リテンションマネジメント実践ガイド|業績向上の鍵となる最新事例と効果的な施策

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リテンションマネジメント実践ガイド|業績向上の鍵となる最新事例と効果的な施策

従業員の定着率と業績向上の両立を目指すなら、リテンションマネジメントが必要不可欠です。

この記事では、リテンションマネジメントの基本的な意味や実施方法、企業の成功事例について詳しくご紹介しています。

「リテンションマネジメントってなに?」

「具体例なリテンションマネジメントの方法がわからない」

など人材管理方法で悩んでいるなら、ぜひ参考にしてください。

 

1.  リテンションマネジメントとは

「リテンションマネジメント」は、和製英語で「維持する(retention)」+「管理する(management)」が合体した言葉です。「従業員の長期的な定着を促進する人材管理手法」と理解するといいでしょう。

青山学院大学の山本教授がまとめた「人手不足に対応する事後の人的資源管理 リテンション・マネジメントの観点から」の資料には、リテンションマネジメントの定義について次のような記載があります。

【リテンションマネジメントとはなにか?】

リテンションとは。一般には 「保持」 「保留」「引き留め」等を指すが、組織の経営においては従業員を組織内に確保することを意味する。リテンションの結果、従業員の勤続期間の長期化すなわち定着につながるのである。つまり、リテンションは従業員を雇用している組織を主体とし、組織が行う具体的なマネジメントを問題とする。

引用:独立行政法人労働政策研究・研修機構公式サイト「人手不足に対応する事後の人的資源管理 リテンション・マネジメントの観点から」より

働き方改革や人材不足・高齢化により、企業にとって人材不足は深刻な問題となっています。長期的に従業員を定着させる「リテンションマネジメント」は、人材不足解消の意味でも重要な取り組みといえるでしょう。

 

リテンションマネジメントが重要視される理由

リテンションマネジメントが重要視される理由には、次の3つがあります。

  • 社員の定着率向上、生産性向上が求められている
  • 採用や教育コスト削減が必要
  • 知識やノウハウの蓄積が重要

リテンションマネジメントの目的は、従業員の定着だけではありません。従業員が定着した先にある目的も重要です。従業員が定着すると生産性が上がり、生産性向上は企業業績に大きく寄与します。

社員が定着して採用の必要性が少なくなると、教育や採用コストも削減できるでしょう。

 

社員の定着率向上、生産性向上が求められている

リテンションマネジメントの実施により、社員の定着率は向上し、結果として生産性が上がります。従業員が長期間にわたって企業に留まれば、企業文化や業務内容を深く理解した社員が増えることで、高い生産性が維持できるでしょう。

 

一方、社員が定着しない企業では、商品知識や業務のノウハウを知らない社員が増えてしまい、結果として生産性が低迷してしまうケースがほとんどです。

経験豊富な従業員は、問題解決やイノベーションの推進においても重要な役割を果たし、企業の競争力を高める原動力ともなります。

 

採用や教育コストが削減

リテンションマネジメントを通じて既存の従業員を維持することは、採用や教育コストの削減にも寄与します。

ちなみに厚生労働省の資料によると、人材紹介会社を利用した採用の場合、企業が人材紹介会社に支払う手数料は「年収×20%~30%程度」。

金額は「80万円以上」がもっとも多く、採用コストは企業にとっても大きな負担となってることがわかります。

新しい従業員を一人採用しようとすると、採用広告や人材紹介に必要なコスト、そして新入社員のトレーニングにも多大なコストと時間を要します。その点、既存の従業員を長期間維持すれば採用と教育コストを削減でき、最終的には企業の財務状況改善にもつながるでしょう。

新しい従業員を素早く組織やチームに馴染み、最大限のスキルや能力を発揮してもらうためには、「オンボーディング」が欠かせません。オンボーディングとは、新しいメンバーひとり一人の目標を設定し、長期的なプランに基づきサポートすることで、組織との信頼関係構築や成長をフォローするプロセスです。

オンボーディングについて詳しく知りたい方は、是非こちらの記事もご覧ください。

オンボーディングとは?OJTとの違いや目的、効果的な導入のポイント解説

 

