能力を「投資によって価値を高められるもの」と捉えた概念です。その重要性が高まる中で、人的資本の概要や重要性、注目される理由について理解を深めていきましょう。

 

1. 人的資本とは

人的資本の概要

人的資本(HumanCapital)とは、

従業員が持つスキルや知識、ノウハウ、資源などを資本とみなす考え方

を指します。人的資本の定義は多様であり、個人の能力やスキルを資本として扱う経済学の概念であるとされます。

この概念の起源は、アダム・スミスが「国富論」で、教育を受けた人材を高度な機械になぞらえたことに遡ります。また、OECD(経済協力開発機構)2001年の報告では、人的資本は個々人の知識、技能、能力などが経済的、社会的、個人的な価値を生み出すものとして定義されています。

人的資本とは

 

人的資本の歴史|アダム・スミスやゲイリー・ベッカーの主張

先ほども少し触れましたが、この考え方の起源は、18世紀にアダム・スミスが発表した著書「国富論」にあります。彼は、特別な技能や熟練を要する職業に従事する人々を、時間と労力をかけて教育された人として捉え、彼らを高度な機械に例えました。その後、ゲイリー・ベッカーなどの経済学者がこの考え方を再定義し、「人的資本」という概念のもとでその理論を発展させました。

 

ベッカー氏は、ミクロ経済学の理論を、市場の経済活動以外も含めた人間の行動と相互作用を分析する先駆的な業績で、1992年にノーベル経済学賞を受賞し、複数回の受賞経験を持つ国際的に評価された経済学者でした。彼が提唱した「人的資本」という概念は、人々を資産とみなし、専門的または一般的な教育への費用が経済成長や人口構成にどのような影響を与えるかを理論的・実証的に分析したものです。

 

人的資本、人的資源の違い

人的資本とよく比較される言葉に人的資源があります。

人的資源はコスト(人件費など)をかけ、企業経営のために消費されるものであり、人的資本は教育費などを投資して価値を向上させながら、企業経営のために活用されるものです。人的資源は獲得後価値が減少すると考えられるのに対し、人的資本は投資によって価値を高められると考えられています。

また、「人的資源」と「人的資本」の違いは、人に対する捉え方に注目するとわかりやすいです。
人的資源では人を「コストして消費するもの」として扱うのに対し、人的資本では人を「企業価値を向上させるために投資して磨くもの」として扱います。言い換えれば、人的資源は企業にとって消費するものであり、必要な費用は投資ではなくコストです。一方、人的資本は企業にとって投資して価値を増やすべき資本です。人的資本への費用は投資であり、人的資本への投資は企業価値の向上へとつながります。

人的資本と人的資源の違い

 

有形資本と無形資本の違い

また人的資本について調べていると、「有形資本」と「無形資本」という言葉もでてくるでしょう。

有形資産とは、

株式や建物、施設など形として存在する物

を指します。一方で無形資本とは、

文字通り形を持たない資本

を指します。権利や特許、データやノウハウ、個人が持つ技術・能力、組織が持つ変革能力、独自の価値創造アルゴリズムなどなど多様なものが存在すると言えるでしょう。

有形資本と無形資本

 

2. 人的資本経営とは?

人的資本経営の概要

人的資本経営は、企業の成長戦略の核となる重要な経営手法です。人材を企業の「資本」とみなし、その潜在的な価値を最大限に引き出すことで、中期的な企業価値向上を目指します。

[人的資本と人的資源の違い]で上述した通り、具体的には人的資本経営では、従業員をコストや労働力ではなく、「投資対象の資本」としてみなし、その育成やマネジメントを行います。優れた人材を育成・獲得することで、企業全体の価値を向上させ、投資家の注目を集めることができます。

 

従来の経営手法との違い

ここまで[人的資本と人的資源の違い]や「人的資本経営の概要」で従来の経営手法との違いについての概要は解説してきました。そのためより「人材版伊藤レポート2.0」で紹介されている具体的な違いを紹介します。

従来の経営手法と人的資本経営の違い

 

人材版伊藤レポートの影響

人的資本経営が主流になった理由として、「人材版伊藤レポート」の存在があります。

経済産業省主導で、伊藤邦雄氏を座長とし、経営戦略と人材戦略の連動を重視し、企業価値の持続的向上を図るためのアプローチが模索されました。

日本では、「企業は人なり」「人材は石垣」という言葉やことわざがある通り、人材の価値を重んじる視線が重要視されています。しかしながら、日本企業が実際に社員を大切にしてきたかどうかが問われています。この内容は多くの経営者や人事担当者に衝撃を与え、経営手法の改善が始まりました。

人的資本経営を進める上で、このレポートの閲覧は必須となっています。
LEADERSでも人材版伊藤レポート2.0や他の伊藤レポートについて紹介しているのでぜひご覧ください。

【要約】人材版伊藤レポート2.0|最新2.0だけでなく他レポートも紹介!

 

4. 人的資本経営のメリット

生産性向上

人的資本経営は、従業員への長期的な投資を軸に捉えています。従業員の能力向上や成長を重視することで、生産性の向上だけでなく、組織全体のパフォーマンスも向上させることができます。このアプローチにより、従業員のモチベーションも高まり、企業と従業員の双方が成長できる好循環が生まれることでしょう。

またその結果から、中途採用や外部人材の利用にかかる費用や労力を削減し、効率的な運用が可能になります。こうした取り組みにより、従業員と企業が共に発展する環境を築くことができます。

ラフなコミュニケーションを交わす社員

 

企業ブランディング

人的資本経営の実現によって、企業の社会的信頼が高まり、企業イメージが向上します。また従業員のスキル向上に注力し、個々の成長を尊重する方針は、魅力的な企業文化の形成につながります。これにより、求職者はその企業への就職希望度が高まり、応募率と採用率が向上することでしょう。

同時に、顧客や社会から見て、従業員を大切にする企業としてのイメージが確立され、売上や契約率の向上につながります。

このように企業が積極的に人的資本経営に取り組むことで、社会的信頼と優れた企業文化、そして人材獲得の面から企業競争力を手にするでしょう。

 

人材データの可視化(定量化)

人的資本経営では、個々の従業員の能力や特性に重点を置き、最適なキャリア形成や能力開発を促します。人材育成を通じて、従業員の能力やスキルが明確になり、最適な人員配置や必要な人材の特定が可能になるのです。

従業員のスキルや特性を把握し、個々のパフォーマンスを最大限に引き出すために、個別の育成プランを策定し、実施することが重要です。従業員のスキルや特性を正確に把握することで、効率的な人材配置が実現し、生産性の向上にもつながります。

また、人材の採用においても必要な要素が明確になるため、ミスマッチの削減にも繋がるでしょう。

数値化

 

従業員エンゲージメント向上

人的資本経営は、従業員に対する投資姿勢を明確にすることで、従業員のエンゲージメント向上につながります。これにより、従業員は「自己成長を支援する企業」というイメージを持ち、モチベーションを高め、長期的なキャリア形成に期待を寄せるようになります。

また、従業員が意欲的に働いているという事実は投資家にも魅力的に映り、企業の価値を高める一因となります。

モチベーションが上がっている女性

 

離職率改善

人的資本経営の実施は、離職率の改善に貢献します。

この経営手法では、従業員の成長とスキル向上に焦点を当て、多様な人材や働き方を受け入れ、個々のスキルを伸ばす環境を提供します。経営陣が従業員と真摯に向き合い、彼らの成長をサポートする姿勢が、働きやすさに繋がるのです。

従業員が自身の成長と尊重される環境で活躍できると、彼らのエンゲージメントが高まります。その結果、従業員はその企業を好ましく思い、離職率が改善します。

 

投資家からの評価向上、資金調達へ

現代の投資環境において、人的資本経営を積極的に行う企業は、企業価値が高く評価される傾向があります。これは、長期的な収益性が期待されるだけでなく、社会的価値も高く見なおされるからです。

特に、ESG投資の注目度が高まる現在、人的資本経営は注目される要素となっています。人的資本の重要性が認識される中、これに注力する企業は将来性が高いと見られます。

投資家からの注目度が高まれば、企業の資金調達も容易になることでしょう。これにより、新商品やサービスの開発、新規事業の展開などによる企業成長が促進されます。同時に人材育成にもさらなる投資が可能になることでしょう。