知識やノウハウの蓄積が重要

リテンションマネジメントは、従業員の知識やノウハウの蓄積にも大きな役割を果たします。

経験豊富な従業員が退職すると、ベテラン社員が持っていた貴重な知識やノウハウが後進に引き継がれなくなり、結果として次のようなリスクが発生します。

  • 教育のためのコストが発生する
  • 教育や採用にリソースが割かれ本来の業務が手薄になる
  • ノウハウを知らない従業員が増えることでミスや事故が起こりやすくなる
  • 経験豊富な社員に信頼を寄せていた顧客が離れていく

長年にわたって蓄積された知識やノウハウは、変化の激しい市場で競争に勝つために必要不可欠な要素です。特定のスキルやノウハウが属人化している企業において、ベテラン社員の離職が続くと、想像以上のリスクが発生するかもしれません。

 

2. リテンションマネジメントを成功させるための具体的な取り組み

リテンションマネジメントを実践するなら、次のステップを踏むといいでしょう。

  1. 【採用管理】適性に応じ人員を配置する
  2. 【報酬や福利厚生】成果主義の報酬と福利厚生プログラムを導入する
  3. 【エンゲージメント向上】360度評価などの評価システムを導入する
  4. 【人事評価】定期的にフィードバックできる仕組みを導入する
  5. 【キャリアや能力開発】キャリア支援や育成プログラムを導入する
  6. 【労働環境の管理】ワークライフバランス推進の仕組みを作る
  7. 【組織文化】社内コミュニケーションを活性化させる

 

【採用管理】適性に応じた人員配置

リテンションマネジメントを実践したいなら、まずは採用管理の手法や人員配置の方法から見直してみるといいでしょう。特に採用のミスマッチは避けたいところです。

  • 「入社させてみないとわからない」
  • 「30分の面接では人柄を判断できない」

など、採用に関する悩みはつきものです。しかし、適材適所を見極めるための診断ツールや、複数の部門の責任者が面接を行い、偏った主観によるミスマッチ採用を避けるなど対策の方法はあります。

また、適性に基づく人員配置は、リテンションマネジメントの基本です。能力や適性を正確に測定するための評価ツールの導入や定期的なキャリア面談により、適材適所に人材を配置できるよう努めましょう。

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【報酬や福利厚生】成果主義の報酬と福利厚生プログラムの導入

個々の業績に応じた報酬制度と充実した福利厚生プログラムは、従業員の定着率に大きく影響します。

業務内容に魅力があっても、ワークライフバランスが崩れていたり、福利厚生が手薄になっていたりすると従業員のモチベーション維持が難しくなります。従業員一人ひとりが自己の成長に向けて努力し組織に貢献してもらうには、成果主義に基づく報酬体系も必要になってくるでしょう。

 

一般的な企業の福利厚生費の実態については、一般社団法人「日本経済団体連合会」の「福利厚生費調査結果報告」が参考になります。この資料を見ると、法定福利厚生費以外の費用負担として、住宅関連や介護などのライフサポートなどの面で手厚い福利厚生を実施していることがわかります。

 

【一般社団法人日本経済団体連合会|福利厚生費調査結果報告※法定外福利費の構成】

【一般社団法人日本経済団体連合会|福利厚生費調査結果報告※法定外福利費の構成】

引用:一般社団法人「日本経済団体連合会」の「福利厚生費調査結果報告」

 

【エンゲージメント向上】360度評価などの評価システムの導入

リテンションマネジメントでは、360度評価システムなどを導入し、従業員のエンゲージメント向上を図ることはとても重要です。

従業員のエンゲージメントは日常の会話や面談ではわからない部分も多く、専門の評価ツールなどを利用して初めて判明するケースも多々あります。360度評価ツールを利用すれば、上司や部下だけではなく他部署からの客観的な評価を得られるため、自己評価や成長のきっかけを得られます。

自己を見つめなおし成長していく社員が増えれば、結果としてエンゲージメントがあがり、社員の定着率にも良い効果が出てくるでしょう。

 

【人事評価】定期的にフィードバックできる仕組みの導入

従業員のモチベーションと定着率を高めるためには、定期的なフィードバックが不可欠です。月1回の1on1ミーティングや四半期ごとのパフォーマンスレビューを必ず実施するのも効果的です。

面談やフィードバックの重要性については、すでに認識している管理者も多いでしょう。しかし、日常の業務に忙殺されて定期的な面談ができないケースがあるかもしれません。

「面談は業務の一環」と割り切って、年間で決めた面談日程は守るように心がけましょう。また面談に臨む部下自身も、目的意識を持って面談に臨むように指導することも重要です。