投資

 

3. 人的資本が注目される背景

ここからは昨今特に人的資本が注目を浴びている理由について説明します。

ESG投資の浸透

ESG投資の重要性が浸透していることも人的資本が注目される理由の1つとなっています。

ESG投資とは、
環境(Environmental)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)の要素を重視した投資方法であり、人的資本への投資は企業の「社会」に関連します。この投資方法は、2006年に国連が提唱したことでその重要性が認知されました。

ESG投資の基盤は企業の持続可能性を評価することです。開示される人的資本情報は投資家によって企業への投資判断材料の1つとなりました。つまりは人的資本への適切な投資が企業の持続的な成長に不可欠ということとなります。

そういった背景から、ESGへの取り組みが不十分であれば企業は資金調達に問題を抱える可能性があり、人的資本を意識した経営戦略が注目され始めたという事です。

 

人材や働き方の多様化

近年グローバル化や働き方改革、女性の社会進出などにより人材の多様性が増しています。同時に世代ごとに異なる仕事の価値観も生まれています。

日本では、外国人従業員や非正規雇用の増加、リモートワークの普及などの社会や企業構造の変化により従業員の管理や育成方法について画一的な方法では難しくなっています。個々の能力を最大限引き出すためには、個別のアプローチが必要であり、そういったアプローチが人的資本経営戦略の一環といえるでしょう。

多様な人種の人々

 

また企業における多様性の重要性についてより詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。
多様性とは何か?企業にとってなぜ重要なのか?

 

投資家による無形資本の価値向上

ESG投資が進む中で、投資家が無形資本に注目するようになったことは、人的資本が注目を浴びる理由の1つです。従来は財務情報が重視されていましたが、ESG投資の普及により、無形資産に関する情報も重要視されるようになりました。日本では、令和5年3月決算以降の有価証券報告書において、人的資本の情報開示が義務付けられました。

同様に、投資家や企業の関係者から人的資本への関心が高まる中で、人的資本が注目を集める背景もあります。米国では2020年の市場価値構成要素の90%が無形資本を占めています。

 

欧米からの流れ

アメリカでは2020年8月、米国証券取引委員会(SEC)が上場企業に対して人的資本の情報開示を義務化しました。この措置は、定性情報だけでなく定量情報の開示も含まれています。この動きは、投資家が人的資本情報を重要視していることを示す一方で、市場環境の変化に伴い、経営における人的資本の重要性が高まり、投資判断においても人的資本情報が不可欠となっています。

アメリカ

 

第4次産業革命

第4次産業革命は、

IoT(モノのインターネット)、AI(人工知能)、そしてビックデータの応用によってもたらされる技術の進化

を指します。IoTは、家電などの物品をオンラインに接続することで、生活を便利にする技術です。物品が利用される際の情報は、ネットワーク上で蓄積・解析され、多岐にわたり役立てられることで新たな価値が生まれています。このような技術革新により、従来人間が行なっていた労働がAIやロボットにより代替される未来は遠くありません。

一方でデジタル分野の高度な専門性を有する人材や、そういった革新の中で生き残るスキルや経験を持った人材は優れた人的資本といえます。

そういった背景も人的資本の注目が高まる理由の1つといえます。

 

人的資本情報開示の義務化

こういった流れから日本でも人的資本情報開示の義務化が決定いたしました。

開示義務の対象となる企業は、有価証券報告書を提出する上場企業です。2023年3月期決算以降の有価証券報告書において、人的資本の情報開示をする必要があります。開示される項目には、男女間の賃金格差や育児休業の取得率、女性管理職の比率などが含まれます。

また今後は、国内企業における人的資本情報の開示要請がますます高まると予想されます。今回対象とならなかった企業も、開示準備を進めておくことが重要です。

 

5. 人的資本とISO30414

本段落では、人的資本を調べる中で度々見かけるであろうISO30414についても解説します。

 

ISO30414とは

ISO30414は、

国際標準化機構(ISO)によって定められたマネジメントシステムの規格で、「企業が内外に向けて人的資本情報を公開するための国際的なガイドライン」

です。2018年12月に制定され、11の分野にわたって49項目58指標が設けられ、企業が人的資本情報を開示する際の基準が定められています。

ISO30414に基づいて人的資本の情報開示を行うことで、どの国の企業でも同じように人的資本状況を確認することが可能になります。実際に2023年3月期決算以降日本でも始まる人的資本情報開示の義務化においても、このISO30414のガイドラインを参考に項目が選定されています。