ビジネスにおけるフィードバックのコツについては「【実践】ビジネスにおけるフィードバックとは?具体的な方法とコツを紹介」も参考にしてください。

 

【キャリアや能力開発】キャリア支援や育成プログラムの導入

従業員のキャリアと能力開発は、リテンションマネジメントにおいて重要な要素です。

社内で定期的にセミナーや研修を実施することで、従業員は新しいスキルや知識を習得し、自己成長を実感することができます。メンター制度を確立して継続的な育成を行えば、従業員はキャリアビジョンの達成に向けて、より一層の努力ができるでしょう。

 

【労働環境の管理】ワークライフバランスの推進

ワークライフバランスの推進は、従業員の満足度と定着率を高めるために重要です。

例えば、次のような仕組みを導入するといいかもしれません。

  • コアタイムを設けたフレックスタイム制の導入
  • 介護や育児に活用するための時間有給制度や休暇制度
  • 保育料や介護ヘルパー費用の助成
  • 事業所内保育施設の設置
  • 各種相談窓口の設置

家族や健康をサポートするための休暇取得を奨励したり、支援制度を拡充することで、社員は業務以外の悩みを軽減でき、仕事への高いパフォーマンスが発揮できるようになります。

ワークライフバランスに関する取り組みは、結果として従業員の全体的な満足度を高め、リテンションマネジメントの成功に寄与します。

 

【組織文化】社内コミュニケーションの活性化

リテンションマネジメントを成功させるためには、社内コミュニケーションの活性化が不可欠です。

定期的な社内イベントや部署間交流の機会を設けると効果的かもしれません。例えば、社内のスポーツイベント、チームビルディングのためのワークショップなどの開催は従業員間の絆を深め、組織の一体感につながります。

 

また、異なる部署の社員が交流すれば新たなアイデアが生まれ、結果として社内外でイノベーションが起こるかもしれません。

社内コミュニケーションの活性化は従業員のモチベーション向上にも寄与し、結果として定着率の向上につながります。

 

3. リテンションマネジメントで成果を上げた企業事例

実際にリテンションマネジメントで成果を上げている企業の事例についても、いくつかご紹介していきます。

なかには離職率を40%以上改善させた企業もありますので、ぜひ自社の状況と照らし合わせて、今後のマネジメントの参考にしてください。

 

労働・休暇制度の改革で有給取得率が19.8%から37.2%に改善

はじめにご紹介するのは、従業員の定着率向上のための働き方改革をすすめた「大東建託パートナーズ株式会社」の事例です。

 

【大東建託|リテンションマネジメントのポイント】

  • 勤怠システムを変更し有給取得状況の見える化を推進
  • 福利厚生制度の周知のための冊子を自宅に郵送
  • 転勤をしない勤務地限定を前提に採用を行う

同社は、有給休暇の取得率が低いことがきっかけで働き方改革の推進を決定。すでに休暇や各種祝い金、資格取得制度などの支援制度はあったが社員が知らないケースも多く、利用率は低かった。

働き方改革の一環として、勤怠システムを変更し有給休暇の取得率を全社員に見える化。結果、全員が有給取得について意識するようになり制度改革前と比較して有給取得率は約17%改善。また制度を知らない社員が多い点については、「ライフイベント別お役立ちメモ」と題した制度案内の冊子を自宅に郵送。社員はもちろん家族にも見てもらえる工夫を行った。

その結果、福利厚生制度の利用者も増え、新卒社員からも「この制度があるからこの会社に決めた」という声も上がっている。

 

参考:厚生労働省資料「若者が定着する職場づくり 取組事例集」

 

若手育成のため指導員制度を導入し離職率は40%改善

次は、若手育成のために指導員制度を導入したカネテツデリカフーズ株式会社の事例です。

 

【カネテツデリカフーズ株式会社|リテンションマネジメントのポイント】

  • 「先輩社員から見て学べ」という従来の制度から脱却
  • 入社後6ヵ月間は先輩社員がメンターとなり、きめ細やかなサポートを実施
  • 月1回の労使協議会で、現場の意見を経営層に届ける仕組みを確立

 

同社では、かつて新入社員の指導や育成は「先輩社員の背中を見て学ぶ方式」が主流。しかし、この方法では先輩社員の指導力や説明スキルも身につかず、新入社員も相談しづらい雰囲気があるなどデメリットも多い。結果、同社の入社3年以内の離職率は50%前後と定着率が悪い状態が続いていた。