 

ISO30414の11領域、49項目とは

では実際にISO30414のガイドライン項目を確認しましょう。

ISO30414 11領域49項目

 

日本での人的資本情報開示とISO30414の関係性

「人的資本情報の開示」や「ISO30414」と調べていると関係性も気になる方がいるかと思います。上述した通り、ISO30414が2018年に制定され、その後 欧米諸国を筆頭に徐々に人的資本の情報開示が進んできました。そうした背景により日本国内でも、2022年8月に日本政府から人的資本可視化指針が発表されました。
また、この規格に基づいて情報を開示することで、企業はグローバルな投資家に向けて人的資本情報を公開できるようになります。言い換えれば、日本国内だけでなく、世界中の投資家が同じ基準で情報を評価できるようになるのです。

 

日本国内ではISO30414の認証企業は10社となります。(2024年2月16日時点)

 

6. 政策の1つである人的資本コンソーシアムとは

人的資本経営コンソーシアムとは、経済産業省及び金融庁がオブザーバーとして参加し、日本企業と投資からによる人的資本経営の実践に関する先進的な取り組みの共有、企業間の連携に向けた議論、効果的な情報開示の検討を通じて、日本企業の人的資本経営を推進することを目指した団体です。
経営陣が企業の中期的な発展に貢献する人材戦略の立案を主導し、実行に移すとともに、その方針を投資家との協議や統合報告書などでステークホルダーに説明することは、持続可能な企業価値の向上に不可欠です。このため、一橋大学CFO教育研究センター長の伊藤邦雄氏を含む計7人が発起人となり、「人的資本経営コンソーシアム」が2022年8月25日に設立されました。

 

このコンソーシアムでは、企画委員会、実践委員会、開示委員会を設け、各委員会を通じて、人的資本経営の実践に関する先進事例の共有、企業間の協力に向けた議論、効果的な情報公開の検討を進める予定です。また、投資家との対話の場も設けられています。このコンソーシアムの活動により積極的な人的資本経営を行う日本企業に世界中から資金が集まり、次なる成長が期待されます。

※「コンソーシアム」とは、
異なる組織や個人が協力して共通の目標を達成するために形成される集団であり、「共同事業体」とも訳されます。営利目的での共同事業や、学術研究の推進、技術開発など、様々な目的で結成されます。この形態は、企業同士だけでなく、大学や研究機関、政府や自治体なども参加することがあり、欧米では特に盛んです。日本でも、コンソーシアムを形成する組織が増えつつあります。

ビル群

 

7. 人的資本に対する日本の取り組み状況

日本における人的資本の動き

ここまで説明してきた通り欧米諸国の流れに沿って、日本でも人的資本情報開示の義務化が決定しました。ここでは義務化までの日本の動きについてご紹介します。

2020年に経済産業省から「人材版伊藤レポート」が公表されました。「人材版伊藤レポート」とは、伊藤邦雄氏によって提案され、経済産業省が公表したレポートです。この報告書では、企業の競争力は人材に由来し、「人的資源の有効活用」から「人的資本の創造」への転換が提唱されています。このレポートは、わかりやすく人的資本経営を解説しており、多くの反響を呼びました。さらに、2022年には実践に向けたアイデアを提示する「人材版伊藤レポート2.0」が公開されました。

 

さらに岸田内閣は、「人への投資」の抜本強化を主要な政策目標の一つとして掲げています。この方針は、企業の付加価値源は創造的なアイデアや工夫を生み出す人的資本であるという考えに基づき、官民の人材への投資を増やすことで、企業の持続的な価値創造と賃上げの両立を目指すものです。この方針に沿って、企業の人材への投資を促進するため、企業の情報開示規則が見直され、手始めに有価証券報告書に人材への投資などの非財務情報が開示されることとなりました。

今後この流れはより顕著なものとなっていくでしょう。

 