このような課題を解決するために、同社は2017年に「新入社員指導員制度」を導入。OJTリーダーとは別に入社2~3年目の若手社員を指導員として指名。約6ヵ月間は先輩社員が新入社員に対しマンツーマンで指導する制度を確立させた。また、現場の意見を経営層に届けるために月1回労使協議会を開催。会社方針や人事方針、組合からの要望などについて議論を行っている。

これらの取り組みの結果、入社3年以内の離職率は50%前後から10%前後へと減少。現場からは「覚えるので精一杯だったが、一生懸命ついていきたい」、「22年目に入った後、次の新入社員を教えられるように頑張っていきたい」などのポジティブな意見も聞こえてきている。

 

参考:厚生労働省資料「若者が定着する職場づくり 取組事例集」

 

時短勤務終了社員への手当支給で退職を防止

つぎは時短勤務の適用から外れてしまう社員の退職や、管理職の時間外勤務に悩む菓子製造小売W社の事例です。

【菓子製造小売W社|リテンションマネジメントのポイント】

  • シフトの穴埋めを減らすために固定シフト制を導入
  • 育児休暇からの復帰社員には手当を支給

 

同社では、子どもが小学校に入学する時点で時短勤務が切れ、そのことが原因で退職してしまう中堅女性社員の退職が続いていた。また、管理職が非正規雇用者のシフト穴埋めをするために残業が増え、休暇も取りづらい状況が課題となっていた。

そのため、同社では育児休暇から復職した社員には手当を出し、管理職の負担を減らすための固定シフト制度も導入。その結果、管理職も休暇を取りやすくなり労働環境の改善に成功した。

参考:広島県公式サイトより「さあ はじめよう! 今、経営者が注目する「働きがい」向上の取組」より。6頁「企業事例⑤ 菓子製造小売W社【問題:①子どもが小学校に入学する時点で時短勤務が切れることによる女性社員の退職 ②30代中堅社員の離職】 参照

 

仕事の属人化を回避し業務効率化を向上

4つ目の事例は、従業員が長く働き続けられる環境作りを実現した埼玉県「斎藤商事株式会社」の事例です。

【斎藤商事株式会社|リテンションマネジメントのポイント】

  • 仕事の属人化から脱却するためマニュアル作成に取り組んだ
  • 業務効率化を進めるためのオリジナルシステムを構築

 

同社では、多様化する顧客ニーズに対応したり、増え続ける商品を扱ったりするにつれ業務が複雑化し、同時に仕事の属人化にも悩みを抱えていた。特定の業務に関わっている人しかわからない部分も多く、業務上のリスクも発生。

対策として、同社では「業務の見える化」や「マニュアルの作成」「マニュアルの実践と見直し」の3つのステップを継続して実施。誰が見てもわかるような仕組み作りをすることで属人化から脱却。有給休暇も取得しやすい環境づくりができた。

また、業務効率化を実現するためのオリジナルシステムを構築し、複雑化する業務の効率化を推進。その結果、時間の余裕ができ、顧客対応の充実と社員の創造力アップにつなげることができている。

 

参考:埼玉県働き方改革ポータルサイト

勉強

 

4. リテンションマネジメントのメリット

リテンションマネジメントにより従業員の定着率向上が実現すると、業績の向上や採用コストの削減といった直接的な利益だけでなく、組織全体に多面的なメリットをもたらします。

従業員が長期間にわたって企業に留まることで、組織文化の浸透、チームワークの強化、従業員のエンゲージメント向上、そして企業ブランディングの強化など、さまざまなポジティブな影響が期待できます。

 

組織文化の浸透とチームワーク向上

リテンションマネジメントの大きなメリットのひとつに「組織文化の浸透とチームワーク向上」があげられます。長期間にわたって同じ組織で働く従業員は、所属する組織固有の文化や価値観を深く理解し、それらを自身の行動や考え方に取り入れていくようになります。

長期間一緒に働くと従業員間の信頼関係が深まり、お互いが協力し合う強固なチームワークが育まれます。

組織文化を理解した従業員が多いと新入社員にも同じ意識が浸透し、結果として中長期的な目標達成に向けてチーム一丸となって取り組める組織ができあがるでしょう。

 

従業員エンゲージメント向上とブランディング

従業員のエンゲージメントが高まると、企業のブランディングにも良い影響を及ぼします。

エンゲージメントが高い従業員は、会社のビジョンや目標に深く共感し、目標達成に向けて積極的に貢献します。また社内外に対してポジティブなメッセージを発信するため、企業のブランディング向上にも寄与するでしょう。

 

エンゲージメントの高い従業員は、企業の「生きた広告」となり、企業文化や理念をステークホルダーなどにも伝達する役割を果たします。SNSがブランディング向上に大きく関係する現代においては、リテンションマネジメントによるエンゲージメント向上は特に重要です。

ちなみに、アメリカの「ウィリス・タワーズ・ワトソン(Willis Towers Watson)※WTW社」が行った調査によると、エンゲージメントが高い社員がいる会社では、下記のような傾向があることがわかりました。

【WTW社が他国性企業41社を対象にした調査結果】

  • 従業員エンゲージメントが最高だった銀行の支店は、最低の支店よりも顧客満足度が19ポイント高かった
  • 従業員エンゲージメントが平均以上の企業の利益率は、同業種と比べて5ポイント高い
  • 従業員エンゲージメントが平均以下の企業では、利益率が13ポイント低い
  • 従業員エンゲージメントの高い拠点の労働災害の発生率は、低い拠点の半分

参考:WTW社調査結果

従業員のエンゲージメント向上は、ブランディング向上のみならず、利益向上の面でも大きく寄与することがわかります。

モチベーションを向上しちえる写真

 

内部昇格によるモチベーション向上

長期にわたり社員が定着することで「内部昇格」の仕組みが確立されると、従業員のモチベーションもアップするでしょう。

従業員が自分の努力や成果が認められ、キャリアアップの機会があると感じると、より一層モチベーションが上がり、結果として企業業績も上がります。内部昇格でリーダーやマネジメント職へ登用される社員が増えると、後進の社員の目標にもなり、組織全体も活性化します。

 

5. リテンションマネジメントのデメリット

リテンションマネジメントを推進する場合は、いくつかのデメリットにも注意しなくてはいけません。

リテンションマネジメントに必要なツール導入にかかる費用や、専任管理者が必要になる点は注意が必要です。

 

専用ツールやシステム導入の初期投資が必要

リテンションマネジメントを効果的に実施するためには、専用のツールやシステムの導入が不可欠です。

例えば、タレントマネジメントを進めるうえで必要なHRシステムや360度評価ツールの導入など、人事管理ツールには初期投資が発生します。大手企業ならまだしも、中小企業のなかには費用捻出が難しいケースもあるでしょう。

 

また、導入後には従業員への研修や教育が必要になることが多く、専門の部署や責任者の配置も必要になってきます。導入ツールやシステムによっては、アップデートのための費用と手間が発生する点も覚えておきましょう。

ただし、これらのツール導入に伴う費用を「デメリット」と捉えるかどうかは、経営幹部の考え方次第です。従業員が定着し、企業の利益に大きく貢献できるなら安い投資なのかもしれません。

デジタル化のイメージ画像

 

長期的な管理が必要

リテンションマネジメントは、一時的な取り組みや短期的な施策ではなく、長期的な視点での管理が求められます。

従業員のニーズや働き方を取り巻くルールは日々変わります。状況の変化に応じて、リテンションマネジメントのやり方も柔軟に対応していく必要があるでしょう。

長期的な人材マネジメントは、組織にとっては相当なストレスを抱えることがあります。スタートアップ企業など、経営層が管理と実務を兼務している状況下では、業務負担も増えるでしょう。

場合によっては、人材の評価やマネジメント方法のアドバイスなどを、一部アウトソーシング化することも検討してみる方法もおすすめです。

 

6. リテンションマネジメント成功の秘訣

リテンションマネジメントは、仕組みを確立させたり立派なHRツールを導入するだけで成功できるとは限りません。

リテンションマネジメントを成功させるには、次の3のポイントに留意するようにしましょう。

  1. 明確なビジョンとミッションを提示する
  2. 継続的かつ公平なコミュニケーションを心がける
  3. 従業員の声をできるだけ収集する

 

明確なビジョンとミッションを提示する

リテンションマネジメントの成功には、「従業員が共感し働き続けたい!と感じる明確なビジョン」が必要です。

例えば、自社の利益追求だけではなく社会貢献に関するビジョンやミッションに共感する社員は多いでしょう。「会社の目標と従業員の目標が一致している」と感じることができれば、従業員のモチベーションはさらにアップし、仕事での充実感や達成感はより一層高まります。