人的資本経営に取り組んでいる企業は7割まで増加

ここまで人的資本の重要性について解説してきましたが、具体的にどれくらいの企業が具体的な施策実施をしているのか紹介します。今回は人事のプロを支援するポータルサイト「HRプロ」を運営するProFuture株式会社の研究機関であるHR総研が実施した「人的資本経営・開示の現状2023」を参考に紹介します。

 

調査結果によると、人的資本情報開示の義務化の影響もあってか、人的資本経営を重視する企業は全体の7割、大企業では8割の結果となりました。前年である令和4年5月に経済産業省によって集計された「人的資本経営に関する調査 集計結果」と比べはるかに数値の上昇が見られました。

また具体的に重視している施策は「パーパス浸透」となり、次いで「従業員エンゲージメント」「社員のキャリア自律」「社員のウェルビーイング」という結果でした。

各人材施策の重視度

 

一方で業況と各人材施策の関係性を並べたデータをご覧ください。当データは現在の業況について、各人材施策の重視度が高い企業群、および「イノベーション風土」と「レジリエンス」に関する組織力がある企業群の平均です。つまりは各企業を最も重視する人材施策別にカテゴライズし、業況の平均値を出したデータであると考えることができます。このデータによると「人的資本経営」を重視する企業群の業況平均値が最も高く、「従業員エンゲージメント」を重視する企業群の業況平均値が最も低いことがわかります。次いで、「パーパス浸透重視」「社員のウェルビーイング重視」となっています。

人材施策の重視度・組織状態による業況の違い

 

また各人材施策の重視度が高い企業群、及び「イノベーション風土」と「レジリエンス」に関する組織力がある企業群の平均値を並べたデータをご覧ください。つまりは、重視している各人材施策ごとに企業群をカテゴライズし、人的資本経営に対する取り組み状況の平均値を出したデータであると考えます。当データによると、「社員のウェルビーイング」を重視する企業群の取り組み状況が最も高く、「従業員のエンゲージメント」を重視する企業群の取り組み状況が最も低いことがわかりました。

人材施策の重視度・組織状態による人的資本経営の取り組みレベル

 

最後に人的資本経営に取り組み目的についての集計結果をご覧ください。大企業では、最多目的が「従業員エンゲージメント」であり、ついで「採用力の強化」「生産性の向上」でした。

企業規模別「人的資本経営」に取り組む目的

 

これらのデータを踏まえ分析できることは、経営陣は「従業員エンゲージメント」や「採用力の強化」の向上を求め人的資本経営に取り組んでいるということです。経営陣としてこれらの数値を求めることは大切です。しかしこれらは結果の数値でしかないということです。その結果を求めるために、現場レベルで「ウェルビーイングの向上」や「キャリア支援」を徹底する必要があるはずです。それを理解せず「従業員エンゲージメント」の向上や「パーパス浸透」のためのアクションを実施してしまっていても効果は薄いといえるでしょう。

 

8. 日本における人的資本の課題

人的資本の重要性を理解し具体的な施策を検討する中で、日本企業でいくつかの課題が上がっています。まだ人的資本開示を求められていない企業でも、以下の課題が当てはまる可能性がある企業は早めに対応の準備が必要です。

 

人材データの欠如や統一性の不足

人的資本経営を進めるためには、人材に関する情報を集めて分析することが不可欠です。しかしながら多くの企業では、人材データの不足や散在、不統一によりデータの収集や分析が難しくなっています。
企業の人材を資本として捉え育てていくためには、各従業員の能力やスキルを正しくデータとして捉え可視化する必要があります。

デジタル化のイメージ画像

 

経営層およびマネージャー層の意識変革

多くの企業では、経営陣が人的資本経営の重要性を十分に認識していないため、経営戦略と人材戦略の統合が不十分な状況が見られます。
そのため人的資本の本質を理解するとともに、取り組みにコミットメントすることが不可欠です。

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9. まとめ

人的資本は、これらの社会においてとても重要なキーワードの1つです。
今回の政策にて、人的資本開示の対象とならなかった企業も人的資本の重要性を理解し、来るべき時に備えましょう。

 

今回は人的資本の基礎知識についてまとめましたが、LEDERSでは今後も人的資本に関する情報を発信してますので、引き続きチェックのほどよろしくお願いします。

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