 

継続的かつ公平なコミュニケーション

リテンションマネジメントにおいては、上司と部下とのオープンかつ定期的なコミュニケーションはとても重要です。

経営層との直接的なコミュニケーションが保たれている職場であれば、従業員の意見が経営層に伝わりやすくなり、課題改善もスムーズに進みます。

上司が公平に、かつ納得性のあるコミュニケーションをとるように努力すれば「自分のやっていることが認められない」「他人の評価が納得できない」など、無駄なモチベーション低下も避けられるでしょう。

継続的かつ公平なコミュニケーションがあると、従業員は自分たちが組織の重要な一部であると感じ、組織への忠誠心が高まります。

 

そういった上司と部下間の相互理解については別記事で詳しく解説してますので、ぜひご一読ください。

相互理解とは何か?深める方法とコミュニケーションのポイント

 

従業員の声の収集

リテンションマネジメントを成功させるには、常に従業員の声を収集できる仕組みを構築しておきましょう。経営層や幹部の考えと一般社員の意見には、幹部が考えている以上に大きな溝があるものです。

 

従業員の意見を集約するには、下記のようなツールや取り組みが効果的です。

  • 360度評価ツールで得た部下からの評価を参考にする
  • Google formsで手軽に意見を言える環境を用意する
  • Slackなどのタスク管理&コミュニケーションツールで、いつでも意見を言えるようにする
  • スピークアップ制度を確立し、一人では解決できない問題を会社がサポートする

従業員の声のすべてを、会社の方針に反映する必要はありません。なかには間違った意見も出てくるでしょう。重要なのは「自分の意見が幹部陣に届いている」という安心感です。

意見を受け取ったら必ずフィードバックを行い、実行できない理由があれば納得できる理由をもって丁寧に説明するよう心がけましょう。

 

継続的な改善

リテンションマネジメントは、一度設定すれば完了というものではありません。

市場の変化や従業員のニーズの変化など、多くの要因によってリテンションマネジメントの戦略には臨機応変な対応が求められます。リテンションマネジメントの取り組みを定期的に評価し、必要に応じて改善する姿勢も必要です。

継続的な改善は、組織が持続可能な成長を遂げるための鍵となります。従業員のニーズにスピーディーに反応すれば、従業員の満足度とエンゲージメントは高まり、結果として従業員定着率の向上につながります。

サイクルの図

 

7. リテンションマネジメントの参考にしたい書籍や論文

最後に、リテンションマネジメントを進めるうえで、参考にしたい書籍や論文もご紹介します。

 

人材定着のマネジメントに関する書籍

下記でご紹介するのは、この記事の冒頭でも触れた青山学院大学の山本教授の著書「人材定着のマネジメント―経営組織のリテンション研究(中央経済社)」です。

「人材定着のマネジメント-経営組織のリテンション研究」は、現代の組織における人材定着の重要性とその実践方法について詳細に解説されている書籍です。

この書籍を読めば、リテンションマネジメントの概念をよく理解できますし、実際の人事管理の例を通じて、どのように社員の定着を促進するかがわかります。現実的な職務予告や雇用の保障、賃金の高さと福利厚生など、具体的な手法も書かれています。ぜひ、リテンションマネジメントをする際の参考にしてください。

 

リテンションマネジメントに関する論文

次に、明治大学の山下教授の論文も参考になります。

山下教授は「日本の組織におけるリテンション・マネジメント」の論文のなかで、日本企業での「ネガティブリテンション」の現状について触れています。

一般的なリテンションマネジメントは、優秀な人材を定着させるためのマネジメントです。一方、論文ではネガティブリテンションマネジメントについて触れ、組織に貢献しない「足を引っ張る社員」が組織に残り続ける現状に警鐘を鳴らしています。

終身雇用制度の考え方が抜けない日本企業においては、もっとも注意しなければいけないマネジメント方法なのかもしれません。

 

 

8. まとめ

長期的な視点で優秀な人材を確保するリテンションマネジメントは、企業の目標達成には欠かせない人材管理方法といえます。

ただし、リテンションマネジメントは一朝一夕で成果が出るものではありません。中長期的な人材管理にはコストもかかりますし、経営層の一貫した考えも重要になってきます。

まずは、自社の人材流出リスクと課題を整理することからはじめてみましょう。ときには外部コンサルに依頼して、第三者の目線から自組織の人材管理方法を評価してもらう方法もおすすめです。

